できる人のジムのトレーニング法 共通するポイントは
カラダについてのお悩み、ありませんか? 体調がいまいちよくない、運動で病気を予防したい、スポーツのパフォーマンスを上げたい…。そんなお悩みを、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが解決します! 今回は、体調管理が苦手なビジネスパーソンから寄せられた「経営者はパーソナルジムでどんな運動をしているの?」という疑問に答えます。
デキる経営者はどんな運動をしている?
ベンチャー企業に勤める、30代男性です。
仕事が忙しく、生活がつい不規則になってしまいます。体調管理も苦手で、仕事が終わらないので長時間働き、その後に体調を崩す、ということを繰り返してしまっています。
このままではダメだと思いながらも、最近では在宅勤務が増えたこともあり、深夜までお酒を飲んだりして、翌日の午前中は使いものにならない、という日もあります。
上司に相談してみたところ、パーソナルジムでのトレーニングを勧められました。確かに、成功した経営者やデキるビジネスパーソンは、そういったところで運動して体を鍛えたり、人によってはトライアスロンの大会に出たりしていると聞きます。
ただ、自分はこれまで運動をした経験がほとんどなく、体を動かすことで体調を整えるということがイメージできません。実際に経営者などはどんなトレーニングをして、コンディションを整えているのでしょうか?
どんなに忙しくても運動する時間を確保
デキる経営者はどんな方法でコンディションを整えているのか? こういった質問は取材でよく受けます。
もちろん、成功した人全員が運動をしているわけではありません。ですが、パーソナルジムでトレーニングしたり、体を鍛えてトライアスロンに挑戦する経営者というのは、実際に多くいます。「筋トレが趣味」なんて公言する方もいますよね。
そんな皆さんに共通しているのは、時間の管理が上手なこと。忙しくてもきちんと週に1回もしくは2回のトレーニング時間を作り、ジムでメニューをこなします。運動する時間も組み込んだ1週間のスケジュールを事前に立てて行動しているのでしょう。
しかも、時間を無駄なく活用しているという印象です。トレーニングの開始時間にきちんと現れ、終了時間ギリギリまで体を動かしています。余計なおしゃべりはあまりしません。
ベンチャー経営者は、創業当初こそ運動する時間を確保するのも難しいぐらい忙しいようですが、会社がある程度大きくなって自分でスケジュールを管理できるようになると、パーソナルジムに来て体を動かすようになる傾向があります。経営者として自分が常に万全のコンディションでいることが会社にとってもメリットがあると合理的に判断しているのでしょう。
コンディションを整えるのにパーソナルトレーナーを活用するのは、専門家に任せたほうが確実に結果を出せるから、という理由かもしれません。また、トレーナーにアポイントを取ってジムに行くため、「今日は気が進まないから運動を休もう」というようなことが減るメリットもあります。
自分を限界まで追い込むメニューに取り組む
具体的にジムでどのようなメニューを行っているのかについては、人それぞれなのですが、共通点もあります。それは、自分を限界まで追い込むメニューを好むという点です。
自分を限界まで追い込むメニューの代表例が、「バーピージャンプを取り入れたHIIT」です。
HIIT(High Intensity Interval Training=高強度インターバルトレーニング)とは、ご存じの方も多いと思いますが、負荷の高い運動と短い休憩を繰り返すトレーニング法です。
バーピージャンプとは、スクワット、腕立て伏せ、ジャンプの動作を一連で行うトレーニングです。バーピージャンプという名前は、考案者であるロイヤル・H・バーピー博士からきています。
バーピージャンプのやり方
とてもキツいトレーニングとして知られるバーピージャンプですが、全身の筋肉を使うので体幹も鍛えられ、心肺機能も強化されます。
HIITとして、例えば20秒間のバーピージャンプから、10秒間の休憩を1セットとし、8セット行うというメニューを組むと、たった4分間で限界近くまで追い込むことができ、心肺機能もグッと上がります。
このメニューを続けると、日常生活はもちろん、スポーツやレジャーの際も、息が上がりづらくなる効果が実感できます。
「達成感」こそが経営者を駆り立てる
「成功したベンチャー経営者がHIITでバーピージャンプをやっている」と聞くと、トレーニング法に詳しい人は、「あんなにキツいのをよくやるな」と感心するかもしれません。
実際、ジムで若いトレーナーに檄(げき)を飛ばされながら必死に自分を追い込む経営者の方の姿を見ると、私も感心します。
なぜそこまで、気力・体力の限界まで自分を追い込むトレーニングを行うのかというと、それによって「達成感」が得られるからではないかと思います。
トレーニングでは、続ければ確実に達成感が得られます。それまで4セットしかできなかったものが、今週は5セットまでできた。ベンチプレスで何キロまで挙げられるようになった。そんな達成感が、ストイックにトレーニングを行うモチベーションになっているのです。
これは、例えばベンチャー経営者が、自分で会社を大きくすることで得られる達成感に似ているのかもしれません。
運動によって得られる達成感が「自信」を生む
コンディションを整えるために運動するのであれば、何もデキる経営者のまねをして自分を限界まで追い込むトレーニングを行う必要はありません。少しキツいと感じる程度の運動を、週に2~3回くらい行うことが、体調管理につながるでしょう。
そして、やはり運動することによって「達成感」を得られることが、心身のコンディションに与える影響は大きいのではないかと思います。
例えばランニングでは、それまで10kmしか走ったことがなかった人が、地道に続けたことで、20km、30kmと走れるようになり、ついには大会でフルマラソンを完走するようになると、とてつもない達成感が得られます。
私自身もウルトラマラソン(100㎞)を初めて完走したときに、自分を誇らしく思い、大きな達成感を得ました。
トレーニングによって筋肉が増えたり、腹筋が割れた、というのも同様です。そうやって達成感を得た方は、皆さん自信がつき、堂々とした姿勢や態度に変わります。
そのような運動を続けると、ただコンディションを整えるだけでなく、メンタル面も充実し、仕事でも良い影響が出てくるはずです。ビジネスパーソンの皆さん、ぜひ体を動かしましょう!
(まとめ 長島恭子=フリーライター)
[日経Gooday2021年10月20日付記事を再構成]
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上やけが予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんやバドミントンのフジカキペア、プロランナーの神野大地選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。
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