発掘現場の地形図。考古学者が掘った溝(Tr)と穴(P)が描かれている(COURTESY OF AKIRA ICHIKAWA)

市川氏らはこの遺跡を発掘するなかで、人工的に積み上げられたと考えられる厚さ約5メートルにもなる真っ白な火山灰の堆積を見つけた。その堆積のなかには器などの破片がわずかにしか含まれていなかった。建設者が火山灰を入念にふるいにかけてから使ったことを示唆している。

建設工事は、噴火によって谷が崩壊した後、かなり早い時期に始まった。放射性炭素年代測定の結果、噴火から5~30年(遅くとも80年以内)で建設工事が始まった可能性があるという(噴火の推定時期はさまざまだ。ただし、後の世代は火山灰を建設に使用しなかったため、噴火の記憶が鮮明なうちに建設工事が始まったと市川氏は考えている)。

建設者が火山灰を使用したのは、その色が白かったためではないか。カナダ、カルガリー大学の教授で、マヤ文明のコミュニティー形成について研究している考古学者のキャスリン・リース・テイラー氏はそう考える。「(この色に)何かの意味があったのでしょう」。リース・テイラー氏は今回の研究に参加していない。

火山の神聖化

市川氏によれば、メソアメリカ文明では、火山が神聖視されていたという。「火山にモニュメントをささげることが、将来起こり得る噴火の問題を解決するための論理的かつ合理的な方法だと考えたのかもしれません」

火山を神聖視していたのはマヤ文明だけではないと、米アリゾナ大学の人類学者で、火山に対する人の反応を研究しているマーク・エルソン氏は話す。氏は1085年ごろに噴火したアリゾナ州のサンセットクレーター火山の近くで、トウモロコシの痕跡が付いた黒い玄武岩が出土したことを例に挙げた。

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