2021/10/13
氷に覆われたグレイシャーベイ国立公園には氷穴もある(PHOTOGRAPH BY KEVIN HANEY, NATIONAL PARK SERVICE)

土地を失った先住民の歴史

グレイシャー湾周辺の自然を保護しようという取り組みは、先住民クリンキット(トリンギット)の人々に影響を与えた。

彼らの生活は単なる経済活動を超越していた。食べるためだけに殺し、肉を無駄にしたり、動物を軽視したりすることは決してなかった。魚は敬意を持って扱われ、適切に生まれ変わることができるよう、内臓は川に流すか、燃やされていた。ベリーにも魂(イェイク)があり、丁寧に扱わなければならなかった。

1930年代後半までには、現金収入を目的とした漁業、捕獲、アザラシ狩り、資源採掘に移行したが、サケが遡上する川の下流に薫製用の小屋をつくったり、ベリーやカモメの卵を頻繁に採集したりするなど、人々はグレイシャー湾との深いつながりを維持していた。

ところが1964年、米国が原生自然法が制定されると、各地で自然保護の管理が強化される一方で、はるか以前からその場所で狩猟採集を行っていた文化をしばしば見落とすこととなった。クリンキットもそうだった。60年代に、彼らの活動が禁止されると、当地のフーナ・クリンキット族と米国立公園局の関係も悪化した。

しかし、時代は変わり続けている。2014年、当時のオバマ大統領が、クリンキットが公園内でカモメの卵の持続的な採集を行うための法律に署名した。カモメの卵の採集は伝統的に、旅の季節の到来と飢えの解消を告げるものと位置づけられてきた。グレイシャー湾に点在する島々は、クリンキットの言葉でクワット・アーニ(「カモメの卵の地」)と呼ばれ、聖なる風景の一部となっている。

国立公園局の創設100周年にあたる2016年8月25日、グレイシャー湾内のバートレットコーブの南岸に約230平方メートルの「フーナ族の家」が完成した。国立公園局が建設したもので、クリンキットの職人技が取り入れられている。クリンキットが彫った高さ約6メートルのトーテムポールが立つこの家には、フーナ・クリンキットの文化と歴史を学ぶため、世界中の人々が訪れている。

グレイシャーベイ国立公園のバートレットコーブにある「フーナ族の家」のそばに咲くルピナス(PHOTOGRAPH BY MORGAN TRIMBLE, ALAMY)
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ザトウクジラの復活
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