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ヨーグルトや乳酸飲料が誰にでも良いというわけではない

アレルギー体質にはどうしてなるのだろうか?

――國澤センター長「先ほど少し説明したように、食事や周辺環境などさまざまな原因があると言われていますが、最近注目されているのが『腸内細菌』です。腸内には細菌が100兆個もあると言われていて、善玉菌や悪玉菌、その時々の優位な菌に従う日和見菌が存在しています。食生活や生活習慣の乱れなどで悪玉菌が優位になると腸内環境が悪化。アレルギーやさまざまな病気の引き金となります」

腸内環境を整えることが、アレルギー体質の改善や免疫機能の正常化の近道のようだ。

――國澤センター長「この腸内環境を整える、つまり『整腸』という観点から、ヨーグルトなどに使用される乳酸菌に注目が集まったのです。

ただし、ヨーグルトや乳酸飲料が誰にでも良いというわけではありませんので、注意が必要です」

私事で恐縮だが、私は体調によってはヨーグルトを食べるとおなかを壊す。少々気持ちが悪くなることもあるので、購入後冷蔵庫に入れっぱなしで賞味期限が切れることも少なくない。ヨーグルトが体に合わないのだろうか?

――國澤センター長「ヨーグルトそのものというよりも、そのときに食べた乳酸菌が体調に合わなかったのだと思います。それぞれの人の腸内細菌との相性がありますから、見極めが大切です」

「ヨーグルトが良さそうだ」と、むやみに食べるのは良くないのだという。では、自分の腸内細菌に合う菌を見つけるにはどうすれば良いのだろう?

――國澤センター長「まずは結城さんが感じているように、『おなかを壊す』ということは、その乳酸菌が自分の腸内細菌と相性が悪いということです。逆に快腸なら、相性が良いという一つの目安になると思います。2、3週間様子を見てご判断いただきたいですね」

毎日食べる必要があるのだろうか?

――國澤センター長「一般的に、飲食を介して体内に入る乳酸菌は、体内に定着しないと言われています。

もともと人間は生まれたときから体内にさまざまな腸内細菌を持っていて、菌同士が協力をしながら一つの社会を作っています。食べ物としてとる乳酸菌は、いわば『新参者』ですので、もとからある古参の腸内細菌に受け入れられないことがほとんどです」

では、一生懸命にヨーグルトを食べても意味がないということだろうか?

――國澤センター長「そんなことはありませんよ。食べ物に含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、体内を通過するときには作用する『通過菌』と言われ、おなかにいる時には良い働きをしてくれます」

「通過するだけ」では役にたたないのでは?

――國澤センター長「ちゃんと役に立っていますので、ご心配なく。腸の環境が悪化して悪玉菌が優勢になると、古参の腸内細菌だけでは対応できなくなります。そんな時に、食物からとる乳酸菌などが一時的にでも悪玉菌駆除に貢献するのです。ただ、あくまで『通過菌』なので、頻繁にとる必要があります」

「通過菌ならでは」の良さもあるのだろうか。

――國澤センター長「これまでの研究から、一言で『乳酸菌』と言っても、それぞれ特徴的な性質があることが分かっています。例えば、『免疫を高める菌』や『腸で免疫の暴走を抑える菌』もいます。さらに最近では、『内臓脂肪を減らす菌』も見つかっています。自分が欲しいタイプの乳酸菌を選ぶことができるのは、一つのメリットだと思います」

そもそも、胃酸は強力だ。胃を通過した乳酸菌は腸まで無事に届くのだろうか。

――國澤センター長「乳酸菌が出す乳酸も『酸』ですので、乳酸菌は酸性の環境には比較的強いと考えられます。ただ、空腹時は特に胃酸が濃く、胃は強い酸性環境になっています。食後の方が胃酸が薄まりますので、乳酸菌が生きた状態で腸まで届きやすいと思います」

食べるタイミングにも注意が必要なのだ。

さまざまな腸内細菌を働かせるためにバランスの良い食事を

――國澤センター長「ただ、花粉症対策としてヨーグルトばかり食べていても、意味がないですよ」

「ヨーグルトを食べ続けていて、花粉症がやわらいだ気がする」という声も聞いたことがあるのだが…。

――國澤センター長「もちろん、乳酸菌によって免疫バランスが整うことはありますが、いくら自分にあったヨーグルトを食べ続けていても、偏った食事ではその効果を十分に発揮することはできません。特に、菌は単独ではなく分業制。菌によって役割が違いますので、さまざまな種類の腸内細菌が必要です。菌の種類によって好みの食べ物も変わりますので、バランスの良い食事が大切なのです。

偏った食事ではなく、いろいろな食材を含む食事にすれば腸内細菌も多様性を持つようになるのかもしれない。

また、『免疫』にとっては『栄養の欠乏』が分かりやすいリスク。例えばビタミンB1という1種類の栄養素が不足するだけで、免疫細胞の量がガクッと減り、ワクチンの効果も減るという動物実験データもあります」

いくら整腸作用があるからといって、ヨーグルトばかり食べていては意味がないようだ。

――國澤センター長「乳酸菌ひとつとっても、ヨーグルトだけではなく味噌汁や漬物などにも含まれます。その他にも納豆菌など発酵食品に使われる菌に、さまざまな特徴があることが分かってきていて、今後さらなる機能の解明が期待されています。

私たちの最近の研究でも、乳酸菌や納豆菌が青魚やアマニ油・エゴマ油などに含まれる『オメガ3脂肪酸』を使ってアレルギーを抑制する物質を作ることを発見しています。これまでは、『腸内細菌だけ』もしくは『食品だけ』を気にしていた方がほとんどだと思いますが、これからは『腸内細菌と食品の組み合わせ』を意識することが重要になりそうです」

「花粉症には〇〇を食べると良い」とちまたではよく言われるが、腸内細菌の働き方は十人十色。同じものを食べても、全員が同じ効果が出てくるというわけではないのだという。自分の腸に合ったものを見つけたら、まずは偏った食べ方を避けて、バランスの良い食事と共に続けることが花粉症対策の近道と言えそうだ。

腸の健康を見直すことは、花粉症などのアレルギー症状の改善だけではなく、さまざまな疾患予防につながることもわかってきた。現代人がおちいりがちな落とし穴もある。詳細はまた次回。

【正しい花粉症対策のルール】

ルール1 すべての人にヨーグルトが良いとは限らない。自分に合った乳酸菌を見つけるべし
ルール2 便は自分に合う乳酸菌かどうかを見極める道しるべ。調子が良さそうなら、2~3週間は続けてチェックすべし
ルール3 菌は分業制で働くので、腸の機能を高めるにはさまざまな種類の腸内細菌が必要。バランスの良い食事を心がけるべし

(図版 増田真一)

國澤 純さん
医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長。1996年大阪大学薬学部卒業。2001年薬学博士(大阪大学)。米国カリフォルニア大学バークレー校への留学後、04年東京大学医科学研究所助手。同研究所助教、講師、准教授を経て、13年より医薬基盤研究所プロジェクトリーダー。19年より現職。一般向け書籍に『善玉酵素で腸内革命』(主婦と生活社)がある。
結城未来
エッセイスト・フリーアナウンサー。テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動も実施している。農林水産省水産政策審議会特別委員でもある。

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