K-POPファン向けプラットフォーム グッズもライブも
男性ダンス&ボーカルグループ最新事情 K-POP編(3)
K-POPのファンコミュニティのプラットフォームも、大きく進化している。当初はシンプルにコミュニティを目的とし、アーティストの投稿やファン同士が交流する掲示板などが中心だったが、今ではコンテンツ販売やグッズ販売、オンラインライブ配信など、ファン活動にかかわるあらゆる情報が1つの場所に集約されつつある。
「最大のプラットフォームは、HYBEが自社で手掛ける『Weverse』です。特に多言語機能に優れていて、自動翻訳は10カ国以上に対応。グローバルなファンもストレスなく使えます」(書籍『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』の著者・田中絵里菜氏、以下同)。Weverseのダウンロード数は約2500万回(21年2月)にのぼり、欧米のアーティストも合流するグローバルプラットフォームに成長している。
さらに、今年1月には、NAVERのファンコミュニティプラットフォーム「V LIVE」がWeverseと統合することも発表された。これにより、会員数1億人のプラットフォームが誕生する。
「この2大サービスが一緒になることで、プラットフォーム上でできるライブストリーミングやオンラインライブなどが進化するとともに、全てのファン活動がさらに集約されます。ファンにとっても運営にとってもますます効率化が進むのではないでしょうか」
テレビ局には頼らない!?
HYBEのように強いアーティストを持つプラットフォームは、すでに既存メディアに頼らない選択も見せている。「昨年の大みそか、BTSをはじめとしたHYBE所属のアーティストは、恒例の年末歌謡祭に出席せず、Weverse上で行った事務所主催のカウントダウンライブに出演しました。自分たちで番組制作から放送までできるなら、そのほうが事務所の収益にもつながる。今後は、この動きがもっと増えていくでしょう」
ファンコミュニティのアプリは、WeverseとV LIVEだけではない。昨今、ファンの間で話題になっているのが、20年にリリースした韓国アプリ「DearU bubble」だ。
アーティストから自分の名前が入ったメッセージが届き、コミュニケーションできるサービスで、現在、SMエンターテインメントとJYPエンターテインメント所属のアーティストを中心に、150人以上のプライベートメールを発信している。
運営は、SMの子会社SM Studiosが保有するDearU。この6月にJYPが同社の株を取得し、SMとJYPがタッグを組んだ。より多様なプラットフォームビジネスに参入していくことを目的としている。
また、今年初めにローンチした韓国NC SOFTが手掛けるアプリ「UNIVERSE」は、Mnetが主催する日中韓共同のグローバルガールズオーディション・プロジェクト『Girls Planet999:少女祭典』の視聴者投票プラットフォームとしても存在感を放った。
グローバルを目指す日本のアーティストの課題は、プラットフォームだと田中氏は話す。「日本のファンクラブの加入は、いまだ国内在住者などに限定されていて閉鎖的。ファン向けアプリにしても、多言語に対応しているものは多くありませんし、あっても取り扱い言語数は限られています」。韓国に学べることは多そうだ。
世界各地で結成&活動、今後も増える"NiziU型"
これまでは韓国で生まれたグループに様々な国籍のメンバーを入れることがスタンダードだったK-POPだが、これから増えそうなのが世界各国でメンバーを集めてグループを作る、NiziU(JYPエンターテインメント所属)のようなケースだ。
「K-POPそのものを"産業"として輸出すると言ってもいいでしょう。現地でローカライズする必要がないように、最初からその国でメンバーを集め、人材育成やトレーニングシステム、楽曲制作、ビジュアルプロデュースなどはK-POPのノウハウを活用する。コロナ禍で、この方式はさらに進むと考えています。韓国の『PRODUCE 101』をモチーフにした番組が日本や中国で行われているのも、フォーマットの輸出の一例に当たるでしょう」
前述のNiziUを生んだ「Nizi Project」は、ソニーミュージックとJYPによる共同プロジェクト。7月からボーイズグループの誕生を目指す次シーズンが始動し、さらにはアメリカ版の構想もある。中国で派生ユニットWayV(威神V:ウェイシェンブイ)を展開するNCT(SMエンターテインメント所属)も、主にアメリカで活動する「NCT-Hollywood」を誕生させる計画を発表した。
「HYBELABELS JAPAN グローバルデビュープロジェクト」など、大手事務所が軒並み、日本でのオーディションを強化している点にも注目したい。
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2021年10月号の記事を再構成]
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