オールナイトニッポン0佐久間宣行が知った音声の魅力ラジオ&音声メディア黄金時代(5)

日経エンタテインメント!

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テレビ東京で『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などのバラエティ番組のプロデューサーを務める佐久間宣行氏。彼は2019年に現役のテレビ局社員でありながら、『オールナイトニッポン0』(ニッポン放送)のパーソナリティーに抜てき。お笑いをはじめとしたエンタテインメント全般を熱く語るトーク、45歳のおじさん視点ならではの悲喜こもごものエピソードが幅広い層にウケて、現在3年目に突入する。

1975年11月23日生まれ、福島県出身。早稲田大学を卒業後、99年にテレビ東京に入社し、2005年に『ゴッドタン』、19年に『あちこちオードリー』を立ち上げ、プロデューサー兼演出を務める。今秋には、自身が出演する初の冠番組『サクマ&ピース』(福島中央テレビ)が放送された

今年3月にはテレビ東京を退社して独立。フリーのプロデューサーとして、現在はYouTubeのチャンネルなども手掛ける。さらに、ラジオだけではなくポッドキャストをはじめとした音声コンテンツ全般にも精通。ポッドキャストの年間アワード「JAPAN PODCAST AWARDS」の審査員も務める。様々なメディアで発信を続ける佐久間氏は、近年の“音声熱への高まり”についてどう見ているのだろうか。

「音声コンテンツ市場は群雄割拠の時代に突入していて、今はすごくエキサイティングな状態にある気がしています。スマートフォンでラジオが聴ける『radiko』の台頭で、ラジオは再び脚光を浴びていますし、新しい音声メディアも次々に誕生している。

例えば『Voicy』では、起業家やインフルエンサーたちが学びになることを気軽に話してくれるので、サラリーマンにはためになるだろうし、『Audible』のような、書籍を音で聴くオーディオブックも伸びていますよね。『Clubhouse』はリリース当初に比べると下火になっていますが、いろんな人が手軽に参加できる音声チャットの可能性を教えてくれた。いずれは定着するものが出てくると思います。

いろんな番組が生まれているポッドキャストの魅力でいうと、時間の制限がないことと、ストックされていくことですね。なので、ラジオよりマニアックな話をしたり、たまに本筋と違う話をしたりしても大丈夫。後で聴いた人が発見してくれることもありますしね。生放送が多いラジオに比べると、ポッドキャストは基本録音なので、作り込んだ保存性の高い話ができる利点もあると思います。

音声コンテンツがこれだけ盛り上がっている理由は、各所で言われている話ではありますが、『radiko』を筆頭にテクノロジーの進化がやはり大きいと思います。それに加えて、今は世の中にコンテンツが増えすぎた結果、何かをしながらでも聴くことができる音声コンテンツが、現代人の生活にマッチしていることもあるでしょうね。

あと個人的に思うのは、今の人たちのなかで『嘘をつかれたくない』という感覚が年々強くなっていることが影響しているのかなと。『文春砲』という言葉が出てきたあたりから、それがより顕著になってきていて、時代的によりリアルなものが求められているんだと思います」

みっともない部分も見せる

「僕の『オールナイト』もそうですけど、特に1人しゃべり系の音声コンテンツは嘘をつけないというか、どうやったってパーソナリティーの人間性が出てしまう。僕自身も最初の1年は、リスナーから何が求められているかを考えて、テレビやお笑いの話を中心にしていました。ただ、2年目からコロナ禍となり家族と過ごす時間も増えたので、妻や娘の話もするようになったら、同年代のサラリーマンの方々を中心に予想以上の反響があった。改めて、リスナー層が思っていたよりも幅広いんだってことを知るきっかけにもなりましたね。

トークのスタイルも前に比べると変わってきていて、自分のみっともない部分とか、みみっちい価値観などを隠さずに出すようになりました。当初はエピソードトークとして面白いものを日々の生活の中から探してたんですけど、毎週事件が起きるわけでもないのですぐに尽きちゃって……。そこで、『自分がどう思ったのか』『自分の価値観がどう変わったのか』を混ぜてしゃべるようにしたんです。そうすれば、普通の出来事でも自分にしかできないオリジナルの話になる。これは、オードリーや伊集院(光)さんのラジオを改めて聴いて気づいたことで。ラジオを始めてからは、比べちゃうので人のラジオはなるべく聴かないようにしていたんですけど(笑)、さすがだなと」

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ラジオの力を借りて話す