2022/1/12
リートリムでマミングの復活を主導するエドウィナ・グキアン氏。息子、夫とともに(PHOTOGRAPHS BY RONAN O'CONNELL)

ロックダウン中、高齢者を訪問

現在、平和になったアイルランドでは、マミングはそうした重荷から解放され、すべての人に開かれた古風なイベントと認識されている。実際、リートリムのママーは2歳の男の子から70代の女性までと幅広い。多くのママーが素晴らしい音楽家で、フィドル、バンジョー、ティンホイッスル、バウロン(太鼓の一種)などを巧みに操り、見物人たちを楽しませている。アイリッシュダンス、芝居、歌の名人もいれば、わらの衣装をまとい、かわいい外見で魅了する小さなママーもいる。

ママーは多くの場合、大人と子供からなる4~8人の一座に分かれ、リートリムの家々を回り、踊りや歌、詩、楽器演奏、寸劇を披露する。昔のママーと異なり、報酬を受け取ることはない。その代わりとして、クリスマス直後に内輪だけのパーティー、ママーズ・ジョインに招待され、使い終えた衣装をたき火で燃やす。

年配のファンのほとんどは、かつて自身もママーだった。昨年、グキアン氏はまさにこれらの弱者を思い浮かべ、ロックダウンで屋内にとどまるよう命じられた人々のため、マミングを行うことを決断した。

グキアン氏は友人で音楽仲間でもあるフィオヌアラ・マックスウェル氏、ブライアン・モスティン氏とともに、この1年半に約130の介護施設や高齢者の自宅でパフォーマンスを行ってきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威と政府の厳格な規則があったため、玄関先でのパフォーマンスを余儀なくされた。会話や交流に飢えている人々からどれだけ懇願されても、建物に入ることは許されなかった。

「私たちはとても温かい歓迎を受けました」とグキアン氏は振り返る。「自分の楽器を取り出して参加する人もいました。一日中話していたいと望む人もいて、私たちに同行したいと言い出す人までいました」

観客のなかには、この陽気な体験がこの世で最後の楽しい体験になった人もいる。COVID-19に命を奪われたアイルランドの高齢者の多くがそうだったように、これらの人々もマミングに彩られたコミュニティーで育った。この伝統が衰退するのを目撃した人々でもある。

しかし、リートリムの歴史を知る彼らはこの世を去る前、最後に心躍る訪問を受けた。ベルの音。かき鳴らされるバンジョー。フルートの調べ。ダンサーのステップ。そして、わらの仮面越しに見えるアイルランド人の優しいまなざし。ママーが戻ってきたのだ。

ママーたちは家々を回り、ドラム、バンジョー、フィドル、ティンホイッスルなどを演奏する(PHOTOGRAPHS BY RONAN O'CONNELL)

(文 RONAN O’CONNELL、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年12月15日付]