中国とその周辺国で見られるマガリアリ属の一種(Gnamptogenys bicolor)。頭部にある玉虫色の小さなへこみは擬態の役に立っているのかもしれない(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
アリを鑑賞するために遠くまで出かけていく必要はないと、スパイサー・ライス氏は言う。アリは世界中に1万5000種以上もいるため、自宅の裏庭や歩道の下で魅力的な種に出会える可能性も高い。
例えば米国東海岸にいる「奴隷使役アリ」の一種は、他の種のさなぎを盗んで育てる。こうすることで、エネルギーを費やして幼虫を育てることなく、ただで労働力を手に入れるのだとスパイサー・ライス氏は説明する。「舗装アリ」と呼ばれる一部のシワアリ属(Tetramorium)は、世界各地の都市部のコンクリートの下などで暮らしており、春には激しい「戦争」を繰り広げる。
「人はたいがい、自分にとって迷惑な種のことしか気にかけませんが」とスパイサー・ライス氏は言う。「世界には大変多くの種のアリがいて、どれも驚くべき習性をもっているのです」
このハキリアリ属の一種(Atta cephalotes)は、地下の部屋でキノコを栽培する(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
米アリゾナ州と近隣の州でよく見られるシュウカクアリ属の一種(Pogonomyrmex maricopa)は、ミツバチよりも強力な針を持ち、刺されると激痛が走る(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
金色の毛で覆われた、東南アジア原産のトゲアリ属の一種(Polyrhachis beccarii)の働きアリ(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
ラテンアメリカ原産のサシハリアリ(Paraponera clavata)は、あらゆる昆虫の中で、刺されると最も痛い種の一つ(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
このアリが属するオオアリ属(Camponotus)は非常に大きく複雑なグループで、世界中で見られ、1000種以上が含まれる(PHOTOGRAPH BY EDUARD FLORIN NIGA)
(文 DOUGLAS MAIN、写真 EDUARD FLORIN NIGA、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年12月8日付]