検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

飼い主の感情、ペットの犬に伝染 驚きの共感力の秘密

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

イヌを飼っている人たちは「うちの子は人間の気持ちを察するのが得意だと感じることがある」という。これは愛犬家の妄想とは言えないようだ。最近の数々の研究で、イヌは人間が発する態度や化学物質の手がかりから飼い主の恐怖、興奮、怒りを識別できること、またそうした感情が彼らに「うつる」ことがわかってきたからだ。

幼児は、親の姿から手がかりを得て、人間や自分の周囲の世界に対してどのように反応すべきかを学ぶ。イヌも同じで、飼い主を見ることで同様のサインを受け取る。飼い主が穏やかで自信に満ちた感情を発しているとき、イヌは周囲の環境を安全で安心なものと見なす傾向にある。

「イヌは驚くほど社会的な動物であり、人間の温かさや喜びにすぐに影響を受けます」と米アリゾナ州立大学の心理学教授で、イヌ科学共同研究室の責任者クライブ・ウィン氏は言う。しかし、その逆もまた真であり、飼い主のストレスや不安がイヌのストレスや不安となることもある。

こうした感情の伝染は「情動伝染」と呼ばれ、異種間でも起きることが心理学的、生理学的、行動学的にわかっている。ここ数年のいくつかの研究によって、感情の伝達には、ホルモンの放出や人間の体臭の変化といった生理学的な要因がかかわっていることが明らかになってきた。また、最近の研究では、イヌに飼い主の感情がどの程度伝染するかは、付き合いの長さに依存することもわかってきた。

共感の原始的な形

人間とイヌとの感情のつながりの程度には幅がある。お互いの気持ちを察する、理解する、さらには同じ感情を共有することもある。

研究からは、イヌは人間のあくびを見て同じようにあくびをしたり、赤ちゃんの泣き声を聞いて(人間と同じように)コルチゾール(ストレスなどにより分泌されるホルモン)のレベルが上昇したり、人間の声に含まれる感情的なトーンに反応したりすることが確認されている。

お互いにやり取りをしたり、目と目で見つめ合ったりするだけで、人間と飼い犬には俗に「愛情ホルモン」や「抱擁ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌される。「目を合わせる、なでるなどの社会的な接触により、オキシトシンの分泌が促進されます。これはイヌから人間、人間からイヌというように、双方向に作用します」と、米エモリー大学の精神医学教授ラリー・ヤング氏は語る。

「情動伝染を起こすには、イヌが飼い主の感情を認識できる必要があります。そのためには注意を払うことが不可欠であり、オキシトシンはそれを容易にしてくれます。オキシトシンのおかげで、脳は社会的な手がかりに集中することができるのです」

イヌはまた、自分にとって重要な人間が感じていることを、自分の感覚として感じることができる。たとえば2020年に学術誌『Canadian Journal of Experimental Psychology』に掲載された研究は、自宅において飼い主、あるいは見知らぬ人が笑ったり泣いたりするふりをしたとき、イヌがどのような反応をするかを調べている。

泣いているように見える人に対して、イヌは視線と身体的な接触の両方を通して多くの注意を払った。また、見知らぬ人が泣いたとき、イヌはより強いストレス反応を示したと、この研究の共同執筆者である米ウィスコンシン州、リポンカレッジの心理学准教授ジュリア・メイヤーズ=マナー氏は述べている。

「あらゆる共感には、伝染する感情の要素が存在します。ほかの動物の感情を認識するのは複雑ですが、ほかの動物が感じていることを"感じる"のは、より単純なのです」

人間は、会話の最中に相手の表情やボディーランゲージを無意識にまねする傾向を持っている。それがきっかけで、人はほかの人の感情を共有することが多い。ミラーニューロンと呼ばれる神経細胞を発火させることで、あたかも自分がそれを自然に体験しているかのような感情が脳内に呼び起こされる。

短時間で起こるこうした模倣は、イヌ同士の交流や遊びの中でも起こることが確認されており、イヌが人と接する際にも起こっている可能性がある。

イヌも人間も同じように、怒っているときには顔の筋肉がこわばり、歯を食いしばり、体が緊張するものだと、マイヤーズ=マナー氏は指摘する。これはつまり、怒っているイヌを目の前にしたとき、あるいは自分が怒っているときには、イヌと飼い主はお互いに相手の表情やボディーランゲージを無意識に模倣し、その結果同じ気持ちを抱くようになる可能性があるということだ。「イヌとの密接な関係によって、わたしたちはほかの種とは異なる方法でお互いの(感情の)シグナルを感知するよう共進化してきたのです」

長年、研究者たちは、イヌが家畜化した際、情動伝染が生き残りのメカニズムとして作用したのではないかと考えてきた。つまり、もしイヌが飼い主の感情を読み取って共有することができたなら、より大切にしてもらえると考えられるからだ。しかし最近、そうした考え方は変化してきている。

