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探査機ルーシー、木星のタイムカプセル「トロヤ群」へ

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ナショナルジオグラフィック日本版

木星の軌道に、まだだれも近くで観測したことがない小惑星の大集団がある。そこには、太陽系誕生の貴重な秘密が隠されているという。

米国時間2021年10月16日に打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)の新たな探査機「ルーシー」は、木星トロヤ群と呼ばれるこれらの小惑星群の観測を目指している。12年間、64億キロにおよぶ旅のなかで、木星を先導する位置と追随する位置にある2つのトロヤ群に順に向かい、7つの小惑星を接近通過(フライバイ)する(木星軌道に達する前に、トロヤ群でない小惑星1つにも接近する)。

「ルーシーはこれまで探査されたことのない太陽系内の領域を探査することになります」。NASAでルーシー計画を担当するアドリアナ・オカンポ氏は、10月14日の記者会見でそう述べた。

木星トロヤ群の小惑星は、これまでは夜空に浮かぶ光の点にしか見えていなかったが、ルーシーはそれらの小惑星から1000キロ以内を飛行する。成功すれば、単独の探査機が訪問した小惑星数の最大記録を更新することになる。

ルーシーは25年、火星と木星の間に位置する小惑星帯にある最初のターゲットに到達する。そこからトロヤ群に移動して、27~33年にかけて何度もフライバイを繰り返しながら観測を続けていく。

ルーシーから送られてくる小惑星の色、組成、密度、クレーターなどの詳細なデータは、各小惑星がいつ、太陽系内のどこで形成されたかを解明する手がかりとなる。初期の太陽系が形成される様子を知るうえでも役立つだろう。

「ルーシー」という名称は、有名な初期人類の化石「ルーシー」に由来する。木星トロヤ群はある意味、この化石と同じ役割を持っている。科学者にとって重要な、遠い過去の痕跡が残されているからだ。

「小惑星は確かに、惑星が何から形成されたかを示す化石のようなものです」。ルーシー探査計画の主任科学者で、米サウスウエスト研究所に所属するハル・レビソン氏は、10月13日の記者会見でそう述べている。「太陽系がどこから来たのかを知るには、あの小天体群に行く必要があるのです」

ルーシーの旅路

ルーシーは、複雑なルートを通って小惑星に近づいていく。

まず地球の重力を利用して数回フライバイした後、小惑星帯にある小惑星52246ドナルドジョハンソンのそばを通過する。ルーシーの化石を発見した古人類学者にちなんで名付けられた、幅約4キロの小惑星だ。

その後、探査機は27年に木星に先行するトロヤ群を通過し、一気に5つの小惑星のフライバイ探査を行う。そして次は33年、木星に後続するトロヤ群に入り、パトロクルスとメノエティウスの二重小惑星のそばを通過する。

太陽系を縫うように進むルーシーの複雑な軌道は、ロッキード・マーティン社のブライアン・サッター氏が綿密な計算によって設計したものだ。「ブライアンの仕事は科学であるだけでなく、芸術なのです」とレビソン氏は言う。

木星トロヤ群小惑星は、太陽系のなかでもかなり狭い範囲を2カ所占領しているにすぎないが、小惑星の色や大きさ、軌道の特徴などは実に多様だ。中には、太陽系内に散らばる別の種類の小天体と似ているものがある。たとえば、灰色がかったエウリュバテスとよく似た天体が、小惑星帯でも見つかっている。一方、ゆっくりと踊るように互いの周りを回る二重小惑星のパトロクルスとメノエティウスは、海王星軌道の向こうのカイパーベルトにある連星系によく似ている。

「今回のミッションは、この天体群にある物体の多様性を調査するよう設計されています」と、ルーシー計画の副主任科学者であるキャシー・オルキン氏は述べている。

ルーシー計画のチームは、64億キロの旅に耐えうる探査機を作らなければならなかった。最も遠い地点では、ルーシーは太陽から8億キロ以上離れることになり、そこで得られる太陽光は地球でのそれのわずか数%にすぎない。そのため、ルーシーは巨大なソーラーパネルを搭載している。2枚のソーラーアレイはそれぞれ直径7.3メートルで、太陽電池が約8000個取り付けられている。これほど大きなアレイであっても、普通の電子レンジより低い500ワット程度の電力しか得られない。

