女子学生特有の体の悩みと競技力のバランスの難しさ

女子学生が世界の舞台で力を発揮できる選手に成長するために、もう1つ大切なことは、自分の体と向き合い、しっかり勉強して、体重や体調を管理できるようになることだと思います。学生時代は、女性ホルモンの分泌量の変動によって、太りやすくなるなど体が変化しやすい時期でもあります。厳しい減量の反動で太ってしまったり、摂食障害になってしまったり、無月経になったり、走るために大切な筋力などが落ちてしまったりと、体調をキープしながら競技力を上げていくことは本当に難しい時期です。

そうした女性ホルモンのバランスの関係で、大学に入学した当時は注目されていた選手が調子を落として結果を出すことができず、注目されていなかった選手が実力を伸ばすなど、大学時代をどう乗り越えるかで有力選手が入れ替わることも多分にあります。

私自身は、大学1~3年生までは足の故障で思うような練習もできず、顔がパンパンに膨らみ、現役時代のベスト体重は47kgですが、56kgまで体重が増えてしまったことがありました。大学4年のときにやっと自分でコントロールしなければという意識が働き、自炊を始めて食事内容を整えることで自然に体が絞られ、走りやすい体形に変わっていきました。

シドニー五輪(2000年)女子マラソン金メダリストの高橋尚子選手も、試合の前後の体重の振れ幅が大きいタイプだったので、体重コントロールには苦労したと思います。それでも、そうした部分を自分できちんと調整できる選手でした。

女子学生アスリートの体調コントロールは、指導者の役割もあるのでしょうが、実践するのは本人です。自分の体に向き合って、よく勉強し、自分でコントロールする意識や習慣を身に付けることがやはり重要だと感じます。女性特有の体の変化や不調に向き合う経験は、引退後の健康を守るためにもきっと役立つはずです。私が副会長を務める大学スポーツ協会(UNIVAS)でも、そうした内容について学生たちと議論を重ね、学ぶ機会を設けることができればと思っています。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2022年1月11日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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