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ロカボで肥満・血糖値対策 「昼間の眠気」撃退効果も

「食後高血糖」を抑えてアンチエイジング(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

どんぶりごはんや麺類を食べることが多い、気がつくと甘いものを口にしている――そんな習慣は食後高血糖を招き、全身のメタボ化、老化を促進していく要因に。食後高血糖を防ぐ食事法である緩やかな糖質制限食=ロカボは、ダイエットやメタボ改善だけでなく、「睡眠の改善」、具体的には睡眠時無呼吸症候群を改善に導く可能性もあることが分かった。研究を行った北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長の山田悟さんに聞いた。

規則正しい生活や運動が難しいシフトワーカーを対象に研究

新型コロナ感染症の重症化リスクが高い基礎疾患として「糖尿病」が話題に上り、血糖値を適切に維持することは大切だということを再認識した人も多いだろう。

近年では、がんや認知症とも関わりが深いことが明らかになっている糖尿病。糖尿病専門医として糖尿病治療に携わりながら「緩やかな糖質制限=ロカボ」を提唱し、糖尿病を発症前から食い止めようと研究を行っているのが山田悟さんだ。

炭水化物を意味する「カーボハイドレート(carbohydrate)」に、低い=「low」を組み合わせて作られた言葉「ロカボ」。糖質を一切抜くような極端な糖質制限とは異なり、1食あたりの糖質量を20~40g(間食では10g)とする食べ方のことをいう。このように糖質の摂取量を「緩く」抑えるというのがロカボのポイントだ。

「一般的な日本人の食生活では1日あたり300gの糖質をとっています。ロカボ基準ではその半分以下の70~130gが1日の適正糖質量、としています」(山田さん)

山田さんは、日本人の成人の半数以上が糖尿病予備軍である「食後高血糖」の状態になっていると推測する。食後の血糖値が140mg/dL以上、と極端に高くなるのが食後高血糖だ。「糖質摂取の多い人は、食後血糖が異常な数値にまで跳ね上がり、その後に下がる、というふうに乱高下します。この乱高下が血管を傷め、動脈硬化を促進していくのです」(山田さん)。

ロカボでは、食事ごとの糖質量を40g以内に収めることで、この食後高血糖が起こらない状態を作っていく。気を付けるのは糖質だけで、おかずなどはおなかいっぱい食べていいため、「我慢の食事」にならず続けやすい、というのも大きなメリットだ(詳しくは後半の囲み記事を参照)。

山田さんは、メタボリックシンドロームまたは肥満のある人が日ごろの食事を「ロカボ食」に替えることによって健康度を高める3カ月プログラム「ロカボチャレンジ」を2015年に開始し、このほどその結果を論文にまとめて発表した。

対象となったのは、メタボリックシンドロームまたは肥満のタクシー会社の運転手とコンビニエンスストア従業員101人だ。

「健康になりたい、というときに、どうしても『手のこんだ食事をとらなきゃ』とか『運動しなきゃ』と思いがちです。しかし、タクシー運転手さんやコンビニの店員さんは、シフト勤務で規則的な食生活そのものが難しく、短時間にパパッと食事をとるしかなく、運動習慣を作ることも難しい。実は働き盛りの人はほとんどがこのような状況ではないでしょうか。そこで、生活環境を変えられなくてもコンビニで買える簡単な食事でロカボを実践していただき、その結果を見ることにしました」(山田さん)

被験者は「ロカボ」に関するセミナーを受け、その後3カ月間、毎日食事記録をつけ、週1回の体重測定を行い、週1回の食事改善アドバイスを受けた。また、介入前後の血液、睡眠の質を評価したところ、以下のような結果が得られた(異常値を示していた参加者を対象にサブグループ解析をした結果より)。

●平均体重が有意に減少  85.0→83.0kg
●肥満指数のBMIが有意に低下 28.0→27.2
●HbA1cが有意に減少  6.7→5.8% (6.0以上だった人の平均値)
●LDLコレステロールが有意に低下 133→120 mg/dL
●無呼吸低呼吸指数(AHI)が有意に低下 25.1→17.2

