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なんとイカにも愛妻家がいた メスの産卵場所を探す

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

世界各地のサンゴ礁に生息しているアオリイカに、父親としての養育行動の証拠が初めて見つかった。イカは一般に子煩悩な親ではないと考えられており、特にオスは、交尾をした後すぐにどこかへ行ってしまう傾向にある。だからこそ、今回の発見は科学者たちに驚きをもって受け止められている。

アオリイカのオスはメスをめぐって激しく争う。メスと交尾(交接)を終えたオスは通常、近くに留まって、他のオスがそのメスと交わるのを防ごうとする。メスは受精卵を産む準備が整うと、サンゴの隙間を探して何度も産卵する。オスは、メスが産卵を終えた後もしばらくはメスを守り続け、その後、おそらくは他のメスを探すために去っていく。

ところが生物学者のエドゥアルド・サンパイオ氏は、エジプトの紅海でダイビングをしている最中、奇妙なことに気がついた。メスとつがいになったオスは、ライバルたちを追い払うためにしばらく触腕を振ったり、皮膚の色を変えたりしていたが、その後、メスのそばを少しの間離れて、産卵にちょうどよさそうな隙間へ入っていき、数秒後にまた姿を現した。

「オスのイカが何をしているのかはよくわかりませんでした。あんな光景を見たのは初めてでしたから」とポルトガル、リスボン大学の博士課程の学生で、ドイツのマックス・プランク動物行動研究所にも所属するサンパイオ氏は振り返る。

この話をサンパイオ氏から聞いた、ニューヨークにある米自然史博物館で生物多様性を研究するサマンサ・チェン氏もまた、アオリイカのオスが同様の行動をしている様子を2013年にインドネシアで撮影していた。ところが、イカやタコなどの頭足類に関する科学的文献には、そうした行動はまったく記載されていなかった。

21年9月3日付で学術誌「Ecology」に発表された論文で、サンパイオ氏とチェン氏はこの行動を詳述し、これは父親による養育行動(パターナル・ケア)の一例であるという仮説を提唱した。こうした行動は、これまでイカでは観察されていなかったものだ。

メスが卵を産む前にオスが巣の候補地を調べるという行動は、一夫一婦制の生物ではよく見られるパターナル・ケアの例だが、頭足類では極めて珍しい。

両氏は、この現象をまだ完全に理解したわけではないとしているが、今回の発見はイカの繁殖についての理解を大きく変える可能性がある。これはイカのメスとオスの関係が「これまで考えられていたよりも何倍も複雑であることを示しています」とサンパイオ氏は言う。「私たちにはまだ学ぶべきことがたくさんあります」

自分の遺伝子を残すために

両氏は、チェン氏がインドネシアで撮影した動画と、サンパイオ氏がエジプトで撮影したものを比較し、産卵場所を探す行動は偶発的ではなく、意図的なものであると結論づけた。また、オスがメスのそばを離れている間に、別のオスがこっそりやってきて交尾をしてしまう場合があったことも指摘している。

しかしなぜオスはパートナーのそばを離れるのだろうか。短い間ではあっても、メスをひとりにすれば他のオスに交尾をするチャンスを与えることになる。メスのそばを離れれば自分の繁殖の成功が脅かされることになるのだから、それなりの理由があるはずだと両氏は考えた。

産卵場所の候補となる隙間を実際に観察したわけではないが、イカのオスは「その場所をきれいにして、そこが卵を産み付けるのに適した環境であり、他のオスや捕食者がうろついておらず、安全であることを確認しているのではないでしょうか」とサンパイオ氏は述べている。

これらはすべて、オスのアオリイカがこれまで考えられていた以上に、自分の遺伝子を残すことに力を注いでいることを示唆している。

イカをはじめとする頭足類全般では通常、卵がふ化するまでの世話はメスが行う。腕で卵をきれいにしたり、水管や腕を使って卵の周囲の水流を増やして酸素を供給したりするのはメスの役目だ。オスは何もしない。多くの種では、メスは卵がふ化した後に死んでしまう。

頭足類の専門家で、アイルランド研究評議会およびアイルランド国立大学ゴールウェイ校の博士研究員フェルナンド・アンヘル・フェルナンデス・アルバレス氏もまた、今回の発見に驚いている。

氏は今回の研究には参加していないが、研究結果は確かなものだと考えている。「頭足類のこうした行動は見たことがありません。(支配的な)オスは通常、メスから遠く離れた場所には行きません。他のオスがメスと交尾する可能性があるからです」

イカ研究の今後

今回の研究は、頭足類の交尾を野生環境でさらに研究することの重要性を示していると、フェルナンデス・アルバレス氏は指摘する。

「私たちがアオリイカの行動について知っていることの大半は、水族館での研究がもとになっています」。しかし、そうした人工的な環境が単純すぎるせいで、イカが産卵場所の探索行動をとっていなかった可能性もある。

現在、サンパイオ氏とチェン氏は、他の科学者たちにも声をかけ、世界の他の海域でもアオリイカがこうした交尾行動をとっているのかどうかを調べている。

「これほど広大な海域に生息している種を研究する上での最大の課題は、網羅的かつ代表的な例を集めることです。他の科学者と協力することで、互いに時間とリソースを提供しあいながら、世界規模の研究を共同で行うことができます」

いずれにせよ、イカ、そしておそらくは他の頭足類が、私たちが想像していたよりも洗練された交尾行動をとっていることは間違いない。

サンパイオ氏は言う。「イカについて知れば知るほど、その複雑さと奇妙さに驚かされます」

(文 MELISSA HOBSON、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年9月8日付]

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