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ビートルズのライブ&秘密満喫 配信『Get Back』

『ザ・ビートルズ:Get Back』の見どころ(前編)

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

1969年のビートルズを当時のフィルムで描いた『ザ・ビートルズ:Get Back』が、定額制配信サービス「ディズニープラス」で配信中だ。3回に分けられた作品の配信時間は合計7時間50分にも及ぶ。映画『ロード・オブ・ザ・リング』などで知られるピーター・ジャクソン監督が手がけたことでも話題になっているこの作品の見どころはどこにあるのか。ビートルズ研究家である広田寛治氏が解説する。

◇  ◇  ◇

映画『ロード・オブ・ザ・リング』でアカデミー賞を受賞したピーター・ジャクソン監督が手がけていた『ザ・ビートルズ:Get Back』が、3年の歳月を経てついに完成した。パンデミックの影響で計画は二転三転し、当初予定されていた劇場映画ではなく、合計7時間50分に及ぶ長編ドキュメンタリー3部作として仕上げられた。かなり長い作品だが、体力に自信のある方なら3部作のすべてを1日で一気に鑑賞してしまうことも可能だろう。

この作品で描かれたビートルズの「ゲット・バック・セッション」の全体像や背景は、記事「特別映像から読み解く『ザ・ビートルズ:Get Back』」でも3回にわたって紹介している。ここでは、これからこのドキュメンタリーを鑑賞しようという方に役立つ基本情報を整理しながら、この作品がこのような形で公開されたことの意義について考えてみたい。

かつての一体感を取りもどすプロジェクト

69年1月に行われた「ゲット・バック・セッション」は、ビートルズがライブバンドとしての一体感を取り戻そうと、新しいアルバムをライブ録音し、その模様をテレビで披露しようと考えたところから始まったプロジェクトだ。ライブ実現までの過程をテレビ・ドキュメンタリーにすることも想定していたため、そのセッションのほぼ全貌が録音・録画されていた。

その映像の一部は、70年に劇場映画『レット・イット・ビー』として公開されていた。ビートルズ解散が公になった時期と重なったこともあって、セッション中のメンバー間の衝突が解散の大きな原因の1つになったと、これまでは語り継がれてきた。

ピーター・ジャクソン監督は、50年ほど倉庫に眠り続けていた当時の60時間分のフィルムと150時間分の音声をすべて見直すなかで、その「定説」に疑問を抱き、このセッションでのビートルズが創作意欲にあふれていたことにも、より強い光を当て、新たに3部作のドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』を作り上げたのだ。

この3部作は、各パートごとに見どころが満載で、しかも全編にビートルズの名曲がちりばめられており、音楽ファンを飽きさせることはない。だが、4人のセッションと会話を軸に展開され、余計なナレーションや解説はほとんど入らない。それ故に、常に揺れ動くこのプロジェクトの流れをしっかり頭に入れておかないと、それぞれのセッションの魅力的な演奏や仲間内の短い言葉で交わされる会話の意味を味わう余裕がなくなってしまうだろう。そこでまずは3部作で描かれる作品の概要を、改めて整理しておこう。

【パート1(157分)】セッション1日目~7日目
 パート1で描かれるのは、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのセッション開始からジョージ・ハリスン離脱までの7日間(1月2日~10日)だ。
 セッション開始時点の計画は、18日までに新曲14曲を完成させ、それを19日と20日の2回にわたって観客の前でライブ・レコーディングし、そのパフォーマンスをテレビ特番として放送するというものだった。またリハーサルも撮影し、テレビ特番で使われることになっていた。
 そのためにビートルズは新年早々の2日にトゥイッケナム・フィルム・スタジオでセッションを開始する。
 だがメンバー4人の意思は統一されておらず、セッションが進むにつれメンバー間の意見の相違が顕在化。開始から7日目の10日にジョージが脱退を宣言して、スタジオを去ってしまう。12日にメンバー4人が集まって会合が持たれるが、結論は出ないままプロジェクトは暗礁に乗り上げてしまう。
【パート2(174分)】セッション8日目~16日目
 パート2では、ジョージが復帰し、セッション再開からアップル屋上でのライブが提案されるまで9日間(1月13日~25日)が描かれる。
 ジョージがいなくなった後、残されたメンバー3人で13日にセッションを再開するが、どこか投げやりで遅々として進まない。
 ようやく15日にジョージを交えた4人で話し合いがもたれ、テレビ特番は棚上げし、場所をアップル・スタジオに移し、新しいアルバムのレコーディングを計画どおりライブ形式で行うことで合意。ジョージが復帰することになり、20日にセッションを再開する。
 メンバー間の意見の相違はこの時期にもしばしば顕在化するが、目的が定まったことでセッションは見違えるようになり、ライブでの演奏曲、アルバム収録曲が次々と仕上げられていく。そしてアップル屋上でのライブを行うことが25日に提案され、そのための準備が開始される。ただ、メンバーの意思はまだ統一されないままだ。
【パート3(139分)】セッション17日目~22日目
 パート3で描かれるのは、ライブ録音の準備が急ピッチで進み、アップルの屋上とスタジオでライブが行われる6日間(1月26日~31日)だ。
 アルバムの録音と、いまだに実現が微妙な屋上ライブをめざし、リハーサルが急ピッチで進む。テレビ特番に未練を残すポール・マッカートニーを横目に、ジョン・レノンの決断で30日にアップル屋上でルーフトップ・コンサートを決行。翌31日にはアップル・スタジオで残りの曲をライブ録音。プロジェクトは幾多の危機を乗り越え成功裏に一段落する。
 この過程を収めた録音テープと映像から、二転三転しながら、最終的にはアルバム『レット・イット・ビー』、そして映画『レット・イット・ビー』(70年公開)が作られることになる(その過程は記事「映画『レット・イット・ビー』の誤解、新作への期待」を参照)。

