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「マンション入居者限定アプリ」 近所付き合いに革新

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サービス開始から1年少しにもかかわらず、月間アクティブユーザー率(MAU率)は驚異の81%。しかも、使っているのは東京都内に建つ、1棟のマンションの住人だけ。そんな謎のスマホアプリが「GOKINJO(ゴキンジョ)」だ。

旭化成ホームズ(東京・千代田)と旭化成不動産レジデンス(東京・千代田)、クレヨン(東京・練馬)の3社が共同開発した「GOKINJO」は、同じマンションの入居者のみが使用できるコミュニケーションアプリ。2020年9月から東京・板橋にある全227戸の分譲マンション「アトラス加賀」に導入し、実証実験を開始。1年後には約8割の住民が利用するなど好評を得ている。

GOKINJOの主要な機能は「情報交換」「お譲り」「お助け」の3つ。最もよく使われているのが「情報交換」だ。いわゆるネット上にあるSNSや掲示板のような機能で、ユーザーが投稿した話題に返信することでスレッドがつづられていく。例えば「アスレチックのある公園を教えてください」という投稿に、他のユーザーが近所の公園を薦めるなど、数多くの身近な話題が投稿されている。

シンプルなコミュニケーション機能だが、1棟のマンションという限られたコミュニティーならではの投稿も多く見られたという。例えば、「不動産取得税の『家屋』に関する通知書は届いたけれど、『土地』に関する通知書は届かなかったので調べました。情報を共有します」という投稿。GOKINJOプロジェクトのマーケティング責任者である、旭化成ホームズ経営企画部の根本由美氏は、「同時期に分譲マンションに住み始めると同じような課題が出てくる。不動産取得税の話は、通常であれば個々人で不動産業者に連絡して解決していた問題だが、1人が調べた情報をシェアして、住民間で解決している」と話す。

「お譲り」は、家庭で不要になったものを他のユーザーに無料で譲る機能だ。ハンガーや小物、家具など、さまざまなアイテムが1年間で69件出品され、そのうちの85%は譲り先が決まった。特に多かったのが玩具や絵本などの育児用品。ベビーベッドや子供用自転車など大きいものでも梱包せず、同じマンション内に住む人に手渡しできるというのもGOKINJOならではだ。

手を貸してほしい、物を貸してほしいという困りごとを解決するために用意されたのが「お助け」機能。「ちょっとした作業に使うための電動ドライバーや、お食い初めの写真を撮るために子供用の椅子をリクエストするなど、一時的に使う物の貸し借りが多い印象」(根本氏)。ユニークなのが共同購入を提案する投稿。沖縄そばやキムチなど、投稿者が共同購入を募るといった運営側が想定していなかった新しい使い方も生まれた。

GOKINJOアプリを開発したきっかけの1つが根本氏の体験だ。「育休中に移住したカナダにはご近所付き合いができるローカルなSNSがあり、ベビーベッドや子供服などを譲ってもらったり安く買ったりしていた。そうしたやりとりを通して異国の土地でも知り合いが増え、活動範囲が広がって心が少しずつ豊かになったという経験があった。そこから、ご近所付き合いを難しいと感じている人の背中をちょっと押せるようなサービスがつくれないかという思いがあった」と根本氏は話す。

また、GOKINJOアプリには"社会に埋もれてしまっている情報やスキル"などの価値を顕在化したいという狙いもあった。GOKINJOプロジェクトのリーダーを務める、旭化成ホームズ 経営企画部CONNECTプラットフォームプロジェクト長の中村磨樹央氏は、「例えば、保育施設や手続きなど、子供を保育園に入れる"保活"の経験で得た情報はとても貴重なもの。ただ、保活が終わってしまうと、その情報を他の人と共有することはほとんどない。それを共有する場がどこかにあれば、次に保活をする人々に必要な情報になる。自分が持っている情報や能力は、誰かが必要としているものかもしれないが、自分ではなかなか認識できない。そうしたものに日が当たるようにして社会のエコシステムを動かしていきたいと、GOKINJO開発責任者であるクレヨンCEO(最高経営責任者)の森屋大輔氏と話していた」と語る。

こうしてGOKINJOアプリの企画が始動したが、スタートは順風満帆というわけではなかった。サービスの概要をまとめ、旭化成ホームズ社内で行われていた新規事業創出コンテスト「Challenge & Growthコンテスト」に応募し、555件のエントリーの中からファイナリストとして残るも、あと一歩のところで入賞を逃す。1位から3位までの事業化が検討されるというコンテストだったが4位という結果となった。

ただ、実は社長が入れた一票がGOKINJOアプリの企画だった。「企画を練り直して何度も当たってこい」という社長の言葉に奮起し、役員会議へのチャレンジを続け、事業化検討にこぎ着けた。

