日経Gooday

「夜の睡眠の質が改善したことにより、昼間も元気に活動できること、また、食後高血糖の後の反応性低血糖による眠気が起こらないことの2つが効いていると考えています」(山田さん)

反応性低血糖とは、食後の高血糖の後にリバウンドとして起こる低血糖のこと。糖質過多な食事で食後高血糖を起こすと、昼食後に強烈な眠気が襲ってくるケースが多いが、この反応性低血糖による影響も考えられるという。

「食後に血糖値が急上昇した後、急降下するときに反応性低血糖が起こり、眠くなります。また、高血糖によりオレキシンという覚醒物質の働きが妨げられている、という可能性も考えられています」(山田さん)

「我慢の食事」ではないからリバウンドせず継続できる

 メタボに関わる健康診断の数値で異常値を指摘されたり、体重を落とさなければ、というとき、これまでは「カロリーを制限する」あるいは「おなかいっぱいに食べてはいけない、腹八分目にとどめなければいけない」と考えた人が多いのではないだろうか。
 「しかし、我慢を強いる食事制限はストレスになり、必ず心が折れる瞬間が訪れます。かつて私もカロリー制限によってその経験をしました。リバウンドし、前よりも体重は増え、血液の数値も悪化してしまう。つまり、食べるのを我慢しなさい、という食事指導は、分かっちゃいるけど守ることができない“絵に描いた餅”なのです。これまでの糖尿病患者さんはこういった食事指導をされ、もう明日からは好きな食事ができない、と絶望に近い思いを抱く人も少なくありませんでした」(山田さん)
 しかし、ロカボでは血糖値を上げる食品や飲み物に注意すれば、「おかずは好きなだけ食べてよい。おなかいっぱい満足するまで食べてよい。お酒も飲んでいい」食事法だ。
 ロカボチャレンジのアンケート調査によると、被験者は、ロカボ実践中はおにぎりや弁当のごはんを減らし、アイスクリーム、果汁入りの酎ハイ、インスタント麺を控える、という行動をし、低糖質パンの主食を増やし、お酒は糖質ゼロの発泡酒やハイボールにしたという。
 「ロカボでは内臓脂肪が減るのでおなか回りに変化が出やすいのです。ロカボチャレンジでは、無理に運動はしなくてもいいですよ、とお伝えしていたのですが、体が軽くなり、見た目もちょっとかっこ良くなり、前向きな気持ちになった結果、『ウオーキングを始めました』とおっしゃる方も現れました」(山田さん)
 ロカボチャレンジで指導された食事ルールは、以下のようなもの。ロカボが決して「我慢の食事」ではなく、おいしさを楽しみながら継続できることが分かるだろう。

●1食あたりの糖質の目安量=20~40gを守る
ごはんなら軽く半膳、食パンは8枚切り1枚。うどんはゆで麺半玉を目安にする。主食の量をこのくらいにすれば、調味料や野菜に含まれる糖質を足しても40g以内に収まる。

●おかずはしっかり食べる。主食は最後に食べる「カーボラスト」で
おかずに含まれるたんぱく質と脂質、食物繊維は、血糖値上昇にブレーキをかけ、満腹感を長続きさせるので、おなかいっぱい、しっかり食べてよい。これらのおかずを食べた最後に主食(糖質)をとる「カーボラスト」にすると、控えめの量でも満足できる。毎食満足することが、ストレスをためない秘訣。

●スイーツもお酒も糖質量がオーバーしなければOK!
大福などの和菓子は内側も外側も糖質でできているので小サイズのものを。洋菓子は生クリームやバター、クリームチーズなどの脂質によって血糖値上昇が抑えられる。市販の低糖質おやつも利用しよう。お酒は、ウイスキー、焼酎、ウオッカ、ジンなどの蒸留酒なら糖質ゼロ。ワインも糖質量は少なめで、白・赤いずれかを3杯飲んでも糖質は約5g未満。

◇   ◇   ◇

次回は、現代人の多くに起こっているとされる食後高血糖がさまざまな病気の引き金になっていく「メタボリックドミノ」のメカニズム、また、ロカボとアンチエイジングの関係について聞いていく。

(ライター 柳本操、グラフ制作 増田真一)

山田 悟さん
北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長、食・楽・健康協会代表理事。1970年、東京都生まれ。日本糖尿病学会糖尿病専門医。日々、多くの患者と向き合いながら、食べる喜びが損なわれる糖尿病治療においていかにQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を上げていけるかを研究。2013年に一般社団法人「食・楽・健康協会」を立ち上げる。『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(幻冬舎)ほか著書多数。

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