ビートルズのライブ&秘密満喫 配信『Get Back』『ザ・ビートルズ:Get Back』の見どころ(前編)

日経エンタテインメント!

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1969年のビートルズを当時のフィルムで描いた『ザ・ビートルズ:Get Back』が、定額制配信サービス「ディズニープラス」で配信中だ。3回に分けられた作品の配信時間は合計7時間50分にも及ぶ。映画『ロード・オブ・ザ・リング』などで知られるピーター・ジャクソン監督が手がけたことでも話題になっているこの作品の見どころはどこにあるのか。ビートルズ研究家である広田寛治氏が解説する。

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映画『ロード・オブ・ザ・リング』でアカデミー賞を受賞したピーター・ジャクソン監督が手がけていた『ザ・ビートルズ:Get Back』が、3年の歳月を経てついに完成した。パンデミックの影響で計画は二転三転し、当初予定されていた劇場映画ではなく、合計7時間50分に及ぶ長編ドキュメンタリー3部作として仕上げられた。かなり長い作品だが、体力に自信のある方なら3部作のすべてを1日で一気に鑑賞してしまうことも可能だろう。

『ザ・ビートルズ:Get Back』では有名なルーフトップ・コンサートのほぼ全容を見ることができる (C)2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

この作品で描かれたビートルズの「ゲット・バック・セッション」の全体像や背景は、記事「特別映像から読み解く『ザ・ビートルズ:Get Back』」でも3回にわたって紹介している。ここでは、これからこのドキュメンタリーを鑑賞しようという方に役立つ基本情報を整理しながら、この作品がこのような形で公開されたことの意義について考えてみたい。

かつての一体感を取りもどすプロジェクト

69年1月に行われた「ゲット・バック・セッション」は、ビートルズがライブバンドとしての一体感を取り戻そうと、新しいアルバムをライブ録音し、その模様をテレビで披露しようと考えたところから始まったプロジェクトだ。ライブ実現までの過程をテレビ・ドキュメンタリーにすることも想定していたため、そのセッションのほぼ全貌が録音・録画されていた。

その映像の一部は、70年に劇場映画『レット・イット・ビー』として公開されていた。ビートルズ解散が公になった時期と重なったこともあって、セッション中のメンバー間の衝突が解散の大きな原因の1つになったと、これまでは語り継がれてきた。

ピーター・ジャクソン監督は、50年ほど倉庫に眠り続けていた当時の60時間分のフィルムと150時間分の音声をすべて見直すなかで、その「定説」に疑問を抱き、このセッションでのビートルズが創作意欲にあふれていたことにも、より強い光を当て、新たに3部作のドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』を作り上げたのだ。

この3部作は、各パートごとに見どころが満載で、しかも全編にビートルズの名曲がちりばめられており、音楽ファンを飽きさせることはない。だが、4人のセッションと会話を軸に展開され、余計なナレーションや解説はほとんど入らない。それ故に、常に揺れ動くこのプロジェクトの流れをしっかり頭に入れておかないと、それぞれのセッションの魅力的な演奏や仲間内の短い言葉で交わされる会話の意味を味わう余裕がなくなってしまうだろう。そこでまずは3部作で描かれる作品の概要を、改めて整理しておこう。