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有森裕子 衝撃受けた新星、求められる「雑草的な力」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年も元旦のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競走大会)から始まり、2日、3日には箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)が開催され、にぎやかな幕開けとなりました。

箱根駅伝は青山学院大学が10時間43分42秒の大会新記録を叩き出し、2年ぶり6回目の総合優勝を果たしました。選手たちの攻めに徹したパワフルな走りとチームワーク、そして原晋監督の采配による圧勝という結果に、青学の底力を見せてもらい、お正月から清々しい気持ちになりました。3区と5区では1年生も大活躍した若手が多いチームなので、来年も楽しみです。青学のみならず、力走した選手たちの勢いが、1月から3月にかけて目白押しのマラソン大会や駅伝に参加するランナーたちにも良い影響を及ぼしてほしいと思います。

外国人選手に見劣りしない走りに度肝を抜かれる

今年の箱根駅伝でも力走していた順天堂大学の三浦龍司選手は、東京五輪陸上競技男子3000メートル障害で日本人初の7位入賞を果たした選手です。三浦選手だけでなく、2024年のパリ五輪や2028年のロサンゼルス五輪での活躍を期待したくなる学生選手が、続々と台頭してきています。

中でも陸上ファンや関係者に強烈なインパクトを与えたのは、2021年10月31日の全日本大学女子駅伝5区で、従来の記録を1分14秒も更新する衝撃的な走りを見せてくれた、拓殖大学の不破聖衣来選手ではないでしょうか。彼女は大学1年生にして日本インカレ(日本学生陸上競技対校選手権大会)5000メートルの覇者でもある、陸上女子長距離界のホープです。

私が実際に彼女の走りを見たのは、日本陸上競技連盟の副会長として足を運んだ、2021年11月14日の東日本女子駅伝[注1]でした。この大会では群馬が2時間17分10秒で優勝を飾りましたが、その最終9区で、トップと38秒差の3位でタスキを受け取り、宮城や千葉を抜き去って区間賞を獲得したのが不破選手でした。

[注1]東日本女子駅伝:東日本18都道県の代表選抜チームが出場する女子の駅伝大会で、毎年11月に福島県で開催される。中学生から社会人までの女子選手が参加できる。

不破選手は前評判でも有力選手だと注目されていましたが、彼女の走りを実際に見て、予想以上の圧倒的なスピードや、他の選手とは別格のランニングフォームに私も度肝を抜かれました。

というのも、これまでずっと私の中には「日本人女子の長距離選手の走り方はこういうもの」という漠然としたイメージがあったのですが、不破選手のフォームやスピードは、そうした固定観念を見事に覆すものだったからです。不破選手の走りは、外国人選手かと思わせるような腰高なフォームから繰り出される大きなストライドと、素早い脚の引き付けによるリズム感あるピッチが特徴です。何よりも彼女のラストスパートには驚きました。長距離を走った後とは思えないほどの速さでグングン伸びていき、心肺能力の高さがうかがえる異次元の走りでした。

アテネ五輪(2004年)女子マラソン金メダリストの野口みずき選手も、大きなストライドで最後まで力強く走るタイプでしたが、不破選手は野口選手のストライドをさらにダイナミックにしたような印象でした。東京五輪陸上競技女子1500メートルで8位入賞を果たした田中希実選手にも同様のことが言えますが、外国人選手と比べても見劣りしない走りを当たり前のようにできる選手の出現に、驚きと次世代への可能性を感じずにはいられません。

不破選手はさらに、2021年12月11日に開催された関西実業団ディスタンストライアル1万メートルで、初の1万メートルレースにもかかわらず、30分45秒21という学生新記録かつ日本歴代2位のタイムを叩き出し、今夏に米オレゴンで開催される世界陸上参加標準記録を突破しました。12月30日に静岡で開催された富士山女子駅伝(全日本大学女子選抜駅伝競走)では、最長である10.5キロのエース区間に起用され、12位でタスキを受け取り、脅威の10人抜きを達成。従来の区間記録を1分54秒も更新する32分23秒で区間新に輝きました。

不破選手や田中選手を筆頭に、10代後半から20代前半の陸上の中長距離選手の走りが、少数ながらも明らかに変わってきているように感じています。選手たちが世界に目を向けて、外国人ランナーを意識しているのかどうかは分かりませんが、走ることが本当に好きで、こんなふうに走りたいというイメージがきちんとできているのではないかと思います。恵まれた素質に頼ることなく、高い目標と自らの強い意志を持って普段の練習に取り組み、1つひとつの動きを調整していかないと、理想の形に近づくことはできません。彼女たちの目覚ましい成長は、そうした努力や意識の高さの賜物でしょう。