以上がこのドキュメンタリー作品の大まかな流れだ。これを押さえておけば、心理劇のように複雑な人間模様を交えて展開するゲット・バック・セッションを、まるでタイムマシンに乗って、69年のスタジオに潜入したかのようなリアルさで、手に汗握りながら楽しむことができるはずだ。

ビートルズ・サウンドの謎解きを楽しむ

このドキュメンタリー最大の見どころは、パート3で描かれる最後のアップル屋上での圧倒的なライブ演奏にある。66年8月にライブ活動を停止してから29カ月というブランクをまったく感じさせない演奏を、ビートルズはほとんどぶっつけ本番で披露するのだ。42分間というそのほぼ全容を、マルチスクリーンを駆使して再現したアップルビルのルーフトップでの演奏は、ビートルズの残されたライブ映像としても一、二を争う迫力満点の仕上がりになっている。忙しくてなかなか7時間50分の作品をすべて見ることはできないという方は、まずはこのライブが収録されたパート3を鑑賞するだけでも、今や歴史的存在となったビートルズというロックバンドの実力と魅力を十分に堪能することができるだろう。

だが、このライブの感動は、パート1とパート2で描かれた、そこに至るまでの過程を知ることで、より大きなものとなる。7時間50分の映像のなかには、ビートルズの魅力と実力を知ることのできるさまざまな見どころがぎっしりと詰まっているからだ。詳細は見てのお楽しみだが、ここでは以下の3点を挙げておきたい。

見どころの1つは、メンバー4人が与えられた短い期間でそれぞれのやり方で取り組む曲作りの様子を目撃できることだ。アルバム『レット・イット・ビー』に収録されずに、のちに『アビイ・ロード』に収録される曲や、のちにソロ作品として発表される曲のお披露目シーンもたっぷり見ることができる。また、未発表のままになっていた若き時代のレノン=マッカートニー作品、気分転換に演奏される古いビートルズ・ナンバーや50年代のオールディーズなども楽しむことができる。

2つ目は、ビートルズのサウンドメイキングの手法を目の当たりにできることだ。曲が完成に近づくと、4人はそれぞれの楽器の役割やコーラスの入れ方などを議論しながら、その曲にふさわしいサウンドやコーラスを決めていく。現代の音楽シーンの礎を築いたグループのサウンド作りの過程を、リアルな映像と磨き上げられたサウンドでたっぷりと体験できるのだ。

そして3つ目は、刻々と変化するビートルズのメンバー4人の心もようと揺れ動く人間関係を、まるでその場に出くわしたかのような感覚で体験できることだ。背景説明や効果音のような演出がないこともあり、ふとした会話や曲解釈をめぐるすれ違いなどから、まるでリアルな心理劇を見るかのような緊迫感が伝わってくる。

バンドが危機を迎えたとき、良き時代のバンドに戻そうと奮闘するポール、自分ももっと活躍できるバンドにしようと懸命に努力するジョージ、才能を買われて迎え入れられたもののライブ活動停止で活躍の場が限られ与えられた仕事に専念しようとするリンゴ・スター、そしてバンドから心が離れそうになりながらもリーダーとしてなんとかプロジェクトを成功させようとするジョン。危機を迎えた組織のなかで、誰もがいずれかの立場で経験したことのあるような人間ドラマが、ビートルズの4人が主役で、まさにリアルな映像で目の前で展開されるのだ。

もちろんビートルズのメンバーは、このセッションのほぼすべての演奏と会話が撮影され、録音されていることを知っていた。つまりいかなる場面でも完全な「素顔」を見せているわけではなく、大人の対応をしているのだ。それゆえに、その表情の背後に隠された心の動きが深みを増しているとも言えるだろう。

逆に言えば、もしカメラが入っていなければ、メンバー全員がよりネイキッドな本音をぶつけ合い、このドキュメンタリーに残されたような人間の奥底の心理を見せることもなく、このプロジェクト自体も早い時期に崩壊し、そのままビートルズは解散していたのかもしれない。そんなスリリングで一触即発な関係のなかで、アップル屋上ライブが実現し、これがビートルズ最後のライブパフォーマンスとして歴史に刻まれたのだ。そして、その一部始終をこのドキュメンタリー3部作でじっくりと体験できるのだ。

果たしてこのセッションは、旧作映画『レット・イット・ビー』で評されてきたようなビートルズ解散への序曲だったのか、あるいはピーター・ジャクソン監督が感じた創作意欲あふれるバンドのセッションで「解散の原因ではなかった」のか、あるいはそのどちらとも言えるビートルズの分岐点だったのか、それを自分自身の目でしっかりと確認できるのだ。

◇  ◇  ◇

後編では、広田氏が感じたビートルズファンならではの注目点を紹介する。

広田寛治
 1952年愛媛県松山市生まれ長崎県長崎市育ち。山梨県立大学講師などを経て、作家・現代史研究家。日本文芸家協会会員。『大人のロック!』(日経BP/ビートルズ関連)、文藝 別冊(河出書房新社/ロック関連)、ムック版『MUSIC LIFE』(シンコーミュージック/ビートルズ関連)などの執筆・編集・監修などを担当。主な著書に『ロック・クロニクル/現代史のなかのロックンロール(増補改訂版)』(河出書房新社)などがある。

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