ヒストリーコーナーは老若男女が熱中
同施設の最大の見どころは、「森永製菓が常に時代と共に歩んできたことを感じていただきたい」という太田社長の言葉を実感できるヒストリーコーナーだろう。シニアが見れば懐かしいし、子供が見れば驚きがいっぱい。どの年代も楽しめる、トリビア満載の展示だ。
例えば、1900年ごろに製造を開始した、個包装のキャラメル。今ではお菓子を携帯するのは当たり前だが、個包装のキャラメル登場以前は、洋菓子は家かお店でしか食べられないものだったことに改めて気づかされる。








モリウムオリジナル商品が少ないのが残念

ミュージアムで楽しみなのは、オリジナル商品の掘り出し物があるミュージアムショップ。ロングセラー商品の宝庫である森永製菓のミュージアムショップということで期待したのだが、モリウムオリジナル商品は「ダースポーチ」「ハイチュウミニハンドタオル」「小枝マスキングテープ」「コンパクトミラー マリー」「コンパクトミラー チョイス」の5種類のみ。そのほかに森永製菓オリジナルグッズを9種類、森永製菓の代表的な商品や、手に入りにくい地方のハイチュウなども販売しているものの、モリウム限定製品ではない。


森永製菓の代表的な商品はどこででも手に入るので、正直ありがたみは薄い。森永製菓には日本人の多くの人がパッケージを見慣れ、強い愛着を持つロングセラー商品が数多くある。グッズ展開では大きなポテンシャルを秘めているため、よりそれを生かしたラインアップがあってもいいのではないかと感じた。
一方、ヒストリーコーナーで、「日本初」が多い会社であることが整理されていることの意義はある。特に広告ポスターや屋外広告の展示コーナーでは、キャラメルの広告と思えない新しさを感じさせるものなど、過去の広告グラフィックの斬新さに驚く。そこには「日本初のチョコレート一貫製造」「日本初の飲料用ココア」「日本初の国産粉乳」「国産第一号のインスタントコーヒー」(以上、森永製菓資料より)など、世の中にないものを広めるために苦心した歴史が詰まっていた。
また、公式サイトに「広告宣伝に関して、森永はいち早くいろいろなアイデアを考えて、多彩な活動を行った。大衆の中に分け入って様々な広告を展開していった」とある通り、今見ても斬新でユニークな広告ばかりだ。創業者の創業理念もさることながら、大胆な広告戦略も洋菓子の普及に大きく貢献していたことが分かる。
今後はこうしたデザインのパワーを身近に感じられるような、ここでしか手に入らないミュージアムグッズの充実にも期待したい。

(文・写真 ライター 桑原恵美子)
[日経クロストレンド 2021年12月21日の記事を再構成]