更年期うつはホルモンのアップダウンが誘引

──更年期の症状と考えられる抑うつ状態、あるいは更年期うつは、なぜ起きるのでしょうか。

高尾 更年期には、「抑うつ的な気分」や「物事に対する意欲の低下」が表れやすいのですが、これはエストロゲンの値が下がることが、脳内のセロトニンなどの活性に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。また、プロゲステロンが減ると、GABA(ガンマアミノ酪酸)やセロトニンといった神経伝達物質の働きに影響があるとされます。セロトニンやGABAは、不安感を抑えたり精神を安定させたりする働きがあるため、エストロゲン、プロゲステロンが減少する更年期は、「更年期うつ」を発症しやすいと言えます。

ただ正確に言うと、エストロゲンやプロゲステロンは一定の速度で減少するわけではなく、アップダウンを繰り返しながら濃度が下がり、しかもその変動幅はとても大きいのが特徴です。アップダウンが激しいと、よりつらく感じます。いわば産後に似た状態が続くのです。もっと言えば、月経前症候群(PMS)でも同様の症状に見舞われる人もいますよね。

初回受診時に「更年期障害」とは言われない

──他の病気の可能性を否定したうえで診断されるという「更年期障害」ですが、診断名がつくまでは、何もできないということでしょうか。

高尾 実際には、並行して治療を開始するケースが多いと思います。恐らく受診を考えた時点で、すでに不調を抱えて、治療を希望しているケースが多いでしょう。ですので、問診により今の状態を確認し、まず漢方での治療を希望しているのか、より早く効き目を感じやすいホルモン補充療法(HRT)を希望しているのか、決めていきます。その上で並行して、他の病気がないか、治療の禁忌事項がないかを確認することになると思います。

例えば、初回受診時に相談を受けたら、次回受診時には健康診断の結果を持参してもらい、そこで検査されていない甲状腺をチェックしようといったことを、並行して行うわけです。つまり、初回受診時に「更年期障害ですね」と言われることはまずないと言っていいでしょう。

(次回に続く)

(ライター 山田真弓)

高尾美穂さん
産婦人科医・イーク表参道 副院長。医学博士・スポーツドクター・Gyne Yoga主宰・産業医。東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。2003年にヨガと出会い、ケンハラクマ師に師事。ヨガ、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い女性の心身を様々な角度からサポートする。近著に『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)がある。

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