SKY-HI 壁を突破した彼、間違ってなかった最初の印象
連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(23)
SKY-HIが開催したオーディションプロジェクト「THE FIRST」。そこから7人組のボーイズグループ「BE:FIRST」が誕生し、11月3日にメジャーデビューする。前回の「SKY-HI BE:FIRSTに彼がいる心強さは尋常じゃない」に続き、今回取り上げるのはMANATOとRYUHEI(本記事は『日経エンタテインメント!』10月号に掲載されたインタビューのノーカット版)。[「BE:FIRST」や「THE FIRST」についてはこちら]
インタビューを行ったのは最終審査からほぼ10日後。SKY-HIは「まだ自分の会社(BMSG)所属のアーティストというより、自分が開催したオーディションを受けてくれた方っていう感覚があるから難しいなあ」と言いながらも、メンバーの成長と魅力を率直に語った。
MANATO―トビラを開いた"THE FIRSTの象徴"
「MANATOは最終審査で爆発的に良くなって、もう、大歓喜! 僕が一番うれしかったかもしれないし、一番に名前をコールしたいなと思ったほどです。割と早い段階から最終審査で見せたステージでの姿を理想形として頭の中で描いていたのですが、なかなか壁を突破できなかった。でも、最終ステージで僕の最初の印象を世間に証明してくれました。
MANATOってすぐふざけるんですよ。『Be Free』のレッスンの時は、完全にMANATOが『みんなを絶対笑わせてやろう』と思ったんでしょうね。ボイストレーナーのりょんりょん先生(佐藤涼子氏)のマネをして大げさに顔を作って歌ったんです。その声の響きがすごく良くて、表情も素敵だった。
さらに、りょんりょん先生に『(歌詞に合わせて)私に向かってウインクしなさい』って言われてやったんですが、あれも良かったですね。MANATO本人はふざけてやってるんですけど、僕はそれを見て『MANATO、めちゃくちゃ素敵じゃん!』と思ったし、『頼むからステージでそれをやってくれ』と祈るような気持ちでした。
大きく変わったなと感じたのは、1カ月の富士山合宿終了後、改めて最終合宿が始まった頃です。何か本人から出ている空気感が違っていた。レコーディングをしてもダンスをしても、完全に"開いている"状態だったので、本当に抱きしめたくてしょうがなかった(笑)。
MANATOに関しては、それまでずっと、何かトビラが重そうだなという印象も感じていました。そのトビラが開いた先に何があるのか、僕自身も少し怖かった。何がそのトビラを重くしているのか、僕自身もMANATOに聞くことはしませんでした。でも、エンタテインメントの世界は、不必要な要素に苦しんで才能が潰れていくケースが本当に多く、MANATOも今までの経験の中で何かを考え込んでいそうに見えました。
ジタバタともがくタイプではなく、静かに悩み苦しんでいるんじゃないかと感じていたから……そこからあの輝きを導き出せた僕(笑)? 僕はすごくうれしいけど、僕というより『THE FIRST』がうれしいっていう感じかな。MANATOは"THE FIRSTの象徴"です」
RYUHEI―信頼できる仲間を得た突出した才能の持ち主
「RYUHEIに関しては、『THE FIRST』のスタート時点で持った印象の延長線上に今がある感じかな。ただ『横に広げられる』ようになったのは、本当に良かったですね。
彼は、自分がパフォーマンスすることに関しては天才的でした。でも、グループで表現する場合、普段からメンバーに感覚や感情を言語で共有することが必要です。それでないと、ステージ上で何を考えているか、横の人が感じることができませんから。RYUHEIがグループのメンバーとしてやっていけるのかは、そこに大きな課題がありました。
合宿の最後の課題曲『To The First』くらいから、自分の感情や感覚を表現するだけでなく、その感情や感覚を横に共有するパフォーマンスができるようになっていきました。『To The First』は、本当にいいチームでした。実はこの審査の前まで、RYUHEIがいるチームは常に負けていて、RYUHEIだけ評価が高いということが続いていたんです。ある種、突出した才能を持つスターが背負ってしまう宿命だったりもするんですけど……。
この世界では、突出した個性は、周りに理解されずに出る杭(くい)のように打たれるか、引っこ抜かれるかになってしまう。僕は理解されずに打たれ続けてきたけど、RYUHEIもそうなってしまう可能性も低くないなという気がちょっとしていました。だって、どこにいてもたぶん浮いちゃうから。そういう意味でも、『THE FIRST』での合宿を通して、またこれからBE:FIRSTのメンバーとしても、本当にいい仲間たちに巡り合わせることができて、まずは心の底から良かったなと思います。
ただ、本質的に世の中の見え方や人が話したことの聞こえ方の感覚が研ぎ澄まされているから、他の人との感覚のズレに悩むことはこれからもあるかもしれない。何かに悩んだその時に、僕が彼にとって"話しやすい人"として存在できるようになっている必要があると思っています。僕がこの先もアーティスト、社長、プロデューサーとしてリスペクトを向けてもらえるように努力を続ける必要があるんです」
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。9月1日から『Dive To World feat. Takuya Yamanaka(THE ORAL CIGARETTES)』配信中。10月27日には約3年ぶりのオリジナル・アルバム『八面六臂(はちめんろっぴ)』をリリース。アルバムには、「THE FIRST」に参加し、現在BMSGに所属するAile The ShotaやRUI、REIKOらをフィーチャリングした楽曲も収録する。
【過去の記事一覧と「BE:FIRST」についてはこちら】
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2021年10月号の記事を再構成]
関連リンク
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。