消費者と企業の思いをつなげる意識
吉永氏によると、ネスカフェ 香味焙煎では、20年9月のリニューアルを機に、コミュニケーションを通じて消費者と企業の思いをつなげることを意識してきたという。
その1つが、リニューアルから半年後の21年2月に行った「ネスカフェ 香味焙煎 文通陶磁器」キャンペーンだ。これは陶磁器職人と消費者が文通をする企画。「グラスマグではなく陶磁器で(ネスカフェ 香味焙煎を)おいしく飲んでいただきたいと考えての企画だった。これは香味焙煎が培ってきたブランドバリューが、1人の世界に没入しながら商品を楽しんでいただくということと、作り手と受け手の思いが共鳴することにあると考えてきたから。製法含め、こだわりを持って作っていることに価値を認めていただけるからこそ、同じカテゴリーの商品の中で、少々高い価格設定でも買っていただけると感じている。文通陶磁器の企画では、作り手である陶磁器職人と消費者の思いの懸け橋になれたと思った。実際、応募者からの言葉を受け取ってすごく励みになったという感想を職人の方からもいただけた」(吉永氏)

続く21年10月には、室町時代から続く日本の芸道「香道」とコラボした「香道サロン」を期間限定でオープンした。「500年以上にわたり香りと向き合い続ける香道は一期一会の香りを楽しむことであり、その体験と香味焙煎の香りを結び付けられないかと、“香道サロン”を企画した」と吉永氏。
今回の信長の野望とのコラボもこの流れに位置付けるものだ。いずれも一見すると異色に感じる組み合わせだが、共通点は、その世界に没入して楽しむということ。「ネスカフェ 香味焙煎のブランドバリューである1人で楽しむ世界観を深めることや、受け手と作り手との思いを共鳴させることを狙っている。そうした価値をどうやって消費者とつなげ、商品選びに結び付けていけるかを意識して、今後も企画していきたい」と吉永氏は展望を語った。

(ライター 川本勇太、画像提供 ネスレ日本)
[日経クロストレンド 2022年3月14日の記事を再構成]