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「メタボリックドミノ」とは、慶應義塾大学の伊藤裕教授が提唱した概念だ。生活習慣病といわれる肥満、高血圧、食後高血糖、脂質異常症などの危険因子が一人の患者に集積していくことを「メタボリックシンドローム」という。これらの危険因子が集積すると、虚血性心疾患(心臓に栄養を送る血管が細くなったり詰まったりする状態)や脳血管障害(脳に栄養を送る血管が細くなったり詰まったりする状態)を発症し、死に至ることになる。最上流には生活習慣があり、肥満が上流に存在する(下図を参照)。それぞれの危険因子が時系列とともにドミノ倒しのように連鎖していくことを「メタボリックドミノ」と呼んだ。

伊藤裕教授が提唱する「メタボリックドミノ」(日本臨床 2003;61:1837-43をもとに作成)

山田さんはこのメタボリックドミノの源流に糖質の摂取過剰、そこからくる食後高血糖がある、とする「メタボリックドミノ 山田version」を提唱している(下図)。

図の最上流にある「糖質摂取過剰」からどのようにメタボリックドミノが倒れていくのか。山田さんは以下のように説明する。

①糖質のとりすぎによって、食後高血糖が起こる
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②食後高血糖を抑えるためにインスリンをたくさん出さなければならず、大量に出たインスリンによって血糖値が急降下して急激な「飢餓感」が起こる。なお、食後高血糖が長年続くと空腹時血糖値も上昇、糖尿病の発症につながる
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③飢餓感によって空腹感が増し、食べ過ぎる、という食習慣が定着する
 ↓
④肥満、脂質異常症、高血圧などのメタボリックシンドロームが悪化していく

これまでは、食べ過ぎ(=カロリーのとり過ぎ)がエネルギーの余剰を招き、脂肪の蓄積や内臓肥満を引き起こし、内臓脂肪からインスリンの働きを邪魔する物質が分泌されて高インスリン血症、さらには食後高血糖を引き起こす、という考えが主流だったという。このため、医療現場でも長きにわたって「カロリー制限」が指導されてきた。

一方で、最近になって上記のメカニズムとは異なる、興味深い肥満のメカニズムが提唱されたと山田さんは話す。「2018年に栄養疫学研究者であるハーバード大学のデビッド・ルードヴィヒ教授が肥満のメカニズムについて新たな考察を提示しました[注3]。彼の考察でも、『糖質のとりすぎが出発点となり、空腹感が増して食べ過ぎて肥満となる』と示されています。この考え方によって、ロカボの食事がなぜ肥満を改善し、おなかいっぱいまで食べても減量が可能になるかを説明できるのです」(山田さん)。

(JAMA Intern Med. 2018;178:1098-1103.より改変)

私たちは忙しいときなどに、コンビニのおにぎりだけを2、3個食べるような食事をしてしまいがちだが、糖質を過剰にとるそんな生活習慣を変えないと、さまざまな疾病を招くことになるのだ。

[注3]JAMA Intern Med. 2018 Aug 1;178(8):1098-1103.

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食後高血糖は30~40代に進行し、50代以降に糖尿病へ