日経Gooday

食後高血糖は30~40代に進行し、50代以降に糖尿病へ

メタボリックドミノが食後高血糖を起点として進行し、ドミノ倒しの下流に行くに従って、命に関わる病気へと発展していく。健康寿命を延ばしたいなら、「食後高血糖」のうちに改善することが重要ということが分かる。

では、どのぐらいの年代から食後高血糖に注意すればよいのだろう。山田さんは以下のように説明する。

20代
社会人になるとともに生活習慣が乱れ始め、食生活が変わる

30代
運動量が減り、体重が明らかに増え始める。食後高血糖が起こり始める

40代
高血圧、空腹時高血糖、脂質異常などメタボに関する数値の異常が表れ始める
糖尿病を発症する人も

50代以降
糖尿病を発症するなど症状が悪化していく
動脈硬化や生活習慣病が進行

「20代のうちは多少糖質をとり過ぎていても、体の恒常性を保つ機能が正常に発揮され、上昇した血糖値はインスリンの働きによってすみやかに下がります。しかし、乱れた食生活により糖質摂取過剰が続き、運動量も減ると、30代ぐらいから食後高血糖が起こり始めます。元からあるインスリン分泌の働きも年齢とともに低下するため、40代からメタボに、50代以降は病気の悪化が深刻化していきます。このため、30代のうちに一度、食後高血糖が起こっていないかチェックすることをお勧めします。また、妊娠を考えている人も、妊娠中はインスリン抵抗性が生じて血糖値が上昇しやすく母子ともにトラブルが起こりやすくなるので要注意です」(山田さん)。

問題は、通常の健診で測定する「空腹時血糖値」では、食後高血糖は分からないこと。「文字通り、おなかがからっぽの時に測定した血糖値であって、食後高血糖を検出する検査ではありません。空腹時血糖値に問題が表れるのは、限りなく糖尿病に近い病態になったときなのです」(山田さん)。

しかし、現在は食後血糖値への認識が広まり、薬局やドラッグストアの「検体測定室」で食後血糖値を測ることができる。1検査につき500円ほど、所要時間15分程度で計測が可能だ[注4]

山田さんは、「おにぎり2個と野菜ジュース1パックで、合計糖質量が100gほどになります。このセットを食べた1~2時間後に血糖値測定をすること」を勧める。このとき、血糖値が140mg/dL以上になると「食後高血糖」と想定される。

住んでいる地域や勤務先近くのドラッグストアに「検体測定室」がないかチェックしてみよう。どの年代の人も、ぜひ一度、自分自身の食後血糖値を確かめてみたい。

[注4]人間ドックなどで「経口ブドウ糖負荷試験」を受けても、食後の血糖値を把握することは可能。

ロカボの食事は、骨や筋肉を量・質ともに保護する

ロカボの食習慣は、食後高血糖を防ぐのはもちろん、糖質を控える代わりにおかずをしっかりとる食事となる。筋肉や骨の維持に重要なたんぱく質もしっかりとることができるため、アンチエイジングの面でもいい影響が期待できそうだ。

近年、アンチエイジングにおいて「筋肉」の重要性が指摘されていることは多くの方がご存じだろう。高齢になってたんぱく質の摂取量が減ると、筋肉が衰え、転倒・骨折などのリスクが高まり、最終的に寝たきりなどの要介護状態になる危険性がある。こうした背景もあり、昨年改定された厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」の2020年版では、50歳以上のたんぱく質の目標摂取量の下限が引き上げられている。

つまり、高齢になってもたんぱく質をしっかり摂取したほうがいいわけだが、おかずをがっつり食べてOKのロカボなら、たんぱく質は不足しにくく、筋肉を維持しやすくなるというわけだ。「ロカボの食事は、骨や筋肉を、質・量ともに保護していきます」(山田さん)。

また、糖質の摂取量を抑え、血糖値が高い状態を防ぐことは、最近、老化の要因の1つとしてクローズアップされている「糖化」を抑えることにつながるのもポイントだ。

糖質の摂取量が多く、血糖値が高い状態になると、余った糖は体内のたんぱく質にくっつき、たんぱく質が劣化してAGEs(advanced glycation end products=糖化最終生成物)という老化物質が生成される。「AGEsが体内に蓄積すると、体内の組織のたんぱく質が変性し、機能低下が起こったり、炎症が引き起こされる、ということが明らかになってきました」(山田さん)。

私たちの体の多くはたんぱく質で構成されている。例えば、肌や髪、骨などに含まれるコラーゲン(たんぱく質の一種)に糖化が起こるとコラーゲンは硬くなり弾力を失うという。実際、糖尿病の患者は、高血糖状態が続いているために、体内でもAGEsがたくさん蓄積され、肌の張りが低下し、黄色くくすんだり、シワが定着しやすくなるという。

「髪の毛のこしも失われ、骨ももろくなります。さらに、糖尿病網膜症、腎症、神経障害といった糖尿病の合併症ともAGEsは関連します」(山田さん)

糖化を進める最大の要因は、体内にある過剰な糖質なので、その対策の柱は糖質の摂取を抑えることだ。「ロカボを実践すると、血糖値が上昇しにくくなりますので、効率よくAGEsの産生を防ぐことができます」と山田さんは話す。

◇   ◇   ◇

次回は、ロカボの効果の継続性や、ロカボを楽しみながら続けていく秘訣について聞く。

(ライター 柳本操、グラフ制作 増田真一)

山田悟さん
北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長、食・楽・健康協会代表理事。1970年、東京都生まれ。日本糖尿病学会糖尿病専門医。日々、多くの患者と向き合いながら、食べる喜びが損なわれる糖尿病治療においていかにQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を上げていけるかを研究。2013年に一般社団法人「食・楽・健康協会」を立ち上げる。『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(幻冬舎)ほか著書多数。

「日経Gooday 30+」の記事一覧はこちら

医療・健康に関する確かな情報をお届けする有料会員制WEBマガジン!

『日経Gooday』(日本経済新聞社、日経BP社)は、医療・健康に関する確かな情報を「WEBマガジン」でお届けするほか、電話1本で体の不安にお答えする「電話相談24」や信頼できる名医・専門家をご紹介するサービス「ベストドクターズ(R)」も提供。無料でお読みいただける記事やコラムもたくさんご用意しております!ぜひ、お気軽にサイトにお越しください。