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コロナワクチン義務化 不安と反発に揺れるアメリカ

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ナショナルジオグラフィック日本版

全米で新型コロナウイルスワクチンの接種ペースが鈍り、感染者が増え続けるなか、連邦政府は多くの労働者にワクチン接種か毎週の検査を義務付けることで、ウイルスの広がりを抑え込もうとしている。

バイデン大統領は2021年9月9日、ワクチン接種の義務化を伴う新たな感染対策を発表した。従業員100人以上の企業の社員、連邦政府職員および取引業者の従業員、そして連邦政府から資金を提供されている機関で働く医療従事者に適用され、全米で約1億人の労働者が対象となる。

かなり大規模な措置だが、米国では過去にもワクチンが義務化された前例がある。「ワクチン接種義務は米国的であり、義務化に対する抵抗も米国的です」と米カリフォルニア大学バークレー校の医学史家エレナ・コニス氏は言う。

ディズニー、ウーバー、フェイスブック、グーグル、ネットフリックス、デルタ航空など、すでに新型コロナワクチンを義務化している企業もあり、多くの人が今回の発表を歓迎した。だが、新たな義務化に対する反発もすさまじい。共和党の複数の州知事が違憲だと批判し、共和党全国委員会は政府の提訴も辞さない構えだ。

専門家によると、こうした反発をはじめ様々な障害があるため、今回の接種義務化が新型コロナウイルスの感染拡大を抑制し、最終的に流行を終息させるのにどれだけ貢献するかを予測するのは難しいという。

ワクチン義務化の効果は歴史の裏付けがあるものの、「今回の義務化にどの程度の効果があるかは誰にもわかりません」と米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの上級研究員で緊急医療の専門家であるエリック・トナー氏は言う。「(それでも)義務化しないよりは、接種を受ける人の数が増えるとは思います」

義務化の例とその効果

一部の政治家は、今回のワクチン接種義務化を「米国的でない」と批判しているが、米国でのワクチン接種義務の歴史は建国前までさかのぼることができる。米カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院でワクチン政策を専門とするドリット・ライス教授は次のように語る。

「(米独立戦争[1775~1783年]で)大陸軍を率いたジョージ・ワシントン総司令官は、兵士に天然痘を予防する『人痘接種』を義務付けました。人痘接種はワクチンの前身であり、より危険な方法です。だからといってジョージ・ワシントンを米国的でなかったとするのは正しいとは思いません」

1809年にはマサチューセッツ州が制定した法律によって、州内自治体の保健委員会に、21歳以上の住民に天然痘のワクチン接種を義務付ける権限が与えられた。「19世紀の雇用主は、自分の店や家で働く人を採用する前に、天然痘の予防接種を受けたか過去に感染済みである証拠を示すよう求めることがありました」とコニス氏は説明する。通常は、接種後に腕や脚に残る接種跡が証拠になった。

20世紀に入ると、同州の法律は違憲であるとして訴訟が提起されたが、米最高裁は1905年に同法を支持し、予防接種の義務化は合憲であるという判例を作った。最高裁は1922年にも別の州におけるワクチン接種の義務化を支持し、州当局にはワクチン接種を通学の条件として定める権限があるとした。

現在でも軍人には多くの種類のワクチンが義務付けられており、医療従事者もインフルエンザ、麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹などに対するワクチンの接種が雇用条件として求められることがある。しかし、ほとんどのワクチン接種義務の対象者は学童であり、全50州が入学条件としてワクチンを義務付けている(ミシシッピ州やメーン州のように、宗教上の理由や思想信条による免除を認めていない州もある)。

ワクチンの義務化は、接種率の向上とアウトブレイク(集団発生)の防止という2つの点で大きな効果があるとライス氏は言う。米国の学校がワクチンを義務化したことにより、50州のすべてで小児のワクチン接種率が向上し、予防可能な病気のまん延が抑えられたことが複数の研究からわかっている。