体重やメタボに関わる数値が減少したのは予想通りだったが、予想外だったのは「睡眠の改善」だったという。ロカボの実践により糖質の摂取量が少なくなることから、体重やメタボに関する項目が改善したのは「予想通り」だと思われた人は多いだろう。実際、山田さんもこうした効果は予想していたそうだ。そんな山田さんが予想外だったのが、最後の項目の「睡眠の改善」だったという。

無呼吸低呼吸指数(AHI)とは
睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、この指数によって睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を分類する。5以上15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症と定義される。

昼間の眠気が減りパフォーマンスがアップ

研究当初は、体重減少効果や脂質の指標など、メタボ改善効果を確かめようとしていた山田さんだが、「この3カ月間のロカボチャレンジは、参加者を替えて合計6回行ったのですが、1~2回目のときに参加者の方から『眠気がなくなり昼寝が必要なくなった』という声が多く聞かれたのです。そこで、指先にセンサーを入れるだけで睡眠時無呼吸症候群の指標を簡易チェックできる器械で調べてもらったところ、無呼吸低呼吸指数(AHI)が大きく改善していました。この研究は前後比較しか行っておらず、無作為比較試験のように科学的信頼度の高い研究とはいえないのですが、それでもこれほどまでの改善効果が得られたことには正直言って驚きました」(山田さん)。

ロカボで睡眠時の無呼吸低呼吸指数が改善した

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に舌の根元や軟口蓋(食べ物が鼻腔に入るのを防ぐ柔らかい組織)が喉の奥に落ち込み気道を塞ぐことにより、一時的に呼吸が止まる病気のことをいう。無呼吸状態になりしばらくして呼吸が再開するときに、大きないびきが起こるのが特徴だ。運転中の眠気による死亡事故などでも社会問題化しているので、聞いたことがあるという人も多いだろう。

「かつては肥満の中年男性がかかりやすい病気、と言われていましたが、肥満でなくてもあごがほっそりした人は男女関係なく気道が塞がりやすくなり発症リスクが高いことが分かってきました」(山田さん)

睡眠時無呼吸症候群があると、夜間に寝ているつもりでも眠りが浅くなるため、睡眠の質が悪くなり、日中に強い眠気や倦怠(けんたい)感が起こる。また、無呼吸があると血液中の酸素濃度が低下するために脳や体に供給される酸素濃度が低くなる。少ない酸素を全身に送るために心臓や血管に負担がかかり、動脈硬化や生活習慣病リスクが2~3倍高くなることが近年の研究によって分かってきた。たかがいびきの病気と甘く見る人もいるかもしれないが、実は全身の老化や突然死にもつながる危険な病気なのだ。

「被験者のタクシー運転手さんにアンケートをとったところ、ロカボの食生活に変えることによって運転中の眠気が減った人が3分の2を占めました。昼寝が必要なくなったことで、ハンドルを握っている時間が伸び、売り上げが上がった、と大変喜んでいただきました。食生活に気を付けたくてもお弁当などを作れる状況ではない方がコンビニ食など手軽に実践できる方法で健康になれた、そして生活の満足度が高まった、ということがなによりもうれしい収穫でした」(山田さん)

ロカボ実践によって昼間の眠気が減った理由について、山田さんは次のように説明する。

「夜の睡眠の質が改善したことにより、昼間も元気に活動できること、また、食後高血糖の後の反応性低血糖による眠気が起こらないことの2つが効いていると考えています」(山田さん)

反応性低血糖とは、食後の高血糖の後にリバウンドとして起こる低血糖のこと。糖質過多な食事で食後高血糖を起こすと、昼食後に強烈な眠気が襲ってくるケースが多いが、この反応性低血糖による影響も考えられるという。

「食後に血糖値が急上昇した後、急降下するときに反応性低血糖が起こり、眠くなります。また、高血糖によりオレキシンという覚醒物質の働きが妨げられている、という可能性も考えられています」(山田さん)

