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世界25カ国で展開する獺祭

獺祭は現在、世界約25カ国で展開。海外販売はこの5年間で飛躍的な成長を遂げ、20年度の売り上げは16年度比で5倍以上の69億1000万円となった。「コロナ禍で日本に来られないことから海外での需要が好調で、コロナ禍以前より倍以上伸びた」(桜井社長)。日本酒全体の輸出額では2割弱のシェアを占める。

さらに、20年11月に開かれた香港のオークションではコンテスト「最高を超える山田錦プロジェクト2019」で優勝した米で造った獺祭が80万円超で落札されるなど世界の富裕層マーケットでも戦えるまでにブランド力が高まっている。今後は「米国とアジア市場で数倍に拡大する余地がある」とみて、さらなる攻勢をかけていきたい考えだ。

コーシャ認証を取得したお酒が並んだ
ラベルにコーシャジャパンの認証マーク「KJ」が入っている

杜氏(とうじ)制度の廃止や直売など業界の慣習にとらわれず、独自の戦略で成長してきた同社が、新たに挑むのが米国での酒づくりだ。現在、マンハッタン中心部から約200キロメートル離れたニューヨーク州北部に酒蔵を建設中。コロナ禍の影響で工事は遅れているが、22年秋完成し、年内には稼働できる見通しだ。

和食を学べる場をつくりたいという現地の料理学校から依頼を受けた。コンセプトは「ニューヨークの蔵から全米の食文化を変え、世界へ波及させる」。日本酒をもっと世界に広める狙いがある。酒米には、アーカンソー州産の山田錦と日本から精米した山田錦を使用し、新ブランドを開発。酒蔵の2階には、酒づくりの見学スペースや酒のテイスティングスペースも設ける。

茶会のあとは料理もふるまわれた

コーシャ関連のビジネス市場は21年度に17兆円

コーシャジャパンによれば、世界のコーシャビジネスの市場規模は、21年度に17兆円を超すと予測されている。10億人を抱えるイスラム教のハラール市場が200兆円であるのに対し、ニッチなマーケットではあるが、その規模は年々、拡大の一途をたどっている。約1500万人という世界のユダヤ人人口を考えても市場は決して小さくはない。

加えて、19年の13.8兆円のうち、世界最大の消費国である米国を含めたアメリカ大陸で約60%だが、ユダヤ教徒以外の購入者が大半を占めるという。イスラム教徒やアレルギーを持つ人もその消費者で、「コーシャ製品には、厳格なユダヤ教徒が食べる安全で健康的なイメージが浸透していることがうかがえる」(徳永氏)。ラビによる厳格な審査が行われるからこそ、安全性、信頼性の高いブランドとして評価が高まっている。

認証を持つ企業のなかには、ハインツ、コカ・コーラ、ゴディバ、ネスレ、スターバックス、ハーゲンダッツなど日本でも有名な食品ブランドが名を連ねる。一方、コーシャジャパンが認証した国内の企業数は累計約100社。日本酒、しょうゆ、味噌、米、かつお節、茶製品、健康サプリなど業種は多岐にわたる。日本酒では旭酒造が日本初だが、南部美人(岩手県二戸市)、宝酒造、「八海山」を展開する八海醸造(新潟県南魚沼市)などが相次いで認証を取得した。「イスラム教と異なり、ユダヤ教ではお酒は禁止されていないので、日本酒も認証取得可能」(徳永氏)という。

国も日本食材の輸出強化を目的に、認証取得の促進を呼びかけている。農林水産省では、ユダヤ教徒向け「宗教認証食材」などの専門知識を持つ職員を地方に配置。コーシャ認証の可能性に着目しており、新たな商機が生まれることが期待されている。

左から、ラビ茶を考案した徳永勇樹氏。コーシャジャパンのチーフ・スーパーバイザーであるラビのモルデハイ・グルマハ氏、旭酒造の桜井一宏社長、日本の首席ラビであるラビ・ビンヨミン・Y・エデリー氏

(ライター 橋長初代、写真 志田彩香)

[日経クロストレンド 2022年2月14日の記事を再構成]

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