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湘南で人気のスーパー 大手メーカーも引き寄せる魅力

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日経クロストレンド

セブン&アイ・ホールディングス傘下の「ヨークマート」やディスカウントスーパー「オーケー」といった大手があるにもかかわらず、開店と同時に多くの地元客がこぞって訪れる人気スーパーが神奈川県の湘南エリアにある。スーパーマーケットの「スズキヤ」だ。

スーパーの「スズキヤ」などを展開するスズキヤ(神奈川県逗子市)は、1902年に現在の会長である中村洋子氏の祖父が神奈川・逗子で創業。食料品や雑貨、燃料などを販売していたが、57年にはスーパーマーケット業態にたどり付く。現在では、湘南エリアを中心に神奈川県内で12店舗のスーパーマーケットを展開するのに加え、雑貨専門店なども出店している。

スズキヤが地元民に人気を集める理由は、大きく2つある。1つが、「独自性のある品ぞろえ」だ。

店を訪れると、一般的なスーパーとは品ぞろえがかなり異なることに驚く。「商品の価格帯は高めだが、他店に絶対に負けない良いものを販売しているという自負がある」(中村氏)。その自信に裏打ちされた商品を、消費者に自信を持って売る。

例えば魚は、逗子市内にある小坪漁港をはじめ、三浦半島の漁港から水揚げされたばかりのものが並ぶ。明らかに新鮮さが違う。開店と同時に新鮮な魚がぎっしりと並ぶ鮮魚コーナーは、朝から多くの客が訪れ、手を伸ばしていく。鎌倉のイタリアンレストラン「ラッテリア ベベ カマクラ」のモッツァレラチーズなど、地元の人気食材を多く販売する他、スズキヤでしか買えないオリジナル商品も随所に並ぶ。

オリジナルの弁当・総菜でヒットを連発

圧巻なのは、総菜や弁当の多様さとオリジナリティーの高さだ。多くのファンがいる、スズキヤの代名詞といってもいい。

全国スーパーマーケット協会の「お弁当・お惣菜大賞」では、9年連続で同社の商品が入賞するほどの実力を誇る。中でも、2020年にのり弁当部門の最優秀賞を受賞した「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」は、多い日には500個を販売する大ヒット商品。昆布茶を混ぜたごはんの上に手でちぎったのりをのせ、塩鮭、ちくわの磯辺揚げ、卵焼きなどのおかずをのせたのり弁は、女性やシニアにもちょうどいい量だ。さらに、お吸い物が付いていて、途中でお茶漬けにできるというアイデアも利いている。

現在、会長を務める中村氏は、さまざまな企業に勤めた後、1984年に同社に戻り、88年に41歳で社長に就任した。実は、中村氏がスズキヤに入社したときから重要視し、最初に担当したのが総菜部門だったのだ。「食材を無駄なく活用するのはスーパーマーケットにとって大切にしたい部分。それに加えて、食べ方を提案することで、お客様の食生活を豊かにしたり、意識を変えたりできる。そういうことを40年以上ずっと考えている」(中村氏)だけあって、現在は総菜や弁当だけで約400種類を販売している。

大手メーカーも地元企業もこぞってコラボをするわけ

小規模スーパーながら、大手メーカーもこぞってコラボすることも強みだ。ミートボールで有名な石井食品とスズキヤが共同開発した「ブイヤベース用スープ」は、手軽に本格的なブイヤベースが作れると話題に。店舗ではエビやムール貝などの魚介類とブイヤベース用スープをセットにして販売したところ、新型コロナウイルス禍でもとても売れたという。

商品開発成功の秘訣として、メーカーとの関係性が大事であると中村氏は考える。「信頼関係を築くために、こちらからもアイデアを出し、メーカー側にうちの話を聞いてみようという気持ちになっていただかなければならない。相手の提案にしっかり耳を傾け、こちらからも意見をきちんと言い、相手にその意見をきちんと聞ける耳を持ってもらえれば、どんなにパイが小さくても大切にしようと思ってくれる」(中村氏)。メーカーに対応する中村氏の背中を見てきたバイヤーも、メーカーと真摯に付き合える環境をつくれるようになり、多様な商品が生まれている。

地域活性化の思いから、地域とのコラボにも力を入れる。21年のお弁当・お惣菜大賞の中華点心部門で優秀賞を獲得した「フォアグラときのこの春巻」は、逗子にある中村氏の行きつけのレストラン「食彩堂」で出されていたメニューだ。それを中村氏がシェフを口説き落としてスズキヤで販売したところ、店頭に並べると即完売になる人気商品になった。

この商品が話題になり、地域のレストランなどからの売り込みも増えた。低温でじっくり揚げた「白いメンチカツ」(とんかつ ひこのや)もその1つ。毎日用意した10個程度が午前中だけで売り切れるという。

新しい商品やコラボ先を積極的に探す中村氏の姿を見て、バイヤーにも変化が表れた。「商品に興味があるかどうかは、すごく大切なこと。どこに行っても、わずかな時間を見つけて、いろいろな店を見て回る。自分がそういうことを続けていたら、バイヤーたちの認識も変わった。パート社員の中にも、良いと思った商品を提案してくる人が出るようになった」(中村氏)。

