1日おきの「断食」ダイエット 効果はどこまである?
1日おきに断食(ファスティング)を行うダイエット法を3週間実践すると、体重は減るものの、通常のカロリー(エネルギー)制限によるダイエットと比べて減量幅に差はなく、総エネルギー摂取量が減らない場合は体重減少効果も得られないことが、英国で行われた無作為化比較試験で明らかになりました。
断食をする日としない日を組み合わせると効果は?
減量や検査値の改善を目指して、断食を取り入れたダイエットを試す人が増えているようです。断食をする日(時間帯)としない日(時間帯)を組み合わせる「間欠的断食」としては、週に何日か断食する方法、1日おきに断食する方法、1日の一定の時間は断食する方法、といったさまざまな方法が提案されており、広く行われています。
これらの間欠的な断食は、均等に毎日の摂取エネルギーを制限するダイエットと比べ、効率の良い減量法なのでしょうか。また、体重の減少とは無関係に健康に良い影響を及ぼすことがあるのでしょうか。
マウスを使った実験では、食事を与えない時間を設けると、エネルギー摂取を減らしたかどうかや、体重が減少したかどうかにかかわらず、代謝面での健康状態(コレステロールや血糖値などの状態)が改善することが明確に示されています。しかしマウスは、ヒトのように1日に数回に分けて食べるという習慣を持っていないため、この知見がそのままヒトに当てはまるとは考えられません。
ヒトを対象とするいくつかの臨床試験の結果をまとめた研究では、間欠的断食は体重減少と健康への利益をもたらすことが示されています。しかし、断食をした場合と同レベルまでエネルギー摂取量を減らせば、断食をしなくても同様の効果が得られることも明らかになっています。
そこで英国の研究者たちは、間欠的断食でしか得られない利益があるのかどうかを検討するために、健康で肥満ではない人たちを登録して、無作為化比較試験を行いました。
肥満のない男女を3つのダイエット法に割り付けて比較
対象は、英国南西部に住む、肥満のない18~65歳の健康な男女です。BMI[注1]は20.5~24.9で、DXA(二重エネルギーX線吸収法)スキャンにより測定された脂肪量指数[注2]が、男性は7.5以下、女性は11.0以下、過去6カ月間体重の増減が3kg以内で安定していた36人を登録しました。
これらの人たちを、以下の3つのダイエット法に無作為に割り付けて、効果を比較しました。
[注1]BMI(体格指数)=[体重(kg)]÷[身長(m)×身長(m)] ※世界保健機関(WHO)の基準では30以上が肥満
[注2]脂肪量指数:FMI(Fat Mass Index)=[体脂肪量(kg)]÷[身長(m)×身長(m)]
断食をしても、減るのは総摂取エネルギーが減った分だけ
参加者には、試験開始前に4週間にわたって日常の食事の内容を記録してもらい、ウェアラブルな心電計兼3軸加速度計を使って身体活動量のモニターも行いました。その後、身体計測や血液検査を受けてから、1週間の休憩を経て、それぞれ12人ずつを0:200法、0:150法、75:75法のいずれかに無作為に割り付けて、3週間継続してもらいました。その間も食事の内容と身体活動量をモニターしました。1日のうちの、断食開始、または食事の開始のタイミングは、15時としました。
3群の間で比較したのは、DXAスキャンを用いて評価した体組成の変化、エネルギーバランス(エネルギー摂取量とエネルギー消費量の差)の変化、食後の代謝の変化などです。
分析の結果、1日おきの断食(0:200法および0:150法)による体重減少は、総摂取エネルギーが減った分を反映するにとどまりました。また、毎日の摂取エネルギーを減らした場合(75:75法)には、体重減少のほとんどが体脂肪量の減少によりもたらされていたのに対し、1日おきの断食の場合には、脂肪の減少量と、除脂肪体重(脂肪以外の体重)の減少量がほぼ等しいことが明らかになりました。除脂肪体重の減少は、筋肉量の減少を反映します。
それぞれの数字をもう少し詳しく見ていきましょう。毎日の摂取エネルギーを減らした75:75群では、3週間で体重が平均1.91kg減少しており、そのうち1.75kgは体脂肪量の減少によるものでした。
一方、0:150群でも体重は1.60kg減少しており、75:75群との差は有意ではありませんでしたが、体脂肪量の減少は0.74kgにとどまり、75:75群との差は有意でした。また、エネルギー制限なしで1日おきに断食した0:200群では、体重も体脂肪量も試験開始前に比べ有意に変化しておらず(減少せず)、0:150群、75:75群との差はいずれも有意でした。
試験開始前と試験期間中のエネルギー消費量を比較したところ、0:200群と75:75群には有意な変化は見られませんでしたが、0:150群では、試験期間中のエネルギー消費が介入前に比べ有意に少なくなっていました。また、身体活動による熱産生量の変化を調べたところ、0:150群では、介入期間中、軽度または中等度の動作が減少したために、熱産生量が有意に少なくなっていたことが明らかになりました。そうした熱産生量の低下は、断食日のみならず食事をした日にも認められました。他の2群には、介入前と比較した熱産生量の変化は見られませんでした。
試験前と試験中の、食後の代謝系の測定値を比較したところ、どのグループにおいても、血糖、インスリン、遊離脂肪酸、グリセロール、総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールなど主要な測定値に変化は認められませんでした。
今回の3週間の介入で、1日おきの断食を行った0:150群と75:75群には同レベルの体重減少が見られました。しかし、0:150群では減少した体重に占める体脂肪量の割合は少なく、これは、身体活動が減少したためと考えられました。また、0:150法は、代謝調節または心血管系の健康に利益をもたらしていませんでした。しかし、長期にわたれば、筋肉量の減少を反映する除脂肪体重の減少が、有害な影響をもたらす可能性もあると考えられました。
以上の結果は、減量または健康利益を得るために1日おきの断食を行おうと考えるのであれば、平均のエネルギー摂取量をそれまでより減らし、エネルギー消費を維持するために身体活動の機会を意識して設ける必要があることを示しています。
論文は、「Science Translational Medicine」に2021年6月16日に掲載されています[注3]。
[注3]Templeman I, et al. Sci Transl Med. 2021 Jun 16;13(598):eabd8034.
[日経Gooday2021年12月17日付記事を再構成]
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
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