日経エンタテインメント!

飛行士とエリザベートが似ているところ

ストーリーは、砂漠に不時着した飛行士が、宇宙に浮かぶ小惑星を飛び出して様々な星を旅して地球にやって来た王子と出会い、対話をしていくことで広がっていきます。王子役は、『レ・ミゼラブル』でコゼット役を演じるなど、まだ23歳と若い女優の加藤梨里香さんと、初演から王子役を演じているオリジナルキャストの土居裕子さんがダブルキャストで演じます。僕は飛行士と、王子が地球で友だちになるキツネの2役を演じます。

土居さんは、音楽座で王子を最後に演じたのが25年前だとおっしゃっていました。でも、稽古での本読みを聞いたら、つい昨日までこの役をやっていたんじゃないかと思うくらい、体に染みこんでいて、自分のものにしているので驚きました。そんな役を今回のバージョンでもう一度やろうと思ってもらえて、共演する僕たちにはとても光栄なことです。

この作品は言葉の解釈が難しくて、抽象的な物事のひとつひとつをどう捉えるかが演じる上での大きなテーマです。演出の小林香さんからは、稽古の最初に2~3時間かけて、「このセリフはこういうことだと思う」といった解釈の話がありました。僕たちも稽古をしながら、「ここってどういうことですかね」とか「どう捉えればいいんだろう」と言いながらやってきたのですが、土居さんの中でははっきりしたものがあるみたいです。まるで王子本人が稽古場に来たみたいな存在感を放っています。

土居さんと梨里香さんという世代の違う2人が演じることで、王子から見えてくる意味合いが全然違ってくるのが今回のバージョンの特徴です。少年という設定ではあるけど、誰よりも大人で、誰よりも物事の本質が見えているのが王子だと思うので、土居さんの王子はそこの説得力がすごい。梨里香さんは子供の方に近くて、何も知らなかった王子がひとつひとつ学んでいって、傷ついたり喜んだりする姿に説得力があります。一緒にやっていて、面白いなと。僕は飛行士役をどこまで演じ分けられるか分からないですが、2人が全然違うから、おのずと変わってくるんだろうなと思って、役作りをしています。

飛行士は原作者のサン=テグジュペリと重なるところが多々あります。たぶんそういう理由で、『リトルプリンス』では随所で原作を脚色しています。例えば冒頭では、飛行士が飛び立つ前に先輩と会話する場面があって、そこで恋人との関係で悩んでいたり、自分の人生に希望が持てなくなって孤独だという内面を描いています。僕にすれば、飛行士を演じながら、サン=テグジュペリ本人を演じているようなところがあります。

そういうこともあって、僕は飛行士が一番ドラマチックな役だと思っています。大人になって見失ったものを、王子と出会って取り戻していくのですが、誰しもかつては子供だったわけだし、一番お客さまに近いと思うんです。彼が変わっていく過程をどういうふうに演じて、見ている人に共感していただけるかが、今回のチャレンジです。

次のページ
言葉のひとつひとつをどう解釈するか