
今からおよそ1500年前、現在の中米エルサルバドルにあるイロパンゴ火山が史上最大級の噴火を起こし、膨大な量の火山灰や軽石を噴出させた。これらは麓の谷を覆いつくしただけでなく、広範囲に広がり、北半球の寒冷化を引き起こしたとみられる。
この大噴火によって噴出した火山灰は「ティエラ・ブランカ・ホーベン(若い白土)」と呼ばれ、古代マヤ文明の一時的な衰退を促したと考えられてきた。しかし、2021年9月21日付で学術誌「Antiquity」に発表された論文は、一概にそうは言えないことを示唆している。噴火後、火口からわずか40キロほど離れた地域で、これまで考えられていたより早い時期に、大型のピラミッドが建設されたというのだ。人々の回復力を示すモニュメントだという。
「噴火や干ばつなどの出来事はしばしば、古代の崩壊、放棄、衰退の主な要因と考えられてきました」と、論文の著者である米コロラド大学ボルダー校の博士研究員、市川彰氏は話す。「しかし、私の研究は、古代の人々には回復力と柔軟性があり、革新的だったことを示唆しています」
市川氏が発掘調査を行ったのは、エルサルバドルの首都サンサルバドルからほど近いサポティタン盆地にあるマヤの居住地、サンアンドレス遺跡。そこには「カンパーナ建造物」と呼ばれるピラミッドがある。カンパーナはスペイン語で釣鐘の意味だ。
