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SNSに中毒性? 脳の「スマホ依存」真偽のほどは…

脳科学者に聞く「脳」の活性化術

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

SNSには脳の報酬中枢を刺激し依存させる仕組みがある、スマホは集中力を低下させる――など、デジタル環境が私たちに与える悪影響について話題になることがある。スマホを使いすぎることは「依存」になるのか、集中力を妨げる要因になっているのだろうか。スマホに頼る日々の中、疑問に思うことを公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんに聞いてみた。

「依存」とは日常生活に重大な破綻が起こること

――30年前にはこの世になかったスマホが、今では目が覚めてから夜寝る前まで、生活に欠かせないものとなっています。スマホの便利さがある一方で、過度な使用は睡眠障害やうつ、記憶力や集中力の低下、学力の低下や依存に結びつく、と指摘したスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の『スマホ脳』は2021年のベストセラーになりました。

篠原先生はギャンブルやゲーム障害と脳の関係についても研究をされています。私たちが日々使っているスマホは、依存になりやすいのか、また、脳に悪影響なのか、ご意見を伺いたいです。

篠原さん まず、「依存」という言葉の定義についてお話ししましょう。

世界保健機関(WHO)は、国際的な診断分類「ICD(国際疾病分類)」において最新の第11版「ICD-11」で、ギャンブルや薬物といった物質使用と同様の、行動における依存症として「ゲーム障害」も含めて定義しています。

「ゲーム障害」の定義

●ゲームのコントロールができない。
●他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを選ぶほど、ゲームを優先する。
●問題が起きているがゲームを続ける、または、より多くゲームをする。
●その行動パターンによって個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において著しい障害をもたらすほど深刻である。

上記の4項目が12カ月以上続く場合に「ゲーム障害」、いわゆる「ゲーム依存」とされる、というものです。

――なるほど、「スマホ依存」という言葉を聞くと、「仕事の集中が邪魔されるほどスマホに気を取られてしまう」ぐらいのニュアンスで受け取っていたのですが、ゲーム依存の場合の定義を見ると、まさに「病的」で日常に支障が出ているものが依存であり、普段使いのスマホ使用とはかけ離れている状態なのですね。

篠原さん ストレス解消のためについ手に取る、とか、好き、という程度のものを「依存」とイコールで結び、「病的である」とあおりたがる風潮があります。しかし、精神科医が「依存してしまっているかもしれない」と訴える患者さんを診察するときには「どのような苦痛があるか」を聞くでしょう。臨床的にいう「依存」とは、上記の項目を見ていただければわかるように、病的であり苦痛をともなうものです。たとえばSNSなどを始めて面白くて一定期間はまっても、何カ月も続かず「もういいかな」と飽きるものです。現実にはそういった人のほうが圧倒的に多いでしょう。もちろん日常に問題が出ていたらそれは問題なわけですが、大抵の場合はそれは依存ではありません。

SNSは脳の報酬システムを刺激するから依存してしまう?

――スマホを頻繁に手に取ることや、通知が来ていないか確かめたくなること、「いいね」がつくことで私たちはある種の承認欲求(認められたい、という欲求)を満たすことができる。この脳の報酬システムを刺激するゆえに、SNSにはアルコールや薬物と同じような中毒性がある、とみる意見もあります。

篠原さん アルコールや薬物などの「物質使用障害」が出ている人には、それを使用したときに快感ホルモンのドーパミンを放出する報酬系が働いている、ここまでは事実です。

アルコールにおいてもギャンブルにおいてもゲームにおいても、共通して報酬系が動いている。だからやっぱり危ないね、スマホも同じだね、という話になりがちですね。

一方、脳科学の歴史をひもとくと、報酬系は「やる気」の研究として長年研究されてきました。

そして、1998年に英国ケンブリッジ大学のシュルツらは、サルの研究において、「ドーパミンニューロンは報酬そのものではなく、報酬を予期させるようなときや予想外、あるいは期待以上の報酬が得られたときに反応している」ことを明らかにしました。仕事や学習において、やる気が起こるのはそれによるご褒美が期待できるときで、そのときにはドーパミンがぐんぐん分泌されています。

つまり、スマホを使うことを取り沙汰する以前に、人間にとってドーパミンはやる気・モチベーションの基本システムそのものであり、ケーキを食べようとしても活性化します。すなわち、生きるうえで役立つと思えるときや、楽しいときに脳は活性化するようにできている。なのに、「スマホはドーパミン系を刺激するから危ない」、というのは過大評価と言えるでしょう。

