日経PC21

メモリー不足の疑いはOSの機能で確かめる

ウィンドウズは、メモリーの空きが不足すると、利用頻度の低いメモリー上のデータをSSDやHDDなどに退避させて空きを確保する。退避させたデータは必要になった際に、再度ストレージからメモリー上に戻す。この一連の動作を「スワップ」と呼ぶ(図13)。

図13 メモリーが不足すると、CPUはメモリー上にある当面使わないデータをHDDやSSDなどのストレージに退避させて、メモリーの空きを確保する。この動作を「スワップ」と呼ぶ。これが頻繁に発生するとデータ処理が大幅に遅くなる。CPUを料理人に例えると、メモリーはまな板、ストレージは食材庫のようなもの。まな板が小さいと頻繁に食材庫から食材を入れ替える必要があり、料理人の作業が遅くなる

スワップは、メモリーより格段に速度が劣るストレージの読み書きを伴うため、頻発するとパソコン全体の動作が重くなる。メモリー不足のパソコンが重いのは、ほぼスワップが原因だ。

自分のパソコンがメモリー不足かどうかはウィンドウズ10のタスクマネージャーで確認できる(図14)。まず確認するのは、「コミット済み」欄の数値。右側の数値は実メモリーとページファイル(ストレージ上に作成されたデータ退避領域)を使用したうえでウィンドウズとアプリが確保できる最大容量。そのうちの現在の使用量が左の数値だ。これらの数値を右上にある実メモリー搭載容量と比較する。コミット済みの左側の数値が実メモリー搭載容量の7割以下で、右側の数値も2倍未満であればスワップを気にする必要はない。

図14 普段の作業中の状態で、スタートボタンの右クリックメニューからタスクマネージャーを起動。「パフォーマンス」タブにある「メモリ」を開く(1)(2)。「コミット済み」の左側(2.6GB)が右上の搭載メモリー容量(16GB)の7割以下で、右側(18.5GB)も2倍未満なら、スワップの頻発は気にしなくてよい(3)(4)。「コミット済み」の右側(18.5GB)は実メモリーとページファイル(ストレージ上に作成されたデータ退避領域)の総量で、左側はそのうちの現在使用中の量。アプリを多数開くと両者ともに増加し、後者が搭載メモリー容量近くまで増えるとスワップが頻発し始める

スワップの発生状況はリソースモニターの「ハードフォールト/秒」のグラフで確認できる(図15)。ハードフォールトはスワップの発生頻度のこと。グラフの動きが激しい場合は、スワップが頻発していることを示している。

図15 図14から起動できるリソースモニターで、スワップの発生頻度を確かめることができる。右下「ハードフォールト/秒」のグラフの縦軸がスワップの発生頻度を示しており、折れ線の動きが激しい場合はスワップが頻発している

ビデオ会議が快適に行える容量は?

現状、メモリーを大量に消費する作業としては、各種資料を閲覧しながらのビデオ会議が考えられる。実際にどれほどのメモリー量が必要になるか、「Teams」での会議に参加し、各種アプリで資料ファイルを開いた状態で、メモリーの使用状況を調べた(図16)。

図16 「Teams」で会議を行い、同時に「ワード「」エクセル「」パワーポイント」「Chrome(10個のタブを開く)」「Acrobat Reader DC」「フォト」を起動した際のメモリー使用状況を調べた。4GBでは、コミット済みのメモリー使用量が実搭載メモリー容量を超えてスワップが頻発。メモリーが全く足りていない。8GBでは、メモリー不足になってはいないが、コミット済みのメモリー使用量が実搭載メモリー容量の7割を超えており余裕がない状態だ。16GBでは容量に余裕があり、スワップはほとんど発生していない。各種資料を確認しながら快適にビデオ会議を行いたい場合は、メモリーは16GB以上が望ましい

4GBでは、実メモリーとページファイルを足したコミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量を大きく超え、明らかにメモリー不足の状態に陥った。スワップも頻発している。

8GBでは、コミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量の7割以上に達してはいるが、コミット済みメモリー容量が実メモリー容量を大きく上回っておらず、スワップの発生頻度はさほど多くない。メモリーは取りあえず足りていると判断できるが、十分に余裕があるとはいえない状態だ。

16GBでは、コミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量の半分以下で、スワップもほぼ発生していない。メモリーには十分な余裕がある。以上の点からビデオ会議を快適に行うには、メモリーは8GB以上が必須、余裕を見込んで16GBが望ましい。

10月5日にリリースされたウィンドウズ11の仕様を考えてもメモリーは16GB以上が望ましい。11のメモリー最小要件は4GB(図17)。過去の例から、ウィンドズを快適に動作させるには最小要件の2~4倍のメモリー容量が必要。これからパソコンを長く使いたいなら、やはり16GBがおすすめだ。

図17 ウィンドウズ11のメモリーの最小要件は4GB、ウィンドウズ10 64ビット版の最小要件の2GBから倍増している。ウィンドウズを快適に動作させるには、最小要件の大体2倍以上のメモリーが必要となるので、11を快適に動作させるには最低でも8GB以上が必要と考えたほうがよい

(ライター 滝伸次)

[日経PC21 2021年11月掲載記事を再構成]