学生アスリートが世界の舞台で活躍するために必要なものとは

そんな圧倒的な力を見せる若い選手たちが、将来、世界の舞台で力を発揮するためには何が必要でしょうか。その1つとして、「雑草的な力」が挙げられると私は思います。雑草的な力とは、どんな環境でも物怖じせずに適応し、自分の意志で突き進める力です。例えば田中選手にはその雑草的な力を感じます。自分の強い意志はもちろん、負けず嫌いというか、いい意味で動じない図太さを持ち、賢さは感じるけれど神経質ではない。果敢に攻めていく堂々としたレース運びや、レース後の受け答えを見ても、どんな大会でも通用しそうな雑草的な強さを感じるのです。

一方、過去の事例を振り返ると、女子選手は指導者に依存しすぎるケースも見られます。指導者に手取り足取りで育てられた温室育ちのような女子選手ほど、予定通りにトレーニングができなかったり、試合でトラブルが発生したりするなど、何かをきっかけに不安に陥り、大事な試合で結果が出せないケースがあります。

自分で自分をコントロールできる力や、いい意味での図太さ、ネガティブな出来事をポジティブに転換できる思考を持てる選手の方が、どんなレース環境でも、どんなトラブルが起きたとしても、世界の舞台で力を発揮しているように思います。そう考えると、世界のトップレベルを目指す選手は自分で考えてコントロールする力を身に付けること、指導者は選手を大事に育てる時期と手放す時期のタイミングを誤らないことが、ポイントの1つかと思います。

まだ18歳の不破選手の場合は、大学から親元を離れて寮生活を始め、素晴らしい指導のもと2021年の成長につながっていると聞きました。若いうちは指導者による教育をしっかり受け、ゆくゆくはぜひ雑草的な力も身に付けて、世界で戦えるメンタルを持った選手に成長してほしいと思います。当たり前ですが、レースのスタート地点には1人で立たなければならず、誰も助けてくれません。そして世界の舞台ほど、自分でコントロールの利かない状況が普通であり、監督やコーチに守られた環境ではないのですから。

女子学生特有の体の悩みと競技力のバランスの難しさ

女子学生が世界の舞台で力を発揮できる選手に成長するために、もう1つ大切なことは、自分の体と向き合い、しっかり勉強して、体重や体調を管理できるようになることだと思います。学生時代は、女性ホルモンの分泌量の変動によって、太りやすくなるなど体が変化しやすい時期でもあります。厳しい減量の反動で太ってしまったり、摂食障害になってしまったり、無月経になったり、走るために大切な筋力などが落ちてしまったりと、体調をキープしながら競技力を上げていくことは本当に難しい時期です。

そうした女性ホルモンのバランスの関係で、大学に入学した当時は注目されていた選手が調子を落として結果を出すことができず、注目されていなかった選手が実力を伸ばすなど、大学時代をどう乗り越えるかで有力選手が入れ替わることも多分にあります。

私自身は、大学1~3年生までは足の故障で思うような練習もできず、顔がパンパンに膨らみ、現役時代のベスト体重は47kgですが、56kgまで体重が増えてしまったことがありました。大学4年のときにやっと自分でコントロールしなければという意識が働き、自炊を始めて食事内容を整えることで自然に体が絞られ、走りやすい体形に変わっていきました。

シドニー五輪(2000年)女子マラソン金メダリストの高橋尚子選手も、試合の前後の体重の振れ幅が大きいタイプだったので、体重コントロールには苦労したと思います。それでも、そうした部分を自分できちんと調整できる選手でした。

女子学生アスリートの体調コントロールは、指導者の役割もあるのでしょうが、実践するのは本人です。自分の体に向き合って、よく勉強し、自分でコントロールする意識や習慣を身に付けることがやはり重要だと感じます。女性特有の体の変化や不調に向き合う経験は、引退後の健康を守るためにもきっと役立つはずです。私が副会長を務める大学スポーツ協会(UNIVAS)でも、そうした内容について学生たちと議論を重ね、学ぶ機会を設けることができればと思っています。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2022年1月11日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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