フライバイの間、ルーシーは時速約2万4000キロの速度で目標の小惑星の1000キロ以内に接近するため、観測機器は極めて精密なジンバル(機器を水平に保つ台座)に据えておく必要がある。ルーシーが各目標に最接近している間、「L'LORRI」と呼ばれる最高解像度のカメラは、小惑星表面にある直径70メートルのクレーターをはっきりとらえられる。

「接近することで得られるこうした地質および組成のデータは、光の点として見ているだけでは再現できないものです」と、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の小天体専門家アンディ・リブキン氏は語る。

混沌の太陽系初期を解き明かす

木星とともに軌道を回るトロヤ群には数十万個の小惑星があると、天文学者は推測している。この群に含まれる最初の小惑星が発見された1906年以降、天文学者らは約1万1000個の小惑星を特定してきた。そのうちの半数以上は10年以降に発見されたものだ。

各小惑星の名称は、トロイア戦争で戦った戦士たちにちなんでおり、木星に先行する小惑星群のものにはギリシャの英雄、後続の小惑星群のものにはトロイアの英雄の名前が付けられている。今後10年間でさらに多くの小惑星が特定されると見られており、トロイア戦争を描いた叙事詩『イーリアス』の登場人物の名前だけでは、すでには足りなくなりつつある。

従来、これらの小惑星は、木星の大きな衛星ができる過程で出た単なる残骸だと考えられていた。しかしこの25年間で、木星トロヤ群は太陽系の混沌とした初期時代を知る手がかりとなることがわかってきた。

地球にある望遠鏡から観察すると、木星トロヤ群の小惑星はさまざまな色をしており、これはすべての小惑星が同じ素材からできているのではないことを示している。それにもかかわらず、この小惑星群は木星のそばの非常に安定した、容易には入り込めない軌道に定着している。

「トロヤ群は木星と軌道を共有しているため、木星に何が起こったのかをすべて見ていた目撃者のようなものなのです」と、デンマーク、コペンハーゲン大学博士研究員で、太陽系の初期形成を研究するシモナ・ピラニ氏は言う。そして木星の歴史をひも解くことは、太陽系全体の物語を知るうえでも非常に重要だ。

05年、フランス、ニースにあるコートダジュール天文台のレビソン氏らは、太陽系の初期に混沌の時代があったという有力な仮説(現在は「ニース・モデル」と呼ばれている)を提唱した。

それによれば、初期の太陽系には今よりもはるかに多くの小天体があり、木星、土星、天王星、海王星は今よりずっと太陽に近い領域で形成された。巨大なガス惑星に成長したこれらの惑星に多数の小天体が引き寄せられるに伴い、その反作用でガス惑星の軌道が変わり、不安定な状態になった。

そして、ガス惑星同士の相互作用で軌道が外側に大きくふくらみ、現在の位置に収まったというのだ。この大変動で多くの小天体が太陽の近くに引き寄せられるか、太陽系外にはじき飛ばされた。木星がトロヤ群小惑星を軌道に捕らえたのは、この混乱の最中だったのかもしれない。トロヤ群の小惑星の多くは、海王星より遠い場所で形成されたと考えられている。

ニース・モデルが最初に発表されて以来、研究者たちは、トロヤ群に見られるさらに多くの特徴を説明できるよう、モデルの更新を続けてきた。そのほかにも検証されている説としては、木星トロヤ群の一部は、太陽系形成におけるより早い時期、たとえば木星がまだ幼く、地球ほどの大きさしかなかったころに、その軌道に捕らえられたのではないかというものもある。

しかし、太陽系の形成と進化に関するこれらの説を検証するには、木星トロヤ群に接近し、間近に観察する必要がある。

レビソン氏は言う。「思いがけない発見に出合えることを楽しみにしています。この期待は裏切られないでしょう!」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年10月20日付]

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