
ミレニアル世代のニーズをカバーしたボールペンが、ぺんてるから発売された。「音ハラスメント」の加害者になりたくない20代、30代に向け、ペン先を出し入れする際に発生するノック音を抑制したという。手ごろな価格もあり、ヒットしそうだ。
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ミレニアル世代の心に刺さる筆記具が、2021年12月15日に登場した。切り口が斬新で、発売前から卸売りや小売りの業界から大きな反響が寄せられていた。
ぺんてるの「Calme(カルム)」は、20代から30代が使うスタンダードになることを目指して開発された油性ボールペンだ。ペン先の出し入れ時に発生するノック音を抑えた設計が特徴で、単色タイプ、3色タイプ、多機能タイプの3種類がある。単色タイプの実勢価格は165円(税込み、以下同)で、一般的なボールペンと同程度の水準。3色タイプは同440円、多機能タイプは同550円となっている。

開発を担当したぺんてる製品戦略本部デザイングループ課長の中沢英和氏によれば、もともと静音設計に着目していたわけではなかったという。「開発当初はゼロベースから考え始めた。筆記のための道具とはどういうものかという根本的な部分を探ろうとしたのが出発点」(中沢氏)。中沢氏から相談を受けたプロダクトデザイナーの三宅一成(かずしげ)氏も、「ボールペンではなく、字を書く道具を改めてデザインしようと考え、ふさわしいかたちについて議論を深めた」と話す。
そうして「手に持って書いてみたい」と消費者の心を動かす仕掛けを求めていく過程で中沢氏たちが注目したのが、自身や他人の発する音に敏感になっている、今どきの消費者心理だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、他人と同じ空間で仕事をしたり、勉強したりすることが当たり前になった。しかしミレニアル世代の多くは、そうなる前からボールペンのノック音を気にしていたのだ。それは他人のノック音だけではない。自分が出すノック音が周囲に迷惑を掛けている、つまり、「音ハラ」の加害者になっているのではないかという懸念も多分に含まれる。

そこで他社製のペンも含めた使い比べの調査を実施するなどして深掘りを進め、静音性の高いボールペンに求められている条件を探っていった。この静音機構を設計したぺんてる研究開発本部の野村恭平氏によると、分かったのは「完全無音は求められていないことと、ノックしたという感覚に対するニーズは高いことの2点」。それらのポイントを押さえて、カルムにはタイプに応じた静音機構を搭載した。