自浄作用で"炎上"を回避

20年9月のサービススタートから1年以上が経過したが、当初は想定していなかったさまざまな発見があった。その1つが匿名の扱いだ。

GOKINJOでは、ユーザー登録があった場合、入力されたマンションの部屋番号と実名を運営側が入居者リストで照合し、確認できた人だけをアクティベートする形で厳密に管理している。登録後は部屋番号や実名を明かさずに、ニックネームを使って他のユーザーと交流できる仕組みだ。

アプリをより活用してもらうため、サービススタート後もさまざまな機能を検討していたが、匿名での投稿機能も途中から実装した。「ニックネームでは個人を特定できないが、近所のデリケートな話題など、ニックネームと匿名を使い分けるニーズもあると考えた」(中村氏)。するとマンションの気になる点や近所の病院の評判などの投稿が増え、匿名のニーズがそれなりにあるということが分かったという。現状も多くのユーザーがニックネームと匿名の使い分けをしている。

ただ、同時に出てきたのが、マンション内の不満を匿名で表明する"一言物申す"といった内容の投稿だった。

そうした匿名投稿の1つが「共用パーティールーム使用時のマナーが悪い」というもの。「外から入った、泥だらけの子供が遊んでいた」という投稿には、20件ぐらいの返信が付いた。最初は賛否両論の投稿が続いていたが、そのうちに『同じマンションに住んでいるご縁もあるし、みんなで子供を育てる環境をつくりたいですね』という投稿が出ると、それを応援するコメントが増加。最終的には投稿者も含めてよい雰囲気になり収まったという。

「分譲マンションの購入者同士というのは、数千万の買い物をした運命共同体でもある。今後は、修繕などもしながら資産価値をキープしていかなければいけない。そういう方々なので、荒れた掲示板にしたくないし、せっかくできた自分たちの場所はやっぱり守りたいという思いが強い。いわゆる"自浄作用"のようなものが働いたというのは我々にとっても発見だった」(根本氏)

また、GOKINJOの使用が長くなるにつれ、投稿する内容が変わってきているユーザーもいるという。「あるユーザーは、登録から約200日間で新規投稿を32回、誰かの投稿に127回の返信をしているが、投稿内容に"マズローの欲求5段階説"に似た傾向が見られる」と中村氏は話す。マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求をピラミッドのように5段階で説明したもの。下位の欲求が満たされると、より高い階層の欲求を欲するという法則で、下位階層から順に「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「尊厳欲求(承認欲求)」「自己実現欲求」の5段階で構成されるとする。

初期に多かった投稿は、生理的な欲求を満たしたり、不満を解消したりしたいといった内容。例えば、「設備の不具合や不満があるけれど、皆さんのお宅ではどうですか?」というようなものだ。そこから次の段階では「ワゴンラックをお譲りします」といった投稿で、誰かの役に立ちたい、社会的欲求を満たしたいと思えるような投稿が増えていった。

「さらに進むと『今晩は三日月がきれいに見えます!』と窓からの景色の写真を投稿するようになった。このきれいな月を誰かにも見てもらいたいし、自分が目指す自分でいたいといった承認欲求の部分も見えてくる。ユーザーの多くがどのようにしてGOKINJOを気持ちのよい場所にするかと"自分ごと"として考えるようになるというのは、サービス開始当初は全く想像していなかった」と中村氏は話す。

コミュニティーをアップデートする

GOKINJOの機能は今後も増えていく予定だ。「みんなでつくるご近所マップやグループ機能など、リアルなつながりを促すような機能で、同じ属性の人をつなげられるようなことができたらと考えている」(根本氏)。さらには理事会の支援機能や防災関連の機能も検討しているという。

また、初回登録時からすべての機能を使えるようにするのではなく、アプリの使用歴に応じて機能を開放するユニークな仕組みも考えている。「テレビのリモコンのように数多くのボタンが付いたものを渡されても初心者は戸惑ってしまう。一番重視しているのは、どうやってユーザーにGOKINJOを"自走"させるかということ。いつまでも運営側である我々が手をかけてサポートしていくことはサステナブルではない。新しいユーザーをシームレスにコミュニティーに引き入れるための仕掛けの1つとして段階的機能開放(特許出願中)を取り入れたい」と中村氏は語る。

サービスの成功が見えたことで、旭化成ホームズとしてGOKINJOの外販を含めた事業も進めていく。「コミュニティーという概念は人によってイメージや感じ方が異なり、価値を伝えるには曖昧なワードになっている。近い将来、GOKINJOを通じてコミュニティーを再定義し、特定の価値があるワードとしてアップデートしたい。コミュニティーがきちんと確立され、管理できている物件やエリアはおのずと人気が高くなる。そうすると不動産資産価値も上がり、それらを扱う事業者のブランド価値も当然高くなる」(中村氏)。実際にいくつかの企業と商談も始まり、採用も獲得しているという。

(日経クロストレンド 佐々木淳之、写真提供 旭化成ホームズ)

[日経クロストレンド 2022年3月17日の記事を再構成]

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