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若い俳優さんは、僕もそうでしたが、経験や技術にまだ十分な自信がないので、たいていはなにかしら身構えて現場に入ってきます。梨里香さんも、どういう構えで来るのかと思っていたら、とても自然体だったので驚きました。適度に緊張しているし、恐縮もしているのですが、しすぎているわけでもない。土居さんのことも十分にリスペクトしていて、でもしすぎることもなく。自分が置かれている状況や与えられているものに対して、変に構えることなく、しっかり受け止めていました。若い俳優さんで、そういう人はあまりいないと思うので、すごいなと感心しました。そういうニュートラルなところが、王子の役にすごくあっていると思います。

土居さんとも、とてもいい関係です。稽古場では、土居さんが梨里香さんをとてもかわいがってフォローしていたし、梨里香さんもすごく刺激を受けていたようです。僕はダブルキャストは、お互いに精神的によくないと思うので、ふだんはあまり推奨してないのですが、これだけ違うダブルキャストなら、むしろよい作用がほとんどじゃないかと思うことがたくさんありました。

猫ではないが、キツネの役で夢かなう!?

花役の花總まり(写真提供:東宝演劇部)

王子が暮らしていた星に咲いていた花を演じるのは花總まりさん。王子が大切に思っている花は、この作品を貫く象徴としての存在なので、それを演じるにふさわしい人です。僕は、花總さんとはミュージカル『エリザベート』でずっとご一緒しています。皇妃のエリザベートを演じているときの花總さんは、あえて自分を追い込んでやっていると思うので、気軽に話しかけられない雰囲気があるのですが、今回は全然違っていました。稽古中も、花總さんとは『エリザベート』のときよりもすごくよくしゃべったし、別人のようでした。それがお芝居にも出ていて、生き生きと演じられています。もともと名前に花が付くくらい華やかな人なので、花の役もその明るくて強いところ、『エリザベート』の劇中だと少女のときのような感じがよく出ています。『リトルプリンス』に参加するのを、すごく楽しんでいるのが伝わってきました。

ヘビ役の大野幸人(写真提供:東宝演劇部)

ヘビを演じている大野幸人さんとは初めての共演です。ダンスが素晴らしく、振り付けも自分でやっていて、表現者としてもクリエイターとしても優れた人です。稽古場では寡黙で、会う機会も少なかったのですが、どこか別の部屋にいてずっとヘビの振りをつくっていたそうです。囲み取材のときに、いろんな種類のヘビを研究したと聞いて驚きました。砂漠が舞台なので、サハラ地方にいるヘビで、その中でも血液毒のヘビに噛まれると苦しむけど、神経毒は苦しまずに死ねるというので、そっちにしようと。パフアダーというヘビの動きを意識して振り付けたそうです。歌もうまくて、本番が始まってからも楽屋でずっと歌っているのが聞こえてくるので、練習を重ねてきたことが分かります。今回のヘビを演じるために、とてもストイックに心血を注いできたのが表現から伝わってきて、素晴らしい才能だなと思いました。

キツネ役の井上芳雄と王子役の土居裕子(写真提供:東宝演劇部)

僕はというと、飛行士とキツネの2役を演じました。キツネは着ぐるみを着るのですが、ここまで本格的な動物役は初めて。『キャッツ』にあこがれてミュージカル界に入ったので、猫ではないけど、何割かは夢がかなったのかな(笑)。王子に会ったときの第一声は鳴き声で始めようと思ったので、YouTubeで探してみました。キツネはコンコンと鳴くイメージですけど、実際はあまり鳴かなくて、犬と猫の間みたいな鳴き声でした。それをリアルにまねているつもりですけど、たぶんお客さまには分からないでしょう。耳やしっぽの使い方とか、穴がいっぱい空いているセットなので、その中に入ったり、外から出てきたりするコミカルな動きは自分で考えました。ちょうど稽古をしているときに、劇団四季の『アラジン』を見て、ランプの魔神ジーニー役の瀧山久志さんが素晴らしかったので、そんなふうにやりたいなと思って。場をワッと盛り上げて、お客さまを笑わせるのをイメージしていたのですけど、演出家からはやり過ぎだと言われながら、調整して今の形に落ち着きました。シリアスな飛行士とは全く違う役だし、早替えもあって体力的にもきついですが、お客さまの反応がうれしいし、すごくやりがいのある役で楽しいです。

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心をふるわせる「何か」がいっぱい詰まった名作