2つの動作周波数の違いは?

スペック表の動作周波数欄には、「基本動作周波数」「ブースト機能対応の有無」「最大動作周波数」が記載されている(図18)。

図18 最近のCPUはブースト機能を搭載しており、スペックに基本動作周波数とブースト機能による最大動作周波数が記載されているものが多い。以下、それぞれについて解説しよう

基本動作周波数とは、CPUの熱設計電力に基づく標準動作クロックのこと。CPUは図19の通り、クロックに合わせて処理を実行するため、動作周波数が高くなるほど時間当たりの処理回数が多くなる。このため、同世代、同ブランド、同シリーズにおいては、基本動作周波数が高いほど性能が高くなる。

図19 基本動作周波数は、CPUのTDP(熱設計電力)に基づく標準動作クロックのこと。CPUはクロックに合わせてデータ処理を行う。動作クロックが高いほど一定時間で多くの処理を行えるため高性能となる

ブースト機能は、CPUの消費電力や発熱量に余裕がある場合に、基本動作周波数をあらかじめ決められた値まで自動的に引き上げて、性能を高める機能だ。インテルのCPU、AMDのCPUともに、多くの製品がこの機能を搭載している。図20は、インテルのブースト機能「ターボ・ブースト・テクノロジー」の動作イメージだ。1コアの場合は最大で4.6GHz、2コアの場合は最大4.4GHzで動作するといったように、動作コア数により上限値が設定されている。

図20 インテルのCPU、AMDのCPUともに、消費電力などに余裕がある場合に、一時的に動作周波数を引き上げて性能を高めるブースト機能を搭載している。図は、インテルのターボ・ブースト・テクノロジーの動作イメージ。アクティブなコアの数で上がる段階が決まっている

最大動作周波数というのは、ブースト機能の最大値(1コア動作時の上限値)を意味している(図21)。ブースト機能に対応したCPUの場合は、最大動作周波数が性能の判断基準となる。

図21 最大動作周波数は図20のブースト機能の上限値で、最近のCPUはこれが性能の指標になる。TDPをメーカーが規定の範囲で自由に設定できるインテルの第11世代CPUのスペックでは、基本的にこの最大動作周波数しか表記されていない

なお、インテルの第11世代CPUは、規定範囲内で各パソコンメーカーが自由にTDPを設定できる。このため、第11世代CPU搭載パソコンでは、CPUのスペック欄にTDPを基準とする基本動作周波数を記載していないものがほとんどだ。今後は同様のCPUが増えると思われるので、スペック欄にはブースト機能の最大値である最大動作周波数だけを掲載する製品が多くなると予想される。

コア数とスレッド数の関係を理解しよう

スペック表のコア数とスレッド数の欄には、物理コア数とスレッド数とマルチスレッド機能対応の有無が記載されている(図22)。

図22 コア数は1つのCPUに搭載されている物理コア数のこと。スレッド数とは同時に実行できる作業数のこと。ハイパースレッディングとは1つの物理コアを仮想的に2つのコアに見せるマルチスレッド機能。以下、それぞれの詳細を解説しよう

コア数とはCPUの演算ユニットの物理的な数のこと。例えば4コアと表記されていれば、1つのCPUパッケージに4基の演算ユニットを搭載していることを意味している。コア数が多いほど同時に実行できる処理数が増えるので性能が高くなる(図23)。

図23 物理コア数はCPU内部にある演算ユニットの数のこと。数が多いほど同時に行える作業数が増えて性能が向上する。図のように物理コア数は料理人の数だと思えばよい。最近では4コア以上が主流。8コアのものもある。コアの性能はCPUのメーカーや世代によって異なる

マルチスレッド機能は、1つの物理コアを仮想的に2つに見せ、並列処理を実行する機能だ。図24はインテルのハイパースレッディングの動作イメージ。AMD CPUも同様の機能を搭載している。

図24 ハイパースレッディングはインテルのマルチスレッド機能。マルチスレッド機能を備えていれば、1つの物理コアで2コアのように2つの処理を同時に行うことができる。AMDのCPUでも同様の機能を持つものが多い

スレッド数とは、CPUが同時に行えるデータ処理数を意味する。マルチスレッド機能対応のCPUの場合、スレッド数は物理コアの2倍になる。例えば2コアであれば4、4コアであれば8となる。スレッド数が多いほど同時に処理できるデータ量が増えるため、性能は高くなる(図25)。

図25 スレッド数とはCPUが同時に行えるデータ処理数のこと。図24の通り、マルチスレッド機能対応のCPUの場合は、2コアで4つのデータ処理を、4コアで8つのデータ処理を同時に行える。料理に例えると、スレッド数はフライパンの数と考えるとわかりやすい

ただし、マルチスレッド機能はCPUコアの余力を使う機能なので、実際に物理コア数を増やすほどの効果はない。例えば、同世代で動作周波数(ブースト時含む)が同じCPUの場合は、4コアCPUのほうが2コア/4スレッドのCPUよりも高性能だ。このことは覚えておきたい。

(ライター 滝伸次)

[日経PC21 2021年11月号掲載記事を再構成]

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