検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

活気戻ったアイルランドのわら仮面 コロナ禍にも一役

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

アイルランドでは少なくとも400年前から、クリスマスシーズンになるとわらの仮面をかぶった人々「ママー」が家々を回り、芝居や詩、歌、踊りなどを披露してきた。1900年代半ば、北アイルランド問題が勃発したこともあり、この風習はほぼ消滅したものの、近年、再び活気を取り戻している。

ママーによるパフォーマンス「マミング」が復活したのは、国中でクラブが結成され、クリスマス前にショーを行っているおかげだ。その一つが、リートリム県のアーティスト、エドウィナ・グキアン氏が7年前に地元で立ち上げた巨大プロジェクト。地元の農家から集めたわらで仮面やドレスを手づくりし、12月になると、300人以上の若いママーが家々を訪ね、グループでパフォーマンスを披露している。最後に、わらの衣装をたき火で燃やし、イベントはクライマックスを迎える。

マミングの起源は、この地にキリスト教が広まる以前にさかのぼると広く信じられているが、そうした起源にまつわる物語は事実より言い伝えに近いという。

いずれにせよ、マミングは若い世代を昔ながらの伝統につなげる役割を果たしているとグキアン氏は話す。また、マミングを行う集団は、歴史的には若い男性で構成されていたが、現在はアイルランド社会のあらゆる人々が参加している。

パフォーマンスを見たい旅行者はリートリムに向かうといい。緑の森、透明な湖、結束の固い農村で知られるアイルランド北西部ののどかな地域だ。

歌や寸劇を披露、お金を集める

ママー(mummer)という語はゲルマン語が起源とされ、この伝統が定着したアイルランド、英国、スコットランド、カナダなどでは、仮面を付けた役者を指す言葉として使われている。アイルランド国立博物館の元学芸員で、『Straw, Hay and Rushes in Irish Folk Tradition(アイルランドの伝承におけるわら、干し草、イグサ)』の著書もあるアン・オダウド氏によれば、この風習は1600年代、英国からアイルランドに伝わったという。

その後、何世紀にもわたり、マミングはアイルランドの北半分と東海岸の一部で広く行われていた。何に扮するかや寸劇のテーマはアイルランド風にアレンジされた。歴史的には、男性だけの一座が聖パトリックのようなアイルランドの英雄、オリバー・クロムウェル、キング・ジョージなど物議を醸した英国の政治上の人物、ジャック・ストローのような伝説上のキャラクター、ベルゼブブのような神話に登場する生き物を演じた。

これらのキャラクターが悪役、英雄として戦い、どちらかが血まみれになるという筋書きだ。「そこに医者がやって来て、死んだキャラクターを生き返らせます」とオダウド氏は説明する。「生命と再生というこのテーマが毎年繰り返されます」

昔のママーは顔を隠し、ぼろぼろの衣装をまとい、手には棒を握り、恐ろしい外見だったと語るのは、アイルランド国立大学ダブリン校でナショナル・フォークロア・コレクションの責任者を務めるクリストファー・マッカーシー氏だ。彼らは前触れなく家に入り、パフォーマンスを始めた。温かく迎える住人もいれば、子供が怖がるという理由で追い出す人もいた。いずれのケースでも、ママーたちは訪問するだけで報酬を得ることができた。

ヘンリー・グラシー氏は1977年の著書『All Silver and No Brass: An Irish Christmas Mumming(銀のみ可、真ちゅうは不可:アイルランドのクリスマスの伝統マミング)』の中で、ママーのショーは愉快だが、威圧感が漂っていたと述べている。終盤に2人の悪魔が登場する典型的な芝居がある。十分な報酬が得られなかった場合、家畜を盗み、「おまえを墓場に連れて行く」と家主を脅していた。

「韻や体の動きでユーモラスに表現していますが、メッセージは明確です」とグラシー氏は話す。「棒を持った若い男たちが台所に立ち、お金がほしいと言っているのです」

グループの1人が韻を踏んだ詩で支払いを要求した。「フィドリー・ファニー(厄介な芸人)がやって来た。集金にやって来た。銀のみ可、真ちゅうは不可。悪いお金はいりません」という古典的な一節がある。マッカーシー氏によれば、昔のママーは集めた資金で酒を買い、お祭り騒ぎに興じていたという。一方、現代のママーは通常、寄付金があれば、慈善事業や地域プログラムに全額を投じる。

ただし、昔のマミングは良い影響も与えていたとマッカーシー氏は述べている。この伝統はカトリックとプロテスタントに分かれていたアイルランドのコミュニティーを結び付ける役割を果たしていた。2つの教派が入り交じる一座もあった。ところが1900年代、教派間の分裂が拡大し、マミングは衰退した。

1950~1980年代、アイルランドが社会不安に陥ると、北アイルランドとアイルランド共和国の境界付近でパフォーマンスを行うだけでも、しばしば許可を得なければならなくなった。暴力事件が多発していた背景を考えると、変装して近所を歩き回る男たちに人々が不安を覚えたのも当然だ。

ロックダウン中、高齢者を訪問

現在、平和になったアイルランドでは、マミングはそうした重荷から解放され、すべての人に開かれた古風なイベントと認識されている。実際、リートリムのママーは2歳の男の子から70代の女性までと幅広い。多くのママーが素晴らしい音楽家で、フィドル、バンジョー、ティンホイッスル、バウロン(太鼓の一種)などを巧みに操り、見物人たちを楽しませている。アイリッシュダンス、芝居、歌の名人もいれば、わらの衣装をまとい、かわいい外見で魅了する小さなママーもいる。

ママーは多くの場合、大人と子供からなる4~8人の一座に分かれ、リートリムの家々を回り、踊りや歌、詩、楽器演奏、寸劇を披露する。昔のママーと異なり、報酬を受け取ることはない。その代わりとして、クリスマス直後に内輪だけのパーティー、ママーズ・ジョインに招待され、使い終えた衣装をたき火で燃やす。

年配のファンのほとんどは、かつて自身もママーだった。昨年、グキアン氏はまさにこれらの弱者を思い浮かべ、ロックダウンで屋内にとどまるよう命じられた人々のため、マミングを行うことを決断した。

グキアン氏は友人で音楽仲間でもあるフィオヌアラ・マックスウェル氏、ブライアン・モスティン氏とともに、この1年半に約130の介護施設や高齢者の自宅でパフォーマンスを行ってきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威と政府の厳格な規則があったため、玄関先でのパフォーマンスを余儀なくされた。会話や交流に飢えている人々からどれだけ懇願されても、建物に入ることは許されなかった。

「私たちはとても温かい歓迎を受けました」とグキアン氏は振り返る。「自分の楽器を取り出して参加する人もいました。一日中話していたいと望む人もいて、私たちに同行したいと言い出す人までいました」

観客のなかには、この陽気な体験がこの世で最後の楽しい体験になった人もいる。COVID-19に命を奪われたアイルランドの高齢者の多くがそうだったように、これらの人々もマミングに彩られたコミュニティーで育った。この伝統が衰退するのを目撃した人々でもある。

しかし、リートリムの歴史を知る彼らはこの世を去る前、最後に心躍る訪問を受けた。ベルの音。かき鳴らされるバンジョー。フルートの調べ。ダンサーのステップ。そして、わらの仮面越しに見えるアイルランド人の優しいまなざし。ママーが戻ってきたのだ。

(文 RONAN O'CONNELL、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年12月15日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_