日経ナショナル ジオグラフィック社

2022/3/11

穴の説明としては他にも、地下にある高温の流体が結晶化したからだという説や、本来は鉱物で満たされていたが遠い昔に洗い流されたという説などがある。ヒーニー氏は、かつてカーボナードの空洞には放射性元素を豊富に含むリン酸塩鉱物が存在していたが、放射性元素の崩壊に伴って石の結晶格子構造を損ない、石の色が暗くなったという説を唱えている。

しかし、穴は互いにつながっているため、残された物質を調べることすら難しい。内包物が最初から存在したのか、後に形成された鉱物かを見分けるのは容易ではないからだとカルティニー氏は説明する。

スタヘル氏も「カーボナードは本当に難題です」と語り、石そのものの化学的性質が鍵を握るかもしれないと言い添えた。

奇妙な化学的性質

ダイヤモンドは炭素のみで構成されているが、炭素原子には中性子の数が異なるために重いものと軽いものがある。これらを同位体といい、カーボナードの炭素同位体の割合は普通のダイヤモンドと異なる。地球の奥深くで形成されるダイヤモンドよりはるかに軽く、生命体を構成する有機炭素に近い。

一部の科学者はこの軽さを理由に、プレートが沈み込む場所で地中深くに引き込まれた有機物からカーボナードが形成されたと考えている。以前、普通のダイヤモンドで提唱されたメカニズムだ。カーボナードが形成されていた約30億年前は、地球上に生命が現れ始めた時期でもある。

「カーボナードは地球最古の生物の化石なのでしょうか?」とヒーニー氏は問い掛ける。「その答えは誰にもわかりません」

しかし、カルティニー氏らは別の起源を示唆する手掛かりを見つけている。2010年にフランス領ギアナで、カーボナードと炭素の同位体の割合をはじめ、化学的な特徴がそっくりなダイヤモンドを発見したのだ。このダイヤモンドはコマチアイトの中にあった。コマチアイトは地球の初期のみに流れていた超高温の溶岩から形成された火山岩だ。

このダイヤモンドの結晶の構造はカーボナードと異なるが、コマチアイトを作った超高温の溶岩によって、カーボナードのような結晶ができることもあるのではないかとカルティニー氏は考えている。

「地球のマントルからカーボナードが形成しうることは、もはや否定できません」と氏は言う。

しかし、最終的な答えが出るのは、この黒いダイヤモンドがまた新たに見つかったときかもしれない。新たなカーボナードには明確な出どころを示す物質が含まれているかもしれないし、母岩が真の起源を解き明かすかもしれない。

古代から輝き続けるエニグマは、私たちの宇宙がまだ多くの驚きと謎を秘めていることを思い出させてくれる。

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年2月14日付]