腎症を発症すると、心筋梗塞や脳卒中も起こしやすくなってしまう。透析を受ければ働けなくなった腎臓の機能はカバーできるが、それでも心筋梗塞や脳卒中のリスクは下がらないという。「心臓と腎臓は密接にリンクしている。腎臓を守ることが心臓を守ることにつながるのです」と小田原さんは話す。

網膜症や腎症など恐ろしい糖尿病の合併症を防ぐには、とにかく血糖値を下げることだ。血糖値の指標の1つであるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)[注2]は、6.5%以上になると糖尿病の可能性が強く疑われる状態とされる。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」によると、血糖値の正常化を目指す観点から6.0%未満が目標とされている。

[注2]赤血球のヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合したものの割合。検査日の数値だけを見る空腹時血糖値と異なり、最近1~3カ月の長期的な血糖値が反映される。特定健診の基準値は5.5%以下。ちなみに、合併症予防のための目標値は7.0%未満だ。

血糖値に加え、血圧を正常に保つことも必要になる。血圧が高いほど腎機能が低下していくことが分かっているからだ。小田原さんによると「腎臓は心臓以上に血圧の影響を受けやすい臓器。腎臓のためには血圧は低ければ低いほどいい」という。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」によると、正常血圧は上(収縮期血圧)が120mmHg未満で下(拡張期血圧)が80mmHg未満。上が140mmHg以上か下が90mmHg以上になると「高血圧」と診断される。上が130~139mmHg、下が80~89mmHgのグレーゾーンは、高血圧ではないが正常でもない「高値血圧」と呼ばれる[注3]

[注3]高値血圧と正常血圧の間に位置する収縮期血圧120~129mmHgは「正常高値血圧」と呼ばれる。

腎機能が悪い人や糖尿病の人はこの高値血圧よりも低い血圧を維持しなければならない。つまり、上が130mmHg未満、下が80mmHg未満だ。なお、これは医療機関で測る場合であり、リラックスできる自宅で測る場合はそれぞれ5mmHgずつ低くなる。

脳卒中や心筋梗塞は発症してから後悔しても遅いし、腎機能は脂肪肝などと違っていったん悪化すると元に戻らないという。生活の改善だけで血圧が下がらないようなら、嫌がらずに薬を飲んだほうがいいだろう。

「腎臓を守り、心筋梗塞や脳卒中を防ぐには血糖値と血圧の両方をしっかりコントロールしなければいけません。食生活に気を配る、禁煙、お酒を飲みすぎない、適度な運動習慣など、健康的な生活習慣を持つことが重要です」と小田原さんはアドバイスする。

糖尿病性腎症から、50歳を前に透析治療をスタート

小田原さんの講演に続き、タレントのグレート義太夫さんと管理栄養士の沼津りえさんが登場し、3人のトークセッションが始まった。

グレート義太夫さんはまだ30代だった1995年に糖尿病と診断された。やがて糖尿病性腎症を発症し、50歳を前にした2007年から透析治療を始めたという。芸能界ならではの不規則な生活に加え、父も糖尿病だったというから遺伝もあったのかもしれない。

もっとも「糖尿病は遺伝的要因もありますが、生活習慣でかなり予防できます。実際、終戦直後の日本には少なかったでしょう」と小田原さん。糖尿病の急増は、食生活の変化と運動不足による肥満の増加が最大の要因だと指摘した。

「肥満は腎臓にもダメージを与え、BMI[注4]の増加で腎機能が低下することが分かっています。大切なのはカロリー制限と運動で体重を減らすこと。体重が5%減るだけで劇的に代謝が改善しますから、まずは5kgやせることを目指して長期にわたってがんばることが大切です」(小田原さん)

[注4]体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、太っているほど大きくなる。日本肥満学会では22を「標準体重」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上を「肥満」としている。

糖尿病の予防、悪化を防ぐため、食生活でのポイントを沼津さんが語った。

「大切なのはちょっと意識すること。暴飲暴食をやめる、食べる順番を意識する、味の濃いものをやめる、ゆっくり食べる。これらのことを意識するだけでも、毎日の食事を楽しみながら長く続けられると思います。血圧のためには減塩も重要です。最近はおいしい減塩食品も出ていますし、いろいろな味のタレを用意して家族みんなで“味変”(味の変化)を楽しむのもいいでしょう」(沼津さん)

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生活習慣の改善とともに必要な薬はきちんと飲む