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幻の鳥がついに米国で絶滅認定 再発見論争に終止符

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ナショナルジオグラフィック日本版

かつて米国やキューバの森に生息していたハシジロキツツキ。「神のみぞ知る鳥」と呼ばれ、十数年前には米国で大論争を引き起こした幻の鳥だが、このほどついに絶滅との判断が下された。

この鳥が米国内で確実に目撃されたのは、1944年のルイジアナ州の事例が最後。以降、確実な目撃情報がないまま数十年が経過し、ほとんどの鳥類学者はこの鳥が絶滅したと考えてきた。2021年9月29日、米国魚類野生生物局は、ハシジロキツツキを含む22種の動物と1種の植物を絶滅したとみなし、絶滅危惧種法の対象リストから削除する意向を発表した。

今回リストから外れた生物には、オハイオ州の小川だけに生息していた小さな魚や、ハワイの熱帯雨林の鳥なども含まれている。いずれも生物多様性の重大な喪失にちがいないが、これまで最も大きな注目を集めてきた種は、まぎれもなくハシジロキツツキだ。

1944年以降、まともな目撃情報がなかったにもかかわらず、熱烈なバードウォッチャーたちはこの鳥がまだいるとの希望を捨てることなく、テキサス州からフロリダ州まで、南部の低地をひたすら探してきた。目撃情報は頻繁に寄せられていたが、どれも確定的なものではなかった(エボシクマゲラというよく似た鳥がいるため、探索は困難を極めた)。

大きな転機が訪れたのは2005年のこと。アーカンソー州の国立野生生物保護区が報告した7件の目撃情報と、ある不鮮明な4秒間の目撃映像に基づき、権威ある米コーネル大学鳥類学研究所の研究者チームが、ハシジロキツツキは絶滅していないという見解を科学的事実として認めたのだ。この驚くべき再発見は、すぐに「今世紀を代表する自然保護の物語」と呼ばれるようになった。

知らせを聞いて、多くの人が涙を流した。この奇跡のような出来事を、人類による破壊から回復できるという希望の物語として受け止めたのだ。

とはいえ、この発表の当初から、懐疑的な意見は少なくなかった。ハシジロキツツキが生息するには、大きな木(特に大きな枯れ木)が豊富にある広大な原生林が必要であることを、歴史的な記録は示している。ところが、アーカンソー州で最初に目撃があったのは、マクドナルドやガソリンスタンド、モーテルなどがひしめく高速道路のジャンクションからほんの5キロほどの、周囲を農地に囲まれた小さな湿地沿いの、比較的狭い森の中だった。

そもそも、ハシジロキツツキはそれまで60年間どこにいたのだろうか? なぜ、この鳥の確実な目撃情報や写真、映像は一度も出てこなかったのか? 復活を信じる人々の中から、信じるに値する答えが出てくることはなかった。

ハシジロキツツキ狂騒曲

2005年、ナショナル ジオグラフィック誌の編集者から私(著者のメル・ホワイト氏)の元にメールが届いた。私の自宅から約100キロのところで「失われた種」が見つかったことを喜んでいるかとの問いに、私はこう答えた。「なあ。ここにハシジロキツツキはいないよ。すべて大きな間違いだ」

ハシジロキツツキ狂騒曲真っただ中でのこの発言は、編集者を驚かせた。間もなく、私はナショナル ジオグラフィック誌にハシジロキツツキについての記事を書くことになった。

私は、アーカンソー州在住の長年の鳥類愛好家であり、ハシジロキツツキを捜索するチームの一員でもあった。2004年には、リトルロックで開催された秘密の会議に招待された。そこでは、コーネル大学やネイチャー・コンサーバンシーなどの代表者が、ハシジロキツツキを探す計画や、目撃情報が発表された際に避けられない世間からの注目、熱狂的なバードウォッチャーが殺到した場合の対応策などを検討していた。

ナショナル ジオグラフィック誌の仕事が決まると、科学者、政府関係者、ボランティアの捜索者、鳥類同定の専門家など、議論の両サイドにいる何十人もの人にインタビューを行った。ハシジロキツツキの生存について、最初から懐疑的だった私だが、証拠とされるものについて話を聞いた後は、無神論者のごとくまったく信じなくなった。

生存を信じている人と懐疑論者の対立は激化していった。米国で最も尊敬されている野鳥観察者の一人、ケン・カウフマン氏は、ハシジロキツツキが映っているとされる例の4秒間の映像を見て、上向きの角度で飛び去るエボシクマゲラに見えると判断した。カウフマン氏は最高に良い人なのだが、この自らの判断によって、懐疑論者になるとはどういうことを意味するのかを、すぐさま知ることとなった。「猛烈に怒鳴られましたよ。この喜びに満ちた出来事に疑問を抱くなんてと」。当時、彼は私にそう語った。