学術誌『Scientific Reports』に掲載された最新の研究は、イヌと飼い主が触れ合う際にオキシトシンが放出される原因は、イヌと飼い主の間にある絆や経験であることを示している。また、『Frontiers in Psychology』に19年に掲載された研究では、人間と飼い犬の間で情動伝染が起こる程度は、同じ環境を共有している時間に伴って増加することが判明している。

顔の表情と体臭

五感もまた、人と犬との情動伝染に影響を与える。イヌは顔の手がかりよりも身体的な感情表現により多く注目するという研究結果がある一方で、イヌは人間の顔の表情を、人間と同じようなやり方で処理することを示す研究もある。18年に『Learning & Behavior』に掲載された研究によると、イヌは6つの基本的な感情――怒り、恐怖、幸福、悲しみ、驚き、嫌悪――を表す人間の顔に応じて、視線や心拍数に変化が表れるという。

「イヌと人間が態度を同調させることはわかっています。イヌはよく飼い主の自然な動きに合わせて行動するからです。ですから、イヌが感情を同調させるというのも意外ではありません」。こう話すのは、米オレゴン州立大学コーバリス校の動物行動学者で、動物科学准教授のモニーク・ユーデル氏だ。「イヌはわたしたちのことを非常によく観察しています。彼らは人間の視線やボディーランゲージだけでなく、わたしたちが発する音や香りにも影響を受けています」

聴覚に関しては、泣くなどの苦痛の表現や、笑うなどのポジティブな音を聞いたとき、イヌはそのほかの発声や人間以外のものが発する音を聞いたときとは異なる反応を示すことがわかっている。人間が出すそうした音に触れると、イヌは飼い主や音源の方を見たり、そちらに近づいたりする可能性が高くなる。

嗅覚に関しては、「イヌは体臭に対して非常に敏感であり、(人間の)糖尿病や、おそらくはてんかんを検知することができると考えられています」とウィン氏は言う。18年に『Animal Cognition』に掲載された研究では、ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーを、人間の体臭サンプル3種類(恐怖、幸福、ニュートラルな感情)にさらす実験を行っている。研究者らは、男性被験者にそうした感情を起こさせた後、脇の下からにおいを採取した。

そして集めたにおいを、イヌが自由に動ける空間(飼い主や見知らぬ人もいる)に、特殊なディスペンサーを使ってエアロゾルとして散布した。恐怖のにおいにさらされたイヌは、「幸せな」においをかがされたときよりもストレスを感じている行動が増え、心拍数も上昇した。イヌたちはまた、幸せなにおいをかいだときの方が、見知らぬ人たちに対してより興味を示した。

人間の感情を察知するとき、「イヌは多くの場合、視覚、聴覚、嗅覚、そしてだれかが不安になっているときにはおそらく触覚も含めたさまざまな感覚から集めた情報を含む、複合的な合図を使っています」と、コロラド大学ボルダー校の生態学・進化生物学名誉教授マーク・ベコフ氏は話す。

イヌの感情も人にうつるのか?

ところで、イヌの感情が人間に伝染することがあるかどうかについてはまだよくわかっていない。ただ「その可能性は高い」と考える専門家もいる。「イヌの幸せがわたしの気分を高揚させることは確かです」とウィンは言う。ベコフ氏も同意見だ。「わたしも、人間はイヌの感情に影響を受けると思っています。恐怖やストレスの方が伝染しやすい場合もあるでしょう。しかし、しっぽを振って駆け寄ってきたり、耳を後ろに倒さず前に向かって起こしていたりするときには、イヌの幸せな感情は容易に読み取ることができます」

イヌを飼っていてもいなくても、人間はイヌの表情からポジティブな感情とネガティブな感情の両方をうまく見分けることができる。その理由のひとつは、特定の感情状態を表す表情の変化が、どちらの種にも共通しているためだ。

ストレスや緊張が双方向に伝染することを示唆する例として、リード装着時の過剰な反応がある。リードをつけて散歩しているときに、愛犬がほかのイヌや人、車に向かってほえたり、うなったり、突進したりすると、飼い主は恥ずかしい思いをしたり、ストレスを感じたりして緊張し、それがイヌの恐怖心や不安感をさらにあおることがある。それがまた「イヌが再び同じ行動をとるきっかけとなり」、そこから何度も同じことを繰り返すようになる可能性もあると、ユーデル氏は言う。

それでも、お互いの感情の起伏を共有することは多くの場合有益だ。なぜならそれはより深いレベルでのつながりを築く助けとなるからだ。「わたしたちの祖先にとって、飼い犬が何かについて警告してくれるおかげで迅速に行動できるということには、生死を左右する意味がありました」とウィン氏は言う。「お互いに警告を伝えられるというのは、どちらの種にとってもメリットがあるのです」

家、生活、家族、活動を共有することは、人間とイヌとのつながりの質を高めてくれる。お互いの感情を共有することは、「相手をよりよく理解する助けとなり、絆を深め、その絆を長期間維持してくれます」とベコフ氏は言う。「イヌと人間が感情を共有することは、社会的な接着剤とも言えるものです」。この「接着剤」が、生涯にわたって人とイヌを結びつける役割を果たしていることはあるだろう。

(文 STACEY COLINO、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年10月24日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_