2021年初めに「Clubhouse」が大ブームを引き起こしたことを筆頭に、世間での“音声熱”が高まり、音声コンテンツが注目を集めている。どんなメディアや作品が話題となったか、最近の動きを見ていこう。
トレンド1:音声SNSが一大ブームに

2021年に音声コンテンツ関連で特に目立った動きと言えば、1月に日本に上陸した、音声SNS「Clubhouse」だろう。音声版ツイッターとも呼ばれ、ネットを介した新たな音声会話体験ができると大きな話題になった。しかも「招待制」という方式を取っていたため(7月に廃止)、それがプレミアム感を生み、一時期はネットオークションで招待枠が売買されるほどの盛り上がりに。さらに有名人や著名人も参入したことで、日本中を巻き込むブームとなった。
現在、Clubhouseは当初に比べて落ち着きを見せてはいるものの、5月にはツイッターが類似機能の「Spaces」を公開するなど、音声SNS自体は定着し始めている。
トレンド2:積極展開が目立つラジオ局
音声コンテンツの本丸であるラジオ局は、近年デジタル化を積極的に推し進めて、ユーザー層が拡大。その立役者が、スマートフォンやパソコンでラジオがリアルタイムで聴ける無料のインターネットラジオサービス「radiko」だ。特に、1週間以内に放送された番組をさかのぼって聴ける「タイムフリー聴取機能」は、ラジオの楽しみ方を大きく変化させており、これまでラジオと接点がなかった人たちにもリーチできている。

昨年はコロナ禍での「おうち時間」が後押しとなり、ユーザー数も3月以降に大きく増加。それまで約750万人だった月間利用者数が4月に900万人を突破した。現在もその水準をキープする。
radikoはデータが活用できることも大きい。昨年4月には、radikoの聴取データを掛け合わせた「ラジオ365」という新たな聴取率調査がスタート。これまで2カ月に1度だった調査スパンがデイリーとなり、数字も毎分単位へと大きく進化した。さらに「radiko viewer」というダッシュボードを通じて、毎分ごとの細かいデータも把握できるようになっている。
ニッポン放送コンテンツプランニング部所属の立川慎二氏は、「リアルタイムで聴取ログが取れ、ゲストや企画内容の反響などが蓄積されるようになりました。このデータを番組制作にも生かすようになってきています」と語る。
こうした追い風に乗って、サービス強化の動きも目立つ。例えば、ラジオ番組を動画配信サービスで同時生配信する取り組み。文化放送はYouTubeを活用。朝の情報番組『おはよう寺ちゃん』、平日深夜のワイド番組『CultureZ』などで同時生配信を実施。10月にスタートする峯岸みなみなどが出演する新番組『カラフルオセロ』でも行う予定だ。
ニッポン放送は『オールナイトニッポン0』を「ミックスチャンネル」、今年4月にスタートした『オールナイトニッポンクロス』では「smash.」で生配信を行う。前出の立川氏は、「今の10代は、YouTubeやTikTokに慣れ親しんでいるので、音声だけで取り込んでいくのはなかなか難しい。スタジオでの生放送の様子が映っていることは重要で、動画配信サービスと組むことで、その入り口を作れている」と語る。
そのニッポン放送では、ラジオ番組のファンクラブを設立するという新たな試みも。三四郎は今年4月に「三四郎のオールナイトニッポン公式ファンクラブ バチボコプレミアムリスナー」を発足。ファンクラブ内では、限定のプレミアムラジオや、彼らのブログなどが楽しめるようになっている。