アニメやコミック、ゲームなどの絵柄やビジュアルスタイルから発展して描かれる「コミックアート/アニメアート」。国内外で注目が高まる同ジャンルの第一人者・米山舞のスペシャルインタビュー第2回は、そのプロデュース能力の高さに迫る。

コミックアート/アニメアートを牽引(けんいん)するトップアーティストとして、世界的にも注目が高まる米山。最近の仕事は「絵」だけにとどまらない。
「以前は、ライトノベルや小説に合った絵や、初音ミクなどキャラクターのIP(知的財産)を描くお仕事が多かったんですけど、一昨年ぐらいから、広告や商品、映像など、絵の訴求力やインパクトが必要なお仕事に切り替わってきた気がします。
例えば、カネボウ化粧品のKATEも、エヴァの次のオリジナルのお仕事が進んでいます。パッケージを手掛けたのですが、曲もつけようとなって、映像作品も任せていただきました。
このように、企画の方々とお話して、絵を描くだけでなく、企画そのものにも参加させていただける機会が増えてきています。責任も大きくなりますが、後々、自分の絵の使われ方や展開を後悔しない、このほうが良いという確信が持てるよう、言いたいこともちゃんとお伝えしています」(米山舞、以下同)
技術の制約で絵を変えるのは絶対にやりたくない
全工程を見渡し、自ら手を動かしていくというやり方は、実は彼女のルーツともいえる「アニメの現場と同じ」作り方なのだと言う。
「アニメの制作現場は、1本作るとラッシュチェック(リテイク出し)という工程があります。例えば絵が枠の分まで足りていなかったら描き足すなど、ここで修正や変更点をちゃんと出していかないといい作品にならないんですね。作品の質や人に伝わる精度が変わってくる。アニメにはそういう信頼感があると思うんです。“製品を出荷するまで精査してチェックする”という、私のもの作りの考え方は、ここからきています。
作品を人前に出すことに対しての思い入れは、かなり強いです。自分だったら、静止画を薄い紙に出力しただけのものは、部屋には飾らないと思うんです。だったら、自分がうれしいもの、飾りたいものってどんなものだろう――額装した複製原画やポスター、アニメグッズもいいですけど、でもそれ以上に物に対する実感やうれしさがあったら、絵に対する認識や扱いももっと変わってくるんじゃないかなと。オリジナル作品を届けるのなら、持っていてうれしい、飾って楽しい。生活のなかで物として存在できるものにしたい。それに値する作品を作り上げる必要があるんですよね」
その実現のため、自分で描くだけでなく、加工技術を持つ業者や工房を探し、交渉してアイデアを出し、一緒に制作も行っていくという。