「我慢の食事」ではないからリバウンドせず継続できる

 メタボに関わる健康診断の数値で異常値を指摘されたり、体重を落とさなければ、というとき、これまでは「カロリーを制限する」あるいは「おなかいっぱいに食べてはいけない、腹八分目にとどめなければいけない」と考えた人が多いのではないだろうか。
 「しかし、我慢を強いる食事制限はストレスになり、必ず心が折れる瞬間が訪れます。かつて私もカロリー制限によってその経験をしました。リバウンドし、前よりも体重は増え、血液の数値も悪化してしまう。つまり、食べるのを我慢しなさい、という食事指導は、分かっちゃいるけど守ることができない"絵に描いた餅"なのです。これまでの糖尿病患者さんはこういった食事指導をされ、もう明日からは好きな食事ができない、と絶望に近い思いを抱く人も少なくありませんでした」(山田さん)
 しかし、ロカボでは血糖値を上げる食品や飲み物に注意すれば、「おかずは好きなだけ食べてよい。おなかいっぱい満足するまで食べてよい。お酒も飲んでいい」食事法だ。
 ロカボチャレンジのアンケート調査によると、被験者は、ロカボ実践中はおにぎりや弁当のごはんを減らし、アイスクリーム、果汁入りの酎ハイ、インスタント麺を控える、という行動をし、低糖質パンの主食を増やし、お酒は糖質ゼロの発泡酒やハイボールにしたという。
 「ロカボでは内臓脂肪が減るのでおなか回りに変化が出やすいのです。ロカボチャレンジでは、無理に運動はしなくてもいいですよ、とお伝えしていたのですが、体が軽くなり、見た目もちょっとかっこ良くなり、前向きな気持ちになった結果、『ウオーキングを始めました』とおっしゃる方も現れました」(山田さん)
 ロカボチャレンジで指導された食事ルールは、以下のようなもの。ロカボが決して「我慢の食事」ではなく、おいしさを楽しみながら継続できることが分かるだろう。

●1食あたりの糖質の目安量=20~40gを守る
ごはんなら軽く半膳、食パンは8枚切り1枚。うどんはゆで麺半玉を目安にする。主食の量をこのくらいにすれば、調味料や野菜に含まれる糖質を足しても40g以内に収まる。

●おかずはしっかり食べる。主食は最後に食べる「カーボラスト」で
おかずに含まれるたんぱく質と脂質、食物繊維は、血糖値上昇にブレーキをかけ、満腹感を長続きさせるので、おなかいっぱい、しっかり食べてよい。これらのおかずを食べた最後に主食(糖質)をとる「カーボラスト」にすると、控えめの量でも満足できる。毎食満足することが、ストレスをためない秘訣。

●スイーツもお酒も糖質量がオーバーしなければOK!
大福などの和菓子は内側も外側も糖質でできているので小サイズのものを。洋菓子は生クリームやバター、クリームチーズなどの脂質によって血糖値上昇が抑えられる。市販の低糖質おやつも利用しよう。お酒は、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ジンなどの蒸留酒なら糖質ゼロ。ワインも糖質量は少なめで、白・赤いずれかを3杯飲んでも糖質は約5g未満。

◇   ◇   ◇

次回は、現代人の多くに起こっているとされる食後高血糖がさまざまな病気の引き金になっていく「メタボリックドミノ」のメカニズム、また、ロカボとアンチエイジングの関係について聞いていく。

(ライター 柳本操、グラフ制作 増田真一)

山田 悟さん
北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長、食・楽・健康協会代表理事。1970年、東京都生まれ。日本糖尿病学会糖尿病専門医。日々、多くの患者と向き合いながら、食べる喜びが損なわれる糖尿病治療においていかにQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を上げていけるかを研究。2013年に一般社団法人「食・楽・健康協会」を立ち上げる。『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(幻冬舎)ほか著書多数。

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