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使用済みプラスチックはごみでなく資源になる

アネロテックと共同開発で生まれた熱分解と触媒の反応の技術を応用して、20年6月にはアールプラスジャパン(東京・港)という会社も設立した。ペットボトルの原料となるPETやPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を生み出す循環型リサイクルシステムの構築を始動している。

アールプラスジャパンは、サントリーをはじめとする、環境負荷の少ない効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術開発を目指す共同出資会社。創業時は12社だったが、カルビーやセブン&アイ・ホールディングスなども加わり現在は38社が名を連ねている。この取り組みへの期待の大きさがうかがえる。

「プラスチックは、炭素や水素が理想的に組み合わされています。ウッドチップから炭素などを取りだす技術の開発を進めていたとき、同様にプラスチックも変換できるのではないかと考えました。もしこの技術が汎用化されれば、使用済みプラスチックはごみでなく資源になる。プラごみの解決の1つの答えになる、革新的技術になり得るのではないかと。軽くて丈夫、持ち運びやすいペットボトルは、そもそもは非常に優れた容器。その性質を生かし、環境に負荷をかけない取り組みをさらに推し進めたい」

サントリーは、22年3月より同社国内販売ペットボトル全商品のラベルに「ボトルは資源!サステナブルボトルへ」の新ロゴマークを順次展開すると発表した。ペットボトルが再生可能な資源であることを広く認知してもらうためだ。

ただし、ペットボトル内に飲み残しや、たばこの吸い殻などのごみがあると、資源化できず焼却されてしまう。水平リサイクルには、正しい分別と回収が欠かせない。そこで、同社は京都府宇治市などでつくる城南衛生管理組合や東京都府中市、茨城県内6市、といった自治体や企業、団体などと連携。水平リサイクルが可能な状態で回収できる体制強化を図っている。

手前のウッドチップからペットボトルを造れる

もともと、繊維メーカーなどからの需要が高い使用済みペットボトル。自治体や団体との連携は、資源としてのペットボトルを確保する狙いもあるのだろう。実は、類似した水平リサイクル回収プロジェクトもある。ユニリーバ・ジャパンと花王など4社は21年6月から、東京都東大和市で実証事業を共同で開始した。また、アラブ首長国連邦(UAE)の会社であるInternational Holding Company(IHC)は、22年1月に再生プラスチックのグローバル取引プラットフォーム「Rebound Plastic Exchange」を立ち上げると発表した。プラスチック再生技術の向上と、エシカル消費へ関心が高まるにつれ、使用済みプラスチックの価値は見直され始めているようだ。

「水と生きる」をテーマに掲げ、1970年代から「愛鳥活動」を実施するなど、長年の環境活動に取り組んできたサントリー。ブランド総合研究所が2021年7月に実施した「企業版SDGs調査2021」で、「SDGsの取り組みの評価が高い業界別ランキング」の飲料・食品で1位となっている。世界初の技術とリサイクルへの取り組みをアップデートし続けることで、ペットボトルを取り巻く状況をサステナブルへ導けるか。22年4月1日、プラスチック資源循環の取り組み(3R+Renewable)を促進するための「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、いわゆる「プラスチック新法」が施行されるいま、飲料・食品業界の雄、サントリーに注がれる視線はますます熱を帯びそうだ。

(ライター 橘川有子、写真 大谷真幸)

[日経クロストレンド 2022年3月9日の記事を再構成]

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