一例を挙げよう。1976年と1977年にアラスカ州で麻疹が大流行したとき、州の保健当局は、麻疹、おたふくかぜ、風疹のワクチンの接種義務を厳格化した。米疾病対策センター(CDC)によると、告知されていた施行日の当日には、州内の8万9109人の生徒のうち7418人がワクチン接種証明を提出できずに帰宅させられた。だが1カ月後には、登校が許可されない生徒がまだ50人ほどいたものの、麻疹の流行は収まっていたという。

インフルエンザワクチンの接種を医療従事者に義務化している病院では、任意接種にしている病院よりも高い接種率を達成している。また、バイデン大統領の発表以前に新型コロナワクチンの接種を義務化していた機関では、すでに一定の成果を上げている。例えば、ワクチン接種を受けた現役軍人の割合は、米国防総省が接種の義務化を発表してから数週間で76%から83%まで増加した。

義務化へのハードル

だが、今回の新型コロナワクチンの義務化は、大流行を即座に収束させるものではなく、効果が保証されているわけでもない。共和党や雇い主たちからは提訴されることになるだろう。また、義務化の対象となる全米1億人の労働者のうち、すでに接種済みの人数ははっきりせず、新たにどれだけの人が接種を受けることになるのか疑問視する専門家もいる。

「(接種の義務化が)もし完全に実施され、適切に施行されるなら非常に効果的な手段であることは間違いありませんが、それには困難が伴います」と米マーシー大学(ニューヨーク州)の疫学者ロッシ・ハサド氏は指摘する。「制度に多くの欠陥を生みだし、パンデミック(世界的大流行)を長期化させるおそれもあります」

また、新型コロナワクチンを接種しても、免疫ができるまでには時間がかかる。そして、感染力の強いデルタ株が米国で主流となっているため、感染拡大を阻止するためには引き続き、手洗い、マスクの着用、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の保持といった医療以外の手段が重要となるだろうとハサド氏は言う。

8月にAP通信・公共問題調査センター(NORC)が実施した世論調査では、米国人の半数以上が雇用者によるワクチン義務化を支持していたが、CNBCがその後に行った世論調査では、ワクチン未接種の回答者の87%が、雇用者から義務付けられても新型コロナワクチンを接種しないと答えた。

人々がどのように感じているかを知り、政策の指針とする上で「世論調査は非常に重要です」と米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センターの客員研究員でワクチン政策の専門家であるアンジェラ・シェン氏は言う。とはいえ、ワクチンを接種しないという選択がもたらす結果に直面すれば、同じ判断に人々が固執するとは限らないとシェン氏は付け加える。「人々が強制されるのを好まないことはわかっていますが、従ってくれれば義務化は非常に効果的な手段です」

今回の義務化についてバイデン政権は、検査を毎週受けるならワクチンを接種しないことを従業員に認める。このように選択の自由があるため、「私たちがワクチン接種義務と呼んでいるものは、基本的にはワクチン接種免除を伴う検査プログラムにすぎません」と米メリーランド大学ボルティモアカウンティー校の公共政策学准教授ゾーイ・マクラーレン氏は指摘する。そのような措置であっても、感染を広める前に患者を把握することで、感染拡大を抑制することができると氏は言う。

もちろん、定期的に検査を受けることよりも、転職や退職を選ぶ人も出るだろう。マクラーレン氏は、「人手不足になるところも出てくるかもしれません」としながらも、その影響は限定的だろうと付け加える。

先週までは、ワクチン接種を受けたくない人は、接種義務のある会社を辞めて、義務のない会社に転職することができた。

しかし、バイデン政権の新たな感染対策は「全米で一律」に適用されるため、「ワクチンを接種したくない人が仕事を見つけるのはかなり難しくなります」とマクラーレン氏は言う。

なお、今回の義務化からは、定年退職者、失業者、専業主婦(夫)、従業員100人未満の企業で働く人など、多くの人が除外されている。

しかし、義務化に効果があるなら、みんなが恩恵を受けられるはずだとマクラーレン氏は言う。「ワクチンは、接種した人を守るだけではなく、周りの人も守ります。義務化の対象にならない人も、接種率の向上による波及効果で恩恵を受けることができます」

(文 JILLIAN KRAMER、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月17日付]

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