小坪漁業協同組合などと立ち上げた合同会社こつぼでは、スズキヤから出たキャベツの外葉をエサにした「キャベツウニ」の養殖や販売にも協力。スズキヤのバイヤーは、養殖現場の作業に毎週のように駆け付けて手伝っている。畑に行き、農家の作業を手伝うこともある。地域を盛り上げようと特別に意識しているわけではないというが、「バイヤーが生産者と一緒に体を動かしたり、考えたり、開発したりすることで、信頼関係ができて、面白い商品が生まれる」(中村氏)。

長く働くパート社員こそ、最強の戦力

中村氏に「ビジネスで一番大切にしているものは何か」と聞いてみた。すると、即座に「社員、特にパート社員。彼女たちが一緒にやってくれたからここまでできた。最近はスズキヤがメディアに注目されることも増えたが、彼女たちがいなかったら、ここまでできなかった」(中村氏)と返ってきた。

実は、中村氏は88年に社長になったとき、お酒を飲みながらパート社員とおしゃべりをする「トーク会」を開き、気軽に会話ができる関係を築いた。その中で「この地域で煮物に使うのはA社のしょうゆなのに、特売ではB社の商品しかない」といった地域の特性に関する意見や、店舗運営に関する生の声を聞いて回った。そして、それらを店長やバイヤーにフィードバックすることで、信頼関係を育んでいったのだ。

そのような関係がつくれたからこそ、商品開発にも社員が力を発揮する。特に毎年、お弁当・お惣菜大賞の応募時期が近づくと、商品開発の担当や店長だけでなく、パート社員までもが膨大な商品アイデアを提案する。その時期は中村氏が参加する試食会が毎週行われるが、1回当たり20アイテムが提案されることもあるという。

「だめなものはだめだと言うが、良いものが提案されれば、たとえ賞が取れなくても販売する。そうすれば提案する人も手応えを得られる」(中村氏)。前述した「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」も、西鎌倉店のパート社員・中戸川麻生子さんが考案したものだ。今では、パート社員間で競い合ってアイデアを出すなど、ますます商品開発が活発化しているという。「対抗意識は強い。でもそれで、気持ちが若くなるし、どんどん張り合ってもらうといいと思う」(中村氏)。とにかく従業員と対話し、戦力として信頼する。従業員を大事にする姿勢、パート社員の力を最大限に引き出すことが、人気商品の生まれる原動力になっている。

効率を"無視"して、お客様との会話を生み出す

もう1つの人気の理由は、接客にある。客商売で重要な点として、「やはり接客は外せない」(中村氏)。正社員だけでなく、パート社員にも接客のマナーやルールの教育を徹底。他の会社から移ってきたパート社員が、「こんなにきちんと社員教育を受けたことはなかった」というほどだ。マナーがきちんと身についていることで、利用客は店員と気持ち良く会話ができ、より買い物に行くのが楽しみになるというわけだ。単純にマニュアルを整えれば一定の水準の接客ができるかもしれない。でも、スズキヤではあえてそれはしない。人材育成を徹底することで、近道はせずに接客力を高めている。

非効率な"接客"はまだある。逗子や葉山では高齢化が進んでいる。そこで、買い物に来られない人向けに宅配サービスを提供している。顧客にはカタログを配布し、常に4人の専任オペレーターがいて、電話で受注する仕組みだ。

なぜ今でもカタログと電話での受注なのか――。極めて非効率であり、IT化をすれば省人化も可能になるかもしれない。だが、「あえて効率化しない」と中村氏は話す。コストはかさむが、会話を楽しみにしているお客様にも買い物を楽しんでもらいたいという思いから続けている。

それだけではない。通常の宅配と異なるのは、「注文の会話の中でお客様がちょっとせきをしていたら、オペレーターが『お風邪ですか』『大丈夫ですか』と気遣うことができるところ。そういうことがお客様にとってはやっぱりうれしい」(中村氏)のだという。また、常連客から3日電話がなかったら、安否確認の連絡を入れるというから驚く。まさに地域住民と一緒に生きる、その姿を体現している。さらに、以前、大雪が降ったときには「老人2人で雪の中で困っています」と聞いて、みんなで雪かきに行ったこともあるという。配送車6台で、多いときは1日に120件もの注文を受けるほど、頼りにされている。今後は、商品を手に取って自分の目で確認したいという利用者向けに、独自の移動販売車の導入も検討中だ。

一時期は都心などへの拡大を検討したこともあったスズキヤだが、中村氏が社長に就任してからは地域密着に回帰した。「ビジネスとして拡大することは大切だが、スズキヤはどこの地域にでも出せるタイプの店ではない」と中村氏。地域によって異なる客のニーズを見極め、的確に対応する必要があるからだ。「地域性についてはさまざまな機会を通じて、以前から社内で言い続けてきた。今では店長もバイヤーもすごく理解して、それぞれが現場で対応できるように成長した。地域のことを一番に考えていれば、自然とお客様が来てくれる」(中村氏)。そのための努力を惜しまないことが、スズキヤの人気の秘密だろう。

(ライター 根本佳子、写真 竹井俊晴、小西範和、写真提供 スズキヤ)

[日経クロストレンド 2022年1月17日の記事を再構成]

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