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どうすれば心不全を予防できる?

「心不全を予防するには、まず食事に注意しましょう。循環器病の予防によいものを食べるようにして、リスクが高くなるものはできるだけ避けましょう」と原田さんは言う。

循環器病を予防するために食べた方がよいものと、減らした方がよいものは、次の通りだ。

「食事内容に配慮しながら、摂取カロリーと消費カロリーの帳尻を合わせて体重管理を心がけてください。塩分摂取量は1日6g以下が目標です。現在、日本人はだいたい10gくらいはとっているので、6gはけっこう難しいのですが」と原田さんは説明する。

お酒を飲み過ぎないことも、循環器病の予防には大切だ。飲酒の適量は、男性では純アルコールに換算して1日20g、女性はその半量10gだ。

循環器病の予防には、適度な運動も効果がある。

ウオーキングなど中くらいの強度の運動なら1週間に150分、ジョギングなど高強度の運動なら、75分以上体を動かそう。

循環器病予防に最適な運動

中くらいの強度の運動(150分/週)…速歩のウオーキング、自転車こぎ、動きのあるヨガ、水泳など

高強度の運動(75分/週)…ジョギング/ランニング、速いスピードの自転車こぎ、テニスのシングルス、競泳など

ジョギングなら、1日15分を週休2日で行えば、循環器病の予防には十分だ。

「運動すればするほどいいのかというと、残念ながら、これ以上運動しても循環器病のリスクは変わりません。でも、運動は循環器病予防のためだけにやるものではないので、やりたい人はもっとやっていただいてかまいません」と原田さん。「ただし、もし隠れた心臓病などがあったとき、運動の負荷が強すぎると死亡リスクが上がってしまうかもしれません。自分がどの程度運動してもよいかは、主治医と相談してください」

循環器病のリスクを下げるには、睡眠も重要だ。睡眠不足は、肥満から生活習慣病の原因になるなどして、循環器病の原因になる。

もし血圧が高ければ、下げる努力をしよう。血圧を上げないことは、循環器病の予防にはとても重要だ。

高血圧治療ガイドラインでは2019年の改訂から、正常高値血圧(収縮期120~129mmHgかつ拡張期80mmHg未満)と高値血圧(収縮期130~139mmHgかつ/または拡張期80~89mmHg)という領域が加わった。「いままでは収縮期血圧が140mmHg以上になると治療を開始していましたが、130mmHg台の人は、ほとんどが140mmHg台へと移行していきます。そのため、130mmHg台の人を重点的に治療して、それ以上上がらないようにしようということです」と原田さんは説明する。

ちなみに脳梗塞の原因となる心房細動の原因は、加齢、高血圧、飲酒、喫煙、睡眠不足であることが分かっている。循環器病の一般的な予防法は、心房細動の予防にもなる。

これからの循環器病対策は変わる

いま、循環器病対策のために、国の制度が大きく変わろうとしている。

2018年に循環器病対策基本法が成立し、翌年施行された。現在は、国の循環器病対策推進基本計画に基づいて、都道府県循環器病対策推進計画の作成が進められているところだ。脳卒中を含む循環器病について、国が率先して予防や治療の対策を進めていこうというのだ。

「2007年にがん対策基本法が施行されてから、がんの診療が大きく変わりました。法の施行により、循環器病の診療がこれから大きく変わっていくはずです」と原田さんは言う。

循環器病対策基本法の成立に合わせて、2021年5月に日本循環器協会が設立された。循環器病患者、医療者、企業の三者を連携し、医師の関与が難しい健康な人への予防・啓発などの活動が期待される。

「脳卒中や心不全はがんと同じくらい危険ですが、がんとは違って予防ができる病気です。ぜひこのチャンスを逃さずに、予防を心がけてください」と原田さんは強調する。

将来の健康長寿を満喫するためには、まだ高血圧などの症状が出ていない健康な人こそ、対策が重要になる。今日から、心不全の予防を始めよう。

(文 梅方久仁子、図版 増田真一)

原田睦生さん
東京大学大学院医学系研究科循環器内科講座 先端臨床医学開発講座 特任准教授。循環器内科専門医。日本循環器協会 評議員。1998年、山形大学医学部卒業。山形大学医学部附属病院第一内科、石巻赤十字病院循環器内科、千葉大学医学部循環病態医科学などを経て、心臓幹細胞の研究のため2009年に英国インペリアルカレッジロンドンに留学。2018年より現職。好きな飲料はクラフトビール(IPA)。

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