AKB48岡田奈々・向井地美音 コロナ禍での発信探る
「会いに行けるアイドル」として歴史を築いてきたAKB48はコロナ禍で転機を迎えた。活動の根幹であった東京・秋葉原のAKB48劇場での定期公演、握手会の中止が余儀なくされるなかで、2020年4月から「OUC(おうち)48プロジェクト」を始動。メンバー個々の自宅からのパフォーマンスを合わせたライブ配信「おうち公演」や、握手会に代わるオンラインイベント「オンラインお話し会」などで、ファンとの新たな交流方法を模索してきた。
今年5月には最後の1期生、峯岸みなみが卒業。7月から約2年ぶりの地上波レギュラー冠番組『乃木坂に、越されました~AKB48、色々あってテレ東からの大逆襲!~』(テレビ東京)が放送され、withコロナ時代の活動に進みつつある。
最新シングル『根も葉もRumor』のセンターに立つ岡田奈々と、総監督の向井地美音にグループの今を聞いた。
向井地 レギュラー番組では、私たちの意見をスタッフさんがいろいろ聞いてくださって。これまでは与えられた試練を乗り越えていくことが多かったけど、声優に憧れている佐藤美波ちゃんの発案でメンバーが自作のマンガにアテレコする企画「妄想!まんが部」ができたり、1人ひとりの声が反映されています。
岡田 MCのひろゆきさんが、私たち自身では気付かない視点で答えてくれるのもうれしいです。今のAKB48の課題を挙げていくコーナーで「自分たちはオリジナルメンバーではないので。先輩方が作ってくださったものをそのままやっているだけ」と本心をぶつけたら、「そもそも、それが壊せないと思っているのを変えるところから」と答えていただき、過去にしばられすぎていたんだなって。
向井地 私は「2ちゃんねる」の功罪について話しました。「いろいろなみなさんの意見で新しい発見ができたり、気付きもあるなかで、叩かれないように個性が発揮できなくなってAKB48がおとなしくなってしまった一面もある」とひろゆきさんにぶつけたり。思っていたことを自分の言葉でみなさんに知っていただけたのは貴重な機会でしたね。
岡田 コロナ禍での発信方法はいろいろメンバー自身でも考えています。大人数のメンバーによる「おうち公演」はどうしてもラグがあったり難しくて。
向井地 もちろんAKB48は大人数での一体感が魅力ではあるけど、今はメンバーみんな個人や少人数での発信にも力を入れてきているよね。私となぁちゃん(岡田)、村山彩希と茂木忍でやっているYouTubeチャンネル「ゆうなぁもぎおんチャンネル」もその1つです。
岡田 自分たちで企画、編集、撮影とすべてこなして、思い付いたものをどんどん動画にしています。AKB48の歴代の楽曲をランダムに流して踊る「ランダムプレイダンス」動画や、1人ひとりを詳しくお伝えする「48の質問」もあります。
向井地 この動画をきっかけに「久しぶりにAKB48へ帰ってきた」と言ってくださる方もいらっしゃるんです。
体と頭の両方をフル稼働
さらに、コロナ禍の影響はAKB48の楽曲にも大きな変化を与えた。約1年半ぶりの58thシングル『根も葉もRumor』は、かつてないハードなロックダンスナンバーだ。選抜メンバーは時間をかけて、初めて動画をお手本にロックダンスの基礎からしっかり固めていくレッスンを経験した。
向井地 『根も葉もRumor』は三重高校ダンス部の顧問、神田橋(純)先生に振り付けをしてもらいました。動きの激しいロックダンスは未知のジャンルでしたし、動画を見ながら個人練習を重ねる振りの覚え方は初めてで、マネジャーさんに泣きつくほど苦戦しました(苦笑)。
岡田 選抜メンバーで合わせるレッスン日までは、ひたすら自主練習の毎日で。最初はロックダンスの基本技から覚えていきました。神田橋先生のお手本動画を参考に自分で踊った動画を送って、「太ももをもっと上げて」などのアドバイスを返していただいて、また踊り直しての繰り返しでした。
向井地 今までのAKB48の振り付けは女の子らしく、流れるようなしなやかさを表現することが多かったですが、今回の曲は静と動のメリハリを意識する必要があるんです。例えば、腕を上げるにしても、どこを通ってどこで止めるかがすべて決まっていて、感情のままに動くだけではダメで、体力と頭の両方を使うから大変でした。
岡田 通しで踊ると、全身筋肉痛になるほどです。サビは正面を向きながら左右のかかとを外側に強く蹴り上げるロックダンスの基本技「ウィッチウェイ」。いざ自分でやってみると、動画で見ているイメージ以上につらいんです。選抜メンバーがそろってのレッスン時は、OKが出るまでウィッチウェイをひたすら踊り続けました。この曲を踊り切るには体力作りから必要で。神田橋先生から「タンパク質を取りましょう」とか「筋肉痛がきても、また次の筋肉痛がくるように動きましょう」など、まさに学校の先生らしいアドバイスをもらっていました(笑)。
向井地 未知のダンスに苦労しながらも、『音楽の日』で初披露(21年7月・TBS系)して、ファンのみなさんから大きな反響をいただいた時はホッとしましたね。新しい挑戦を形にできたし、真剣に思いを込めて作る作品の素晴らしさを知る機会になりました。
岡田 自主練習の最初の頃はこれまでのAKB48らしさは考えず、ロックダンスをゼロから学ぶ一心でみっちりレッスンをしたのがよかったと思います。結果としてパワフルで情熱的なパフォーマンスに仕上がりましたし、みんなで気持ちをそろえながら、力を出し切るレベルにまで到達できたと思います。この楽曲を通して、"今"のAKB48を見てもらえたらうれしいです。
乃木坂46を追い越すために、AKB48には今何が必要なのかを探る冠番組。出演料0円で自身の出演をテレ東のプロデューサーに売り込む企画などを実施した。MCはひろゆき。(テレビ東京) (C)「乃木坂に、越されました」製作委員会
(ライター カネコシュウヘイ、日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)
[日経エンタテインメント! 2021年11月号の記事を再構成]
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