
前回(「心臓の機能落ちる心不全 平均寿命延びて増えた理由」)に引き続き、2021年12月16日に実施された日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーでの、東京大学大学院医学系研究科循環器内科特任准教授原田睦生さんの心不全についての講演の内容を紹介しよう。今回は、心不全にならないためには、どうしたらよいのかについて具体的にまとめた。
負荷の蓄積が、心不全を招く
循環器病の中で、心臓がくたびれてしまって機能不全になった状態を心不全という。
現在は医療が進歩し、腎機能を補う人工透析のように臓器の機能を補えるケースもあるものの、心臓と脳は取り替えがきかない。人工心臓は一応あるが、高齢者につけることは難しい。
健康に寿命をまっとうするには、心臓と脳が機能不全に陥らないように予防することが何よりも大切だ。
心不全の原因としては、心筋梗塞、狭心症、心筋症、弁膜症、高血圧、先天性心疾患、不整脈などがある。つまり心不全は、それ単独で起こる病気ではない。様々な循環器病にかかり、それらが進行してしまった結果の行き着く先が心不全なのだ。
心臓に継続した負荷がかかり続けることで、心不全は起こる。例えば、高血圧を放置していると、10年以上かけて心不全になっていく。ということは、高血圧を治療して心臓に負荷がかからないようにすれば、心不全を予防できる。
心不全になる前の予防が大切
2017年に「急性・慢性心不全診療ガイドライン」が改訂された。
改訂ガイドラインで注目したいのは、心不全のステージ分類だ。ステージAからステージDまでの4段階の分類のうち、「心不全の発症」はステージBとステージCの間にある。つまり、高血圧など前段階の症状はあっても心不全がまだ発症していない段階を、心不全ステージAとして、心不全の範囲に含めたのだ。
「心不全では予防がいかに大切かを多くの人に伝えるために、このような分類ができました。それぞれのステージに入らないように努力すれば、心不全を予防できます。心不全への道は一方通行で後戻りはできませんが、立ち止まることはできます。特に重要なのは、まだ高血圧、糖尿病、動脈硬化などの疾患が出ていなくて、ステージAにも達していない健康な状態での予防です。服薬も検査も手術も一切必要ないこの時期を逃してしまうのは、とてももったいないことです」と原田さんは強調する。
では、どうすれば心不全を予防できるのだろうか。