――アルコールや薬物への「物質依存」と、ゲームやギャンブルなどの「行動依存」とは体への影響が異なるのですか。

篠原さん そこも重要なポイントです。薬物使用とギャンブリング障害における脳の状態を見た研究があります。脳の神経細胞が集まる「灰白質」や神経の受容体の変化は、薬物とギャンブルでは明らかに異なり、薬物使用では明らかだったがギャンブルではわずかだったと報告されています[注1]。両者のメカニズムの違いについてはまだ明らかになっていないことばかりです。よく「アルコールも薬物もギャンブルも、物質や行動によって快楽が得られ、繰り返されることによって脳がその刺激に慣れてしまう。だから、より強い刺激を求めるようになる。その結果、物質使用や行動がコントロールできなくなってしまう」と一緒くたにされるのですが、医学的には間違いです。おそらくアルコールや薬物のほうが体に与える影響は大きいでしょう。

――スマホはアルコールのように依存性がある、それは快楽を刺激するからだ、と言われるとすんなり納得してしまっていました。

篠原さん もちろん、のべつ幕なしにスマホを手に取りたくなるのは、依存的であるリスクの一つとは言えるでしょう。しかし、そこまでとらわれてしまう要因も示さないと、ただ怖がらせるだけでは議論にはなりません。

――スマホにはまってしまう要因はあるのですか?

篠原さん 物質依存や行動依存の背景になる素因は研究されています。不安傾向が強い人、抑うつ傾向が強い人、衝動性が強い人。また、発達障害的傾向のある人も何らかの行動にはまりやすい傾向があるとされています。

[注1]Mol Psychiatry. 2019 May;24(5):674-693.

「報酬系」は移動する生き物に共通して備わる仕組み

――ついスマホを手に取り、誰かからメッセージが来ていないかとわくわくすることや、ウェブ記事のリンクをたどって読みふけってしまう、ということに罪悪感を抱いていましたが、「報酬系は日常で当たり前に活性化している。ケーキを食べることと同じ」と言われると、ほっとしました。

篠原さん 報酬系はやる気を支える仕組みそのものです。特に、やる気に関係する、やる気の中核といわれる脳の「線条体」は、昆虫でも、動物でも、移動する生き物なら全てが持っている仕組みです。「あっちに移動したほうが生き残る確率が高くなるぞ」と活動させるモチベーションとして線条体が発火する。私たちも、うれしいことがあるかも、褒められるかも、と思うとモチベーションが高まりますよね。子どもはお母さんに褒められることを期待して、「本当はうろうろしたいけどじっと座ってごはんを食べよう」と思います。教育の根底にも報酬系があります。なのに、報酬系が活性化させるメカニズムだけ取り出して「病的だ」というのは話がおかしいと私は思っています。

――ITの経営者が自分の子どもにはタブレットを使用する時間を制限させている、などという話を聞くと、「ああ、やっぱり自分たちはだまされて便利なツールを与えられていたんだ」などと解釈しそうになります。

篠原さん それが本当だとしても、たった一人の事例を取り出しただけの「ケーススタディ」ですよ。「私は毎日○○を飲んで1カ月で3キロやせました」と同じレベル、エビデンスの信頼度で言うととても低い。ITのCEOが言っていることだからというバイアス(思い込み)が影響していますね。

でも、そういった言説をもとに信じてしまうのは、前回(「詐欺になぜだまされる 脳の構造と対策、専門家が解説」)でもお話ししたように、人間の脳のワーキングメモリ、つまり脳のメモ帳が同時に3~4つのことしか処理できないからです。「誰それが」「こういう意図で」「こういうことをした」。このぐらいの情報が最も脳の負担なく、得心しやすいのです。

ただ、ゲームにせよスマホにせよ、こうした「報酬系」「依存」という言葉を結びつける情報は注目度も高いでしょうから、今後も出てくるはずです。しかし、そのときに「日常生活に重大な破綻をきたすレベルで、しかも長期間続いているのか」という基本に立ち返って冷静に受け止められるといいですね。

――今回の先生のお話を踏まえ、最後にスマホとのつきあい方のコツを教えてください。

篠原さん 結論から言うと、コツなんかありません! 安心してください。繰り返しますが、日常生活に問題が生じていれば注意が必要ですが、たいがい大丈夫です。いっときはまっても、1カ月もちませんから。

報酬系のお話をしましたが、子どもだって親に褒められるからといってずっと依存的に特定の行動をし続ける、なんてことはありません。飽きるものです。

『鬼滅の刃』に過度にはまっても、はまっている最中は「このはまり方は我ながら危険かもしれない」なんて思っても1年以上はそのエネルギーは続かない。人は飽きる生き物です。むしろスマホの機能をかしこく使用して日常にプラスに役立てているのなら、何の問題もありません。

スマホで学習し、スマホで仕事のやりとりもする時代。わからないことを検索したり、ひらめいたことを記録したりするメモ帳代わりに使うなど、便利に使いこなしていきましょう。

◇   ◇   ◇

次回は、「苦手なこと」を脳からのアプローチで乗り越えていく方法について聞く。

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん
公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。

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