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不安は「外在化」するべし。書き出す、話す、キャラに乗せる

――「緊張しやすく、緊張に弱い脳」があることがよくわかりました。そこを受け入れつつ、できる対処法があるのなら知りたいです。

篠原さん 人前で話すことを心理学では「パブリック・スピーチ」といい、古くから典型的なストレス要因として研究が行われてきました。

簡単に手をつけられるのが「不安を外在化する」という方法です。それをご紹介しましょう。

対処法1 不安を書き出す

不安を書き出すのはとても効果的です。もし本番のときに緊張したら、とか、失敗したら、とぐるぐる考えても問題解決なんてできません。その思いを外に取り出す=外在化すると、脳のメモ帳が空いて、使いやすくなります。「緊張するなぁ。うまくプレゼンできなかったら他社に仕事をとられてしまうから責任重大だ」「おなかが痛くなるかもしれない」…なんでも気にせず書き出しましょう。身近な人に話すことも、立派な「外在化」です。

――書くことはできても、弱みをそのまま人に話すなんてプライドがかえって傷つく気がする、という人がいるかもしれません。

篠原さん その場合はキャラに乗せるのがお勧めです。自分の人間性と切り離すことで、外在化がスムーズにいきます。

対処法2 キャラに乗せる

たとえば、漫画『鬼滅の刃』の超ヘタレキャラの我妻善逸(あがつまぜんいつ)くんになりきって「死ぬ死ぬ死ぬ、プレゼン怖い!」と大げさにビビってみる。のび太になって「ドラえもーん!」と泣きついてもいいでしょう。

――ああ、なんだか楽しそうですね。緊張や不安を押し込めようとしているときより、心が解放される感じがしてきます。

篠原さん そうでしょう? 外在化に関しては、シカゴ大学で実験が行われています。「これから試験をします」とストレスをかけて、試験前の10分間に自分が抱えている試験に関する不安を書き出す、という作業をさせると、不安を書き出さなかったグループに比べて、不安を書き出したグループはテストの成績が上がった、というものです[注1]

――なるほど、試験もワーキングメモリが必要とされますが、プレゼンでも十分応用できそうですね。不安はとにかく外に出すことで脳のワーキングメモリの負担を減らせるのですね。

[注1]Science. 2011 Jan 14;331(6014):211-3.

◇   ◇   ◇

次回も、引き続き「対処法」について聞いていく。

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。

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