戻ってきたマーク2を船に引き上げ、記録された音を再生してみると、静かな海中に突然、マーク3の破裂音が鳴り響いていた。小さな浮きの破損をきっかけに、連鎖的に破壊が起きたのではないかと、バークレー氏は考えている。
圧倒的な水圧でガラス球が崩壊すると、中の空気は解放され、無数の小さな泡となった。これらの音が全て海中を伝って海面まで届き、跳ね返ってマーク2のところまで戻ってきた。
マーク3がもはや絶望的であることはすぐにわかったと、バークレー氏は語る。

破裂から25秒後のかすかな音
それから6年後の20年、米ウッズホール海洋研究所の海洋音響学者であるスコット・ロランジャー氏は、机に座って当時の録音ファイルを聞いていた。パンデミックのせいで現場へ出ての調査が減っていたため、過去に録音されたものから何か有益な情報が得られないかと考えたのだ。すると、破裂による当初の混乱が収まった後、いくつかのはっきりした反響音がした。音は少しずつ小さくなり、やがて聞こえなくなった。
停止ボタンを押すのも忘れてキーボードをたたいていたロランジャー氏は、そのとき奇妙な音を聞いた。破裂から約25秒後、再びかすかな音が入ってきた。その反響音は、海面と海底の最深部に何度も跳ね返り、40キロ近い距離を伝わっていた。ロランジャー氏は仰天した。「全く予想していませんでした」
コウモリが暗闇で超音波を利用して、周囲の環境と自分の位置を知るように、音波の測定は、海底の地形を調べる最も一般的な方法のひとつだ。海面近くで爆発物を爆発させて、海底で跳ね返った音を測定するという手法は以前から取られていたが、最近では圧縮空気など、よりコントロールしやすい方法で音を作るようになっていると、ハワイ地球物理学・惑星学研究所所属で、海底地形図製作の専門家マーク・ロンスタッド氏は説明する。
海が深ければ深いほど、激しく低い音でなければ、海底まで届かない。14年のマーク3の事故はまさに、そのような激しい音を発生させるものだった。ガラスの球体が水圧によって崩壊すれば、かなりの爆音になるだろうと、ロンスタッド氏は言う。氏は、今回の研究チームの一員ではないが、第2次世界大戦のミッドウェー海戦で沈没した船の捜索に参加したことがある。ナショナル ジオグラフィックが資金を提供したこの調査でも、遠隔操作していた潜水艇のガラス球が内部崩壊して混乱を引き起こした。「あのときは、まるでダイナマイトが爆発したようだったと聞きました」
