最新Wi-Fiルーター 速度もセキュリティーも大幅UP
Wi-Fiルーターを買い替えでネット高速化(1)
高速回線を導入しても古いWi-Fiルーターのままでは通信速度が遅く、それが足かせとなってインターネットの速度が遅くなることがある(図1)。もし、インターネットの速度が出ない原因が古いWi-Fiルーターにあると判明したら、買い替えを検討しよう。
Wi-Fi 6ルーターは最新CPU搭載
Wi-Fiの通信速度は、ここ10年で大幅に向上した。10年前に主流だったWi-Fi 4だと、現在の最新規格のWi-Fi 6どころか、それ以前に普及していたWi-Fi 5と比べても大幅に遅い(図2)。Wi-Fi 4ルーターのユーザーは、今すぐ買い替えを検討すべきだろう。
家庭用として売られているWi-Fiルーターは、組み込み機器向けのCPU(中央演算処理装置)を搭載する。パソコンのCPUが進化しているように、組み込み機器向けのCPUも日々進化している。Wi-Fi 6ルーターは最新のCPUを搭載した製品が多く、その分、処理性能も向上している(図3)。
Wi-Fiルーターは、1つのネット回線を複数の機器に割り振る役割を担う(図4)。Wi-FiルーターのCPUは、通信の変換やWi-Fiの制御、各種付加機能の実行などをこなす。接続台数が増えたり、付加機能を実行したりするとCPUの負荷が増える。CPUの処理性能が低いとそこで処理待ちが発生し、ネットの通信速度が落ちやすい。それに対してCPUの性能が高いと、これらを迅速に処理できるのでネットの通信速度が向上する。
セキュリティー面でも、新しいWi-Fiルーターのほうが安心だ。Wi-Fiルーターはファイアウオール機能を備えており、悪意のある通信を防ぐ。ファイアウオール機能は、既存のサイバー攻撃情報を基に特定の通信を塞ぐ。Wi-Fiルーターが古いとファイアウオール機能が持つ情報も古く、最新の攻撃を防げない。さらに、古いWi-Fiルーターだと脆弱性を突かれ、悪意のある通信や攻撃の踏み台にされることもある。最新のWi-Fiルーターであればファームウエアのアップデートが提供されるので、脆弱性を塞ぐことができる。
ただし、古いWi-Fiルーターではファームウエアが提供されず脆弱性を放置したままであることも多い。上記の理由から、古いWi-Fiルーターの利用をなるべく避けるように警告するメーカーもある(図5)。
売れ筋は1万円前後
現在、店頭では最新規格のWi-Fi 6に対応したルーターが、数多く販売されている。Wi-Fi 6ルーターは当初、ハイエンドの高価な製品しかなかったが、今は売れ筋製品を1万円前後で購入できるようになった。Wi-Fi 5ルーターとほとんど価格差がなく、割安感が出てきた(図6)。
パソコンやスマホもWi-Fi 6に対応する機器が増えている。インテルの第10世代Coreシリーズ以降のCPUにはWi-Fi 6のネットワークコントローラーが搭載されている。また、スマホやタブレットもWi-Fi 6に対応する機種が多い。iPhoneは現行機種の全モデルがWi-Fi 6対応だ。Android(アンドロイド)スマホも、ハイエンド機種を中心にWi-Fi 6に対応した製品が増えている(図7)。
利用環境に適した機種を賢く選択
店頭では多くのWi-Fiルーターが販売されているが、その中から自分の利用環境にふさわしい1台を選ぶのはなかなか難しい。そこで、「規格」「最大通信速度」「機能」「推奨接続台数」「有線LAN」「大きさやアンテナ」という6つの項目に注目したい(図8)。これらの情報は製品パッケージやメーカーのウェブページで確認できる(図9)。
まずは規格の詳しい解説から。現在の最新規格であるWi-Fi 6は、正式規格IEEE802.11axの通称だ。「6」は6世代目を意味し、Wi-Fi 5(IEEE802.11ac)の後継規格。通称が付けられたのはWi-Fi 6からで、それに伴い11acと11nにWi-Fi 5とWi-Fi 4の通称がそれぞれ付いた(図10)。
機器同士がWi-Fi 6で通信するには、双方の機器がWi-Fi 6に対応する必要がある。ただし、Wi-Fiは互換性を備えているので、どちらかが古い規格の機器でも古い規格の速度で接続できる。例えば、Wi-Fi 5対応のパソコンやスマホしか持っていないユーザーでも、新しいWi-Fi 6ルーターを購入し問題なく自宅で通信できる(図11)。
帯域幅が広がったこともWi-Fi 6のメリット
Wi-Fi 6はWi-Fi 5から速度アップと通信の効率化などが図られている(図12)。
Wi-Fi 6ルーターの上位製品の一部は、160メガヘルツ(MHz、メガは100万)の帯域幅(通信に使用する周波数の範囲)を利用できる。Wi-Fi 5の時代から規格として用意されていたが、Wi-Fi 5ルーターのほとんどが帯域幅80MHzで、帯域幅160MHzに対応する製品はほとんどなかった。帯域幅が倍の160MHzに増えることで、通信速度は向上する(図13)。
帯域幅160MHzには連続した160MHz分の帯域幅を使う「HT160」と、80MHzの帯域幅を2つ組み合わせた「80+80MHz」の2種類ある。Wi-Fiルーターによって、利用できる機能は異なる。両方に対応する機種もあれば、片方しか使えない機種もあるので注意したい。なお、子機側がWi-Fi 6パソコンの場合は双方に対応するが、Wi-Fi 5対応のパソコンでは、160MHzを利用できても「80+80MHz」は利用できないものがある(図14)。
Wi-Fi 6は通信の効率化も図られている。従来は1チャンネルの帯域に1つの端末への通信しか割り当てられないOFDMだったが、複数の端末に通信を割り当てられるOFDMAに変更された。これにより、複数の端末が接続する環境で通信効率が向上した(図15)。
省電力機能も強化されている。TWTと呼ぶ仕組みが導入され、すべての端末を一律にスリープ解除するのでなく、必要な端末だけスリープを解除することが可能となった(図16)。
さらにWi-Fi 6でセキュリティーも強化された。6の対応機器では、最新の暗号化規格WPA3に対応する。WPA3はWPA2の致命的な脆弱性を解消しながら、WPA2の使い勝手を継承している。ただし、WPA3に設定したWi-Fiルーターに接続するには、WPA3に対応するパソコンやスマホが必要だ。Wi-Fi 6の機器ならほぼすべてが対応しているが、それ以前だとWPA3に対応していない機器が多く、接続先として見えても接続できない場合もある。その場合はWi-FiルーターにWPA2互換モードが用意されているので、その設定を使えばよい(図17)。
(ライター 田代祥吾)
[日経PC21 2022年1月号掲載記事を再構成]
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