やはり鳥類同定の権威で、カウフマン氏と同じく鳥類のフィールドガイドを執筆しているデビッド・シブリー氏は、最初は興味を持ったものの、すぐに「証拠を見直すと、いかに証拠が少ないかがわかった」という。彼も最終的にはハシジロキツツキの発見に対する疑念を公表したが、「人生に一度あるかないかの『いい話』が事実ではないかもしれないと、どう伝えたらいいのか、難しかったです。うまいやり方はないですね」と私に語った。

多くの人が、この対立ゆえに友人を失った。科学雑誌や自然誌での言葉の争いは険悪なものになっていた。高名な学者たちがスキャンダル誌のようなトーンで互いに記事を執筆する。いったんある立場を採った人というのは、それを再考する謙虚さを持ち合わせていないことが多いものだ。

ナショナル ジオグラフィック誌は、自然写真のエースであった写真家ジョエル・サートレイ氏に、ハシジロキツツキの記事のための撮影を依頼した。

サートレイ氏はアーカンソーの沼地で何週間も根気強く撮影を続けた。1枚の、完璧な写真があればいいのだ。その写真さえあれば、ハシジロキツツキが今でも樹齢1000年のヌマスギの間を飛び回り、葉巻大の幼虫を食べているのだときっぱりと証明できる。私は彼の献身的な努力に尊敬の念を抱いたが、信念には共感できなかった。

編集部は、ハシジロキツツキの記事をできるだけ早く、ネタが新鮮なうちに掲載したいと考えていた。サートレイ氏は次の営巣期まで仕事ができるように1年延期してほしいと申し出たが、結局は編集部の意見が通り、記事は捜索の様子とその舞台をとらえた写真とともに掲載された。しかし、ハシジロキツツキそのものについては、ハーバード大学で保管されている60以上の標本が並ぶ写真が載っただけだった。

最大の懐疑論者は、捜索の舞台となった土地を管理するホワイト・リバー国立野生生物保護区の一部のスタッフだった。彼らは、何十年にもわたって低地を探索してきた経験豊かなアウトドアの専門家だ。それなのに、外部の専門家から、自分たちの森に生息する非常に大きくて騒々しい鳥を見つけられなかったと言われたのだ。怒るのも無理はない。しかし、魚類野生生物局が再発見を正式に支持し、公式発表の祝賀の場にも参加した以上、彼らもその見解に従わざるを得なかった。

ハシジロキツツキの絶滅が教えてくれたこと

そして、16年後の現在、いまだにハシジロキツツキを見た人はいない。ついには魚類野生生物局が、ハシジロキツツキは絶滅したと公式に認めた。ドードーやティラノサウルスと同じように、彼らはもういない。それどころか、同局のプレスリリースでは、最後に目撃されたのは1944年のこととなっている。2004年から2005年にかけてのアーカンソー州東部での目撃情報は間違いだったと、魚類野生生物局が認めたことになる。これで、多くの人が、一連の騒動は実に無駄な空騒ぎだったと主張し始めることだろう。

しかし、無駄ではなかったのだ。ハシジロキツツキの絶滅は私たちに何かを教えてくれるかもしれない。今回のプレスリリースでは、「減少が取り返しのつかないことになる前に」種を保存することの重要性についても述べられている。単一の種に焦点を当てるのではなく、生態系全体を保護するということだ。1つの魚種を守るために1つの川を保護するのは非効率的で、小規模な環境破壊の影響を受けやすい。しかし、その川を取り巻く大きな生態系を守ることで、魚だけでなく他の多くの種の生息地も守ることができる。

今回、絶滅が宣言された23種には、それぞれに存続のための条件があり、どこかの時点で連鎖が途絶えてしまったのだと言える。木材会社が工場を稼働させるスピードに合わせて米国南部の原生林が伐採されていた20世紀初頭、ハシジロキツツキの行く末は恐らくすでに絶望的だった。

19世紀末から20世紀初頭にかけての米国の発展の中で、ハシジロキツツキが存続できる広さの原野を保護することは不可能だっただろう。しかし、環境意識の高まりと自然保護活動のおかげで、ルイジアナ州のアチャファラヤ盆地やフロリダ州のビッグ・サイプレス湿地など、現代にも野生の土地は存在する。そうした場所には、アメリカクロクマやピューマ、ハクトウワシ、ワニなど、数え切れないほどの種が生息している。ただし、ハシジロキツツキがいなくなったことで森に空いた穴が埋まることは、永遠にない。

(文 MEL WHITE、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年10月8日付]

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