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狙われる国鳥フィリピンワシ コロナ禍で森に迫る危機

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

2021年3月下旬、フィリピン南部ミンダナオ島にある先祖代々の森で、先住民族マノボ・シムワノンのグループがラタン(籐)を収穫していると、どこからか騒ぎ声が聞こえてきた。

慌てて駆け付けると、同じマノボ族の猟師たちが、わなにかかって暴れる動物を取り囲んでいた。野生化したブタやニワトリを捕まえるためのわなだったが、意外な動物が捕らえられていた。フワフワの白い腹部と茶色いボサボサの冠羽を持つ大きな鳥だ。

猟師の中には、その鳥を今晩の夕食にしたいと言う者もいた。しかし、村の役人としてラタンの収穫を担当するジェリー・コティック氏は、この珍しい生きものは生かすべきだと考えた。そして、部族の仲間であるリチャード・マフモック氏とともに、猟師たちからこの鳥を買い取り、野生生物当局に引き渡す計画を立てた。

それから3日間、コティック氏が猟師らと鳥のそばに付き添っている間、マフモック氏をはじめとする先住民のリーダーが村の住人から5000フィリピンペソ(約1万1000円)を集めた。

マフモック氏は森に戻り、鳥を買い取った。そして、落ち着きのない鳥を米袋に入れると、バイクで2時間かけて近郊の町ビスリグまで行った。パートナーのレイナリン・ゲイオド氏がすでに、現地の環境自然資源局に救助の連絡を入れていた。

マフモック氏は鳥を引き渡したときに初めて、自分たちが何を保護したかを知った。フィリピンでは「鳥の王」と言われる国鳥のフィリピンワシだ。現存するつがいは400組以下で、世界で最も希少な猛禽(もうきん)類の一つでもある。

人からの迫害、原生林の伐採、平地林の農地や居住地への転換が原因で、過去50年間、フィリピンワシは着実にその数を減らしてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症がさらに圧力を加えている。パンデミック(世界的大流行)以前、当局に保護されるフィリピンワシは年間1~2羽程度だった。ところが、ダバオを拠点にワシの救助、リハビリ、研究を行うフィリピンワシ基金は20年4月から翌年3月にかけて、過去最高の10羽を保護した。

「『自然が回復している』と言われていますが、フィリピンワシの場合は違うようです」と、研究、保護ディレクターのジェイソン・イバネス氏は語る。「人が森に入る頻度が高くなっているのだと思います」

狙われる国鳥

フィリピンは世界的に見ても長いロックダウン(都市封鎖)を経験してきた。経済が低迷するなか、食料や違法取引のために保護動物を狩猟するケースが増えている。

エコツーリズムが停止すると、レンジャーは職を失い、保護区は密猟者などの侵入から無防備な状態になった。

頂点捕食者であるフィリピンワシは、森の健全性のバロメーターでもある。1組当たり70~130平方キロの森を必要とするつがいの存在は、健全な生態系の証しだ。体重約4.5~8キロ、両翼を広げると平均2メートルほどで、世界最大級の鳥だ。7641の島からなるフィリピンでも、4つの島でしか確認されておらず、大部分がミンダナオ島に生息する。

保護動物を殺すと懲役刑と高額の罰金が科される野生生物保護法や、国民の意識を高めるキャンペーンが功を奏し、フィリピンワシが戦利品として狩猟されることはなくなった。「しかし、山地には貧困の問題があり、生活向上の機会が不足しています。そのため、これらのワシを食料や珍しいものとして、つまり、金もうけのチャンスと見ている人は今もいます」とイバネス氏は指摘する。

地元住民が森の番人に

環境自然資源局は救助されたワシをすぐにフィリピンワシ基金に引き渡した。このワシはわなにかかった村にちなみ、ラジャ・カブングスアンと名付けられ、推定5歳とされた。ラジャ・カブングスアンは8カ月にわたり、アポ山の麓にあるフィリピン・イーグル・センターで暮らした。

獣医師の評価によれば、ラジャ・カブングスアンは「頭が良く、注意深く、反応が早い」個体で、センター滞在中に「体重がかなり」増えた。

21年11月、ラジャ・カブングスアンは全地球測位システム(GPS)発信機を装着され、南スリガオ州の森に戻された。

リハビリを終えたワシを放つたび、フィリピンワシ基金は地元の関係者と協力し、ワシの生息地とその周辺で野生生物に関する啓発活動を行う。

また、先住民コミュニティーのメンバーに森の番人として活動してもらう訓練も行っている。

ラジャ・カブングスアンを救助した経験をきっかけに、マフモック氏とゲイオド氏は訓練を受け、レンジャーになった。2人は先祖代々の土地を飛ぶラジャ・カブングスアンを見守りたいと話している。そして、いつかこのワシが家族を持ち、子育てする姿を見たいと願っている。

「私たちにとって、彼はシムワノンの一員でもあります」とゲイオド氏は語る。「彼が私たちの土地に戻ってきたことは若者に大きな影響を与えており、自分たちの森を守る必要があるのだと若い世代に教えてくれました」

(文 JHESSET O. ENANO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年1月21日付]

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