2021年デジタル機器を総まとめ 5つの注目ポイント
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
2021年もそろそろ終わろうとしているが、今年もさまざまなデジタル機器が登場し、楽しい1年になった。米Apple(アップル)が独自に開発した半導体「M1」を搭載した機種など、5~6年前には考えられなかった製品で、技術の進歩には感嘆するばかりだ。
半導体不足が話題になっているが、パソコンやスマートフォンの供給にはあまり影響が出ていない。新型コロナウイルス禍でパソコンやウェブカメラなどが不足した20年より手に入りやすかった。
それでは今年1年のトレンドを振り返っていこう。今回は注目ポイントを5つ紹介する。
アップルの独自チップが席巻
2020年秋登場して大きな話題となったアップルの独自開発プロセッサー「M1」だが、21年はさらに普及が進んだ。
まず今春、タブレットのiPad ProにもM1が搭載された。つまり、パソコンのMacBook Airと心臓部が共通になったのだ。パソコンとタブレットの心臓部が共通化されたのは、画期的な出来事だ。パソコンは米Intel(インテル)や米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、スマホとタブレットは米クアルコムや台湾MediaTekといったこれまでのすみ分けが変わりつつあることを実感した。
とはいえ、ここまではまだおとなしいものだった。
10月に発表された新MacBook Proに搭載された「M1 Max」と「M1 Pro」はとてつもない性能を発揮したのだ。GPU(画像処理半導体)を搭載したデスクトップパソコンに匹敵する性能を、スリムなノートで実現してしまった。鳴り物入りで登場したチップだが、情報技術(IT)に詳しい人たちの多くが感嘆の声を上げた。
僕自身、MacBook ProのM1 Pro搭載モデルを使っているが、半導体の処理能力が高いため発熱が抑えられ、ファンがほとんど回らない点には驚かされる。性能を考えると、発熱と消費電力の少なさは信じられないほどだ。性能面ではMacBook Proに迫るWindowsパソコンも遠からず登場するだろうが、発熱や消費電力では当面、太刀打ちできそうもない。
Windows 11は静かな船出
10月にマイクロソフトから新しいOS(基本ソフト)のWindows 11が登場したが、市場ではほとんど話題にならなかった。昔はWindowsの新バージョンが登場すると大騒ぎで、発売日には秋葉原に行列ができ、同時にパソコンの買い替えも進んだ。
ところがWindows 11の船出は静かで、話題性にも乏しかった。まあ、新しいOSが登場したところで、できることが大きく変わるわけではないので、それほど驚くような現象ではないと言える。MacOSも毎年新しくなるが、ほとんど騒がれることはない。
Windows 11の使い勝手は良好で、アップグレードに伴うトラブルも少ない。安心して使えるが、見どころも多くない。セキュリティーがより強固になったのが大きな進化点だが、それは仕事の生産性には寄与しない。話題にならないのは当然だろう。コロナ禍によるパソコン需要が一段落したタイミングでの登場なので、買い替え促進の効果も大きくはないようだ。
今後、OSのアップグレードは、このように静かに行われるようになるだろう。Windows以外のデバイスは、どれも静かにアップグレードしている。アップグレードに費用がかからなくなったのも、自然な流れといえそうだ。
120Hz駆動が当たり前に
スマホにおいては、大きなトピックスのなかった1年だった。性能は順当に進化し、カメラの画質も向上したが、見どころは多くなかった。
そんな中で注目したいのが、ディスプレーの120ヘルツ(Hz)駆動が当たり前になってきたことだ。これは画面の書き換え速度が高速化したことを示す。例えばブラウザーでスクロールしても画面がちらつかず、指の動きにしっかり付いてくる。ゲームをプレーしても残像が少なく、気持ちがいい。
さらに、タッチ操作のサンプリングレートも向上しており、指での操作に対する反応も早くなった。
中級モデル以上のスマホの新機種を買うと、多くがこの手のディスプレーを搭載している。使っていて気付かないかもしれないが、新製品に慣れた後で旧機種をいじるとストレスを感じるだろう。実は大きな進化なのだ。
最近では、ディスプレーの書き換え速度を用途に応じて変化させることで、バッテリー駆動時間と操作性の良さを両立したスマホも登場している。
ウェブ会議向けが充実
20年はコロナ禍でウェブカメラが売れに売れた。21年はさらにウェブ会議向けのデバイスや機能が充実した。
ノートパソコンの新機種の多くが、マイクのノイズキャンセリング機能を搭載した。周囲の音がうるさくても、自分の声をきれいに届ける機能だ。スピーカーにも力を入れたノートパソコンが増えている。
ウェブカメラも進化し、画質の良い製品が続々とお目見えした。考えてみれば、大事な会議や商談で自分をよく見せたいのは当たり前のこと。高級なウェブカメラは画質が明らかによい。
ほかにもウェブ会議用のスピーカーやマイクなどが続々登場した1年だった。
PCやスマホのスタンドがちょっとしたブームに
パソコンやタブレット、スマホなどを立てかけるスタンドがちょっとしたブームになっている。カフェなどで見かけた方も少なくないだろう。
タブレットやスマホを立てて置くのは、そのほうが見やすいからだ。折りたたみのスタンドが増えており、かなり目立っている。
また、ノートパソコンは高さのあるスタンドに置くことで、視点が高くなりディスプレーの見やすさが増す。視線を下げなくても済むので首が楽だ。変わったスタイルでパソコンを利用しているように見えるかもしれないが、使ってみると理にかなっていることが実感できる。
こんなアナログなデバイスも、静かな流行をみせた